<幕間劇 Ⅰ>
その日、デニケンは秘密の部屋で部下たちと話し合っていた。
部下の一人がデニケンに報告をする。
「敵は広範囲に展開中です。
我々の派閥は中々思うように行きません」
その報告を聞いたデニケンが一言呟く。
「シュタイナーがシャルルさえ見つければ大丈夫だ」
デニケンの言葉に部下が息を詰まらせたようにしてから報告をする。
「デニケン様、シュタイナーは・・・」
「今、彼の兵員はとぼしく・・・もはやシャルルを見つける事は・・・」
その報告を受けると、デニケンはこめかみに片手をやり、眼鏡をはずしてプルプルと震えだす。
「近日中にシャルルが見つかると思う者だけここに残れ・・」
デニケンがそう言うと、四人を残して他の部下たちは部屋を出ていく。
ほとんどの部下が出ていくとデニケンはわめきだす。
「命令したのに!
シュタイナーにシャルルを奴の誕生日までに見つけろと言った!
私の命令に背くとはけしからん!
その結果がこれだ!
魔道士の嘘つきどもめ!
皆、嘘をつく!
魔法学士どもはどいつもこいつも下劣な臆病者だ!」
そう叫ぶデニケンに残った一人が抗議する。
「それはあまりにも侮辱です!」
しかしデニケンの叫びは止まらない。
「うるさいっ!臆病な裏切りものだ!
大っ嫌いだ!このヴァーカ!」
なおも部下を糾弾するデニケンに別の部下が諭す。
「いくらデニケン様でも・・」
それでもデニケンは罵るのをやめない。
「魔法学士どもは魔法使いのクズだ!」
そう言うとデニケンは立ち上がって持っていたペンを机に叩きつけて叫ぶ。
「チクショウメェ~~ッ!」
そしてさらに興奮して口汚く罵り続ける。
「魔法学士とは名ばかり!
魔法学校で学んだのはナイフとフォークの使い方だけ!
いつも魔法学士は私の計画を妨げる!
あらゆる手を使い、私を邪魔し続ける!
私もやるべきだった!
魔法学士の大粛清をガルゴニア帝国のように!」
デニケンはそれだけ叫び終わると、ふう・・・とため息をついて再び椅子に座る。
そして自分の片方の拳で胸を叩きながら話し続ける。
「私は魔法協会の高等魔法学校など出ていなくとも、独力でノーザンシティの議員になったぞ!」
息をハアハアと激しくさせつつもさらにデニケンは続ける。
「裏切者ども!
奴らは最初から私をだまし裏切り続けた!
私は魔王ドロズニン様に一体何と報告をすれば良い!
だが見てるがいい!
まだ私は負けた訳ではないぞ!」
そこまで言うとデニケンは一息つく。
「もういい・・・シャルルの事はあきらめよう。
奴が見つからない前提で臨時理事会を開こう。
今ならユーリウスの奴もいない。
急げば奴が帰って来るよりも先に理事会が開けるだろう。
そうなれば我々に有利だ。
それに否決された場合の手もすでに打ってある。
そうすれば・・・」
デニケンは追い詰められてはいたが、まだ勝機を逃してはいないとほくそ笑んでいた。
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