0164 シャルルとの出会い
「どうぞ?」
俺がそう言うと、部屋の中にユーリウスさんと一緒に入って来たのは、あの金髪の少年だった。
「こんにちは、こちらにさっきの人が泊まっていると聞いて」
「君は?」
「僕はシャルル・クロンハイムと言って、デニケンさんの執事見習いをしています。
さっきはデニケンさんが君のジャベックを壊してしまったので、様子が心配で見に来たんです」
「え?それでわざわざ?」
「うん、それとこれを届けに来たんだ」
少年が出したそれは、ハムハムの起動術書だった。
ジャベックが四散するときに、基本的に魔石と起動術書は一緒に破壊されて消失してしまうが、ごくまれに起動術書は残る事がある。
今回たまたまハムハムの起動術書は残ったようだ。
こんな事はとても珍しい。
俺はハムハムが消滅した衝撃で、それに気づかなかったが、この少年はそれに気づいてわざわざ拾ってそれを届けてくれたようだ。
俺は嬉しくなって礼を言った。
「ありがとう、シャルル君!」
「いや、あの時、君があまりにも愕然として悲しそうにしていたからね。
あのジャベックは君にとって大切な物だったんじゃないのかい?」
「うん、あれは僕が始めて本格的に作ったジャベックで、とても大切にしていたんだ」
「やっぱりそうだったのか?それはすまなかったね」
「いや、君がハムハム・・・あのジャベックの名前だけど、それを壊した訳じゃないし、
ああいう動きをするように作ってしまったのは僕なんだ。
いきなり見知らぬ物体にあんな風にされたら、デニケンさんが怒るのも無理は無い。
言うなれば自業自得さ」
「そう言ってもらえると助かる。
あの人も少々気が短い所があってね」
「そうなのか・・・」
まあ、確かに見た目はずいぶんと神経質そうではあったが?
いぶかしがる俺に対して話題を変えるようにシャルル君が話し出す。
「うん、ところで、君は何故ジャベック工場を見学していたんだい?」
「ああ、それはここではジャベックを作るジャベックがあると聞いて、興味があったので見学をしていたのさ」
「なるほど、そういえば君はジャベックを作れるんだったね?
その年齢で大した物さ。
今は魔法学校に通っているのかい?」
「いや、個人的に魔法の先生について教えてもらっているのさ。
そうそうまだ名前を言ってなかったね?
僕の名はシノブ・ホウジョウ、15歳さ」
「え?君は僕と同じ年なのかい?
2・3歳下かと思ったよ」
俺は神様に頼んで年齢は15歳だが、見た目は13歳ほどに見える。
シャルル君の感想は当然だろう。
「ああ、よくそれは勘違いされるよ」
「なるほど。
ところで、君はノーザンシティには何の用事で来たの?
デニケンさんが君のジャベックを壊してしまったお詫びと言う訳でもないけど、もし、僕に手伝える事があれば手伝うよ?」
「いや、それは気にしないでくれ。
君はわざわざハムハムの術書を持ってきてくれたんだ。
それで十分さ。
僕たちがここへ来た目的は、そこのユーリウスさんに頼まれてジャベックの講義をしに来たんだよ」
「え?ジャベックの講義?」
シャルル君は俺の言葉に相当驚いた様子だ。
確かに15歳でジャベックを作れるのも珍しいのに、それの講義をしに来たと言えば驚くのも無理はないだろう。
「ああ、ちょっと僕が考えたジャベックの学習法が、ユーリウスさんの興味を引いたらしくてね。
それの講義をしにきたんだ。
もっとも僕には魔法教師の資格がないから、実際に講義するのはそこにいる僕の先生のエレノアなんだけれどもね」
「エレノアさん?」
シャルル君が不思議そうにエレノアを見ると、ユーリウスさんが説明をする。
「ええ、そうです。
シャルル君、こちらのエレノア・グリーンリーフ先生は私の魔法の師匠なのですよ。
どうしてもそのジャベックの講義をしていただきたくて、私が強引にお願いして来ていただいたのです」
「ええっ?ユーリウスさんの師匠?
このノーザンシティでも、伝説のゴーレム魔道士と言われているユーリウスさんのですか?」
「ええ、私など、この方の足元にも及びません」
「そんなお方が・・・
もし出来るなら僕も教えを乞いたいですね」
「ええ、そうですね。
シャルル君なら是非受けて欲しいですね。
シノブさん、グリーンリーフ先生、このシャルル君は非常に優秀で驚くほどの才能を持っていますよ。
ちょっと鑑定してみてください」
「え?そうなんですか?
シャルル君、ちょっと君を鑑定してみても良いかい?」
「うん、別に構わないよ」
平人 男性 レベル38 15歳
才能
知力75 魔力量93 魔法感覚91 体力37 力27 格闘感覚20 敏捷性43
ええっ?!
魔力量が93で、魔法感覚が91だと?
そして知能も高い!
これは凄い!
反則な自分は例外として、こんな高い数値は見た事がない!
格闘感覚や力は一般並だが、魔法の才能はそれを補って余りある!
確かエレノアの魔力量や魔法感覚は88と90と聞いているからそれ以上だ!
驚いた俺がエレノアに話しかける。
「これは確かに凄いね?」
「ええ、驚きの数値です。
御主人様以外にもこのような人物が存在するとは・・・」
エレノアもその才能に驚いているようだ。
ユーリウスさんも嬉しそうに説明をする。
「私も彼は将来このノーザンシティを担う人だと思っているのですよ」
「確かにそれはわかります」
俺が大きくうなずくとシャルル君は、はにかんだように答える。
「いやあ、そんな事はないですよ。
いくら才能があったとしても、努力しなければ意味はないし、それに僕なんかまだまだ父やユーリウスさんの足元にも及びませんしね」
「お父さん?」
「ああ、彼の父上はこのノーザンシティの筆頭運営理事だったのですよ。
残念ながら数年前に亡くなってしまいましたがね」
「なるほど、でもシャルル君には是非エレノアの講義を聞いていただきたいですね」
「ええ、私もそう思います」
「ではお言葉に甘えてエレノア先生の講義を受けさせていただきたいと思います」
こうしてシャルル君も翌日にエレノアの講義を受ける事となった。
その夜、俺はハムハムの事を考えていた。
(ハムハム2号か・・・)
確かにエレノアに言われた通りに、新しいハムハムを作るのは良い事だ。
しかし俺は可愛がっていたハムハムがいなくなった事を考えると、やはり少し寂しい。
俺がそんな事を考えていると、ソッと戸を開けてエレノアが部屋に入って来た。
このユーリウスさんの屋敷では、俺とエレノアとミルキィは一人一部屋ずつ用意されていてそれぞれ別の部屋で寝ていた。
エレノアとミルキィは奴隷だが、ユーリウスさんが配慮してくれたのだ。
ちなみにガルドとラピーダは俺の部屋の入り口で護衛をしている。
当然、エレノアの事は素通しだ。
薄手のネグリジェを着たエレノアが俺に問いかける。
「御主人様?大丈夫ですか?」
「ううん、大丈夫じゃない。寂しい、エレノアに甘えたい」
俺は素直にエレノアを求めた。
だって本当に寂しいんだもん!
「そうではないかと考えて参りました。
少々ベッドが狭くなりますが、エレノアが御一緒しますか?」
「うん、そうして欲しい」
エレノアが俺の横に寝ると、俺はその大きな胸の谷間に顔をうずめる。
エヘヘ・・・やっぱりエレノアの胸はいいな・・・
俺がそんな事を胸の谷間で考えていると、またもや部屋の戸がスッと開いてもう一人入ってくる。
顔を上げてみると、それはバスタオル1枚だけ体に巻いたミルキィだった。
まあ、それ以外だったらガルドとラピーダが通さないわな?
しかし、屋敷の中をタオル1枚とはミルキィ大胆だな!
そのミルキィが暗がりの中、俺に話しかけてくる。
「御主人様?大丈夫ですか?」
「ううん、大丈夫じゃない。ミルキィにも甘えたい」
俺はまたもや素直に答えた。
しかしその俺の答えにミルキィが驚く。
「えっ?私にも?」
驚いたミルキィが俺のベッドに近寄ると、そこにエレノアを発見する。
「あっ!エレノアさん!ずるいです!
私が御主人様を慰めようとしたのに!」
非難するようにエレノアに話すミルキィに対して、エレノアは全く動じずに答える。
「では二人で一緒に御主人様をお慰めいたしましょう」
「はい!賛成です!」
「ではミルキィはそちら側に・・・」
「はい」
ミルキィはいそいそとエレノアの反対側に回って俺の側に横たわる。
俺は今度はミルキィの胸に顔をズボッ!とうずめる。
うん、やっぱりミルキィの胸もいいね!
その後ろからはエレノアの巨乳が押し付けられる。
おほ~ん!美女二人の大きな4つの胸に挟まれて幸せ~
俺って、やっぱり単純?
いや!こんな美女二人に挟まれたら、男なら誰だってこうなるに決まっている!
うん!間違いない!
そういう事にしておこう!
「御主人様、今日は辛かったでしょうが、よく我慢なさいましたね?」
「うん・・・」
エレノアが俺を子供をあやすか勇気づけるかのように話しかけるが、俺も子供のように素直に応じる。
「私もユーリウスさんが止めに入らなければ、よほどあの人をハムハムと同じ目に会わせようかと思ったのですが・・」
「え・・?」
ミルキィ、それは相手が死んじゃうからやめてあげて!
「でも御主人様が我慢していたので、私も我慢しました」
「うん、そうだね」
ミルキィの答えに俺もホッとする。
「もし、まだ辛ければ明日の講義は私とミルキィだけで済ませますが?」
「ううん、僕が発案者なんだし、エレノアの講義も見たいから僕もちゃんと手伝うよ」
「かしこまりました」
「それにシャルル君も来るしね」
「そうですね。
では今夜は思い切り私とミルキィに甘えて過ごしてください」
「うん、ありがとう」
俺は思い切り二人に抱きついてその夜は過ごした。
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