第44話 夜景に包まれながら
裸にされた愛菜は、美しいビーナスになって夜景の窓の近くで恥じらいながら立っていた。真一郎もゆっくりと裸の愛菜を見つめながら服を脱ぎ、愛菜を抱き寄せてキスをする。
(あん、いきなり)
唇を重ね、彼の舌が愛菜の口の中に忍び込んでくる。愛菜は思わずとろけそうな感覚になった。強く抱きしめられ乳房が潰されそうになる。
あの江梨花ママが私に(いっぱい可愛がってもらうのよ)という言葉がようやく理解出来た。
(あたしは今夜、彼の為に尽くす女になるのね……)
「好きだよ。愛菜」
彼の言うこと全てが愛菜には心地よかった。信頼し愛される男性に心を預け全てに従う嬉しさを感じていた。
思わず目頭が熱くなり熱い涙が頬に流れる。まるで魔法に掛かったような不思議な気持ち、不思議な快感が身体の中を走る。
「あの……聞いても良いですか?」
「いいよ。なにをかな?」
「母は、真一郎さんに、こんなこともしたんでしょうか?」
「そうだね。いろいろとね……でもなぜ?」
「いえ。いいんです。でも嬉しいです。キスしてください」
「わかった」
すでに愛菜と母とのバトルは始まっていた。しかし、娘がそんなことを思っているとは、房江はまだ知らない。
愛する娘が真一郎と、こんなに激しいことをするなど想像すら出来ないだろう。
「さあ、灯りを消すから、窓際に行こうか」
「はい」
「そこに立ってごらん」
「あぁ、はい」
薄暗くした部屋の間接照明と、外からキラキラと輝く遠くからのダブル照明で愛菜の裸体は想像以上の美しさだった。
「綺麗だよ。愛菜ちゃん」
「あん。はい、嬉しいです……」
恥ずかしそうに消え入りそうな声を出し、愛菜は窓際で立っていた。それを暗闇の中でじっと見つめる真一郎の顔。
愛菜の胸はどきどきと早鐘を打つように高鳴っていた。その音は更に高鳴りこのまま死んでしまいそうな気さえする。
身体の芯からの痺れと官能の波がジワジワと押し寄せ、立っていられないほどの目眩を感じてよろけそうになる。
その愛菜を真一郎が後ろから肩を抱きしめ支える。
「大丈夫だよ、安心しなさい」
「は、はい……」
そのまま、真一郎は窓のガラスに愛菜を前向きでピタリと押しつけ背後から腰を密着する。
ガラスの感触は冷たい。しかし、火照った身体の愛菜には気持ちが良かった。もし、その部屋が高層でなかったなら外からガラス窓にへばり付いた愛菜の全裸姿は丸見えになるだろう。
夕闇の中で、ガラス越しの窓からは淡い月明かりが差し込んでくる。いつも紳士的でダンディな真一郎は、その夜は野獣のようだった。
キスと真一郎の巧みな愛撫の嵐で愛菜は身も心もとろけていった。火照るような欲情の炎は愛菜の汗となって妖しく光っている。
その部屋のカーテンを開けた窓際には、ガラス越しに闇が広がっていた。部屋の照明を消してあるために部屋は暗く、外からの光や月の光だけが差し込んでいるだけで幻想的だった。
吹き荒れた熱い嵐の後の闇の中で、二つの肉塊は重なりながら床に崩れこんでいた。その重なり合った上を、白く妖しい月明かりが照らし、いつまでも光っていた。
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