③アルカディア・トラベラーズ!

ko2N

プロット

【参考作品】

 ストーリーに関しては特になし。

 世界全体の雰囲気は、「星のカービィ ディスカバリー」や「幻塔」のような、かつて滅びた文明の痕跡がある大自然のようなSF世界をイメージしています。




【世界観】

〈地球〉

 様々な生物が生息し、かつて人類が栄えていた惑星。

 世紀末大戦と呼ばれる人類史上最大規模の終末戦争によって、深刻な環境汚染に侵され、人々が生きることが困難な地へと変わってしまった。

 大戦後、残された人類はシェルターの中で暮らしていたが、食料もエネルギーも限界が近付いていた。そのため人類は叡智を結集し、高度な人工知能を持つ機械生命体を作り上げ、地球の再生と復興をそれに任せ、再び外で暮らせる時が訪れるまでコールドスリープについた。


 今回舞台となるのは、それから二万年後の世界。

 あれから再生と復興に成功し、再び大自然が返り咲いた地球。長い歳月の間にあった大規模な地殻変動の影響もあって、かつて人類が栄えた都市や文明は崩壊しており、今はその痕跡を未開拓領域に残すのみとなっている。

 今では人間に代わって、自我を持つアンドロイド達が各地で生活している。彼らは人類の存在こそ知識としてあるものの、既に絶滅したものと思われている。



〈アンドロイド〉

 新世界を生きる、一般的な機械生命体。

 外見は個体によって様々。一般的に、男性型は己の性能を誇示するためか機械的な外見の個体が、女性型はおしゃれのためかより人間に近しい外見の個体が多い。女性型の個体は違和感なく気配察知レーダーを搭載するため、獣耳型のものを採用していることが多い。

 彼らの名称は基本的に『個体記号-製造番号:識別記号』で表されているが、それだとあまりに長いため、普段はそれをもじった通称で呼び合うのが一般的。

 長い年月の間に学習し自己メンテナンス機能を有するようになり、新たな個体を製造することができるようにもなった。ただし、アンドロイドの製造には煩雑な手続きが必要で、簡単には製造できない。また、自我を持たない機械はロボットとして区別される。こちらは量産可。

 人類が生きていた時代に搭載されていた人工知能とは完全に別物で、人間と同じように各々が自分の考えや感情を持ち、かつての人間と同じような文化を形成している。時に非合理的な思考や行動も行い、見ているだけでは機械らしさは微塵も感じられない。

 機械でありながら己の私利私欲によって違法行為に手を染める『イレギュラー』と呼ばれる個体も存在している。


 これらのアンドロイド達は機械としてはあまりに非合理的な存在だが、それは原初の機械生命体が人類の行動と生活を再現するため、人間に似せてあえて不完全な形で作り上げた存在のため。イレギュラーと呼ばれる個体も、本来の挙動の内に含まれている。



〈世界観〉

 アンドロイド達が生きるこの新世界は、大きく三つの領域に分類される。


(1)都市(シティ)

 近未来の科学技術が結集した近未来都市であり、アンドロイド達の生活の中心となる首都。世界に三箇所ある。

 様々な拠点から物資が集い、ここで手に入らないものは基本的にない。治安も安定しており、世界に存在するアンドロイドの大半はこの都市で暮らしている。

 安心安全の生活圏であるため、外で危険な仕事をする個体からは『温室』と蔑称されることもある。


(2)拠点(コロニー)

 都市の外にある、未開拓領域に点在する生活圏。物語の中心の舞台。

 未開拓領域で働く個体のために作られた一時拠点。

 最低限の防衛システムは備えているが、都市の要塞と呼ばれる強固なものではなく、機械獣ビーストに襲われる危険も高い。そのため、機械獣ビーストの排除や道中の護衛を専門とするハンターも存在する。

 場所にもよるが、都市と違って警備の目が甘いため、イレギュラー達の隠れ家や違法取引の場に利用されたりと、全体的に治安は悪い。

 こんな危険地帯で暮らす個体には人には言えない複雑な事情持ちが多いため、互いに詮索をしないのが暗黙の了解になっている。


(3)未開拓領域(エリア)

 世界の大半を占める、かつて人類が栄えた痕跡が眠る大地。

 何者かによって作られ放たれた、アンドロイドだけを狙う獣を模した機械生命体『機械獣ビースト』が徘徊しており、非常に危険な区域として知られている。

 命を落とすこともある危険な場所だが、仕事で資源を求めてやってくる開拓者、一攫千金を求めてこの地を探索する冒険家、この地に眠る人類の痕跡を調査する未開拓領域研究調査団、機械獣ビーストとの戦闘を生業とするハンター等、危険を顧みず様々な者が訪れる地でもある。




【主要キャラクター】

鈴木すずきとおる(主人公)

(1)表設定

 明るく活発な黒髪の少年。年齢は十七、ただしコールドスリープ期間を除く。

 人類唯一の生き残り。一緒に眠っていたはずの人は何故かカプセルごと消えており、生存者は透の他に見つけられなかった。

 特に優れた能力はないが、頭の回転が早い上に行動力もある。戦闘面は一般人相当でしかないが、冷静な分析眼と機転を活かした頭脳ブレイン担当。

 冒険家を名乗るアンドロイドの少女、レーネに誘われる形で、人間の痕跡を探し求め、共に未開拓領域の調査に乗り出すことになる。

 天然ボケが過ぎるお姫様レーネのせいで、主にツッコミ担当。


(2)裏設定

 産まれた時代が世紀末大戦真っ只中という時代の関係で、幼い頃から戦場で戦っていた過去がある。大戦後の荒廃した世界では、その実力を買われ年齢を偽って警備隊の一員となっていた。

 そのため銃の扱いには長けており、体術もある程度こなせる。アンドロイドからは一般人相当としかみられてない戦闘力も、人間としては非常に高い。

 特に戦場で命のかかった状況でも冷静な分析と判断ができるのは、何よりの強み。ただその一方で、精神年齢は年相応。

 高い行動力も、かつて仲間を守れなかった無力な自分への後悔から来ている。自分の無力さを誰より嘆いており、そのことを突いてくるアンナ相手には熱くなりがち。


(3)台詞例

「……て、待ってくれッ!! 俺の名前は鈴木透! 返事はするけど死体じゃないんで、埋葬だけは勘弁してくれ!」

「お守りさ。旧時代の遺物だが、いざって時に頼りになる」



■Ry-01:Ne(メインヒロイン)

(1)表設定

 エリア32の遺跡内で透を発見した、冒険家を名乗るアンドロイドの少女。通称レーネ。

 見た目は機械らしさを全く感じさせず、年頃の少女そのもの。

 右が蒼、左が紅のオッドアイ。プラチナブロンドのセミロングヘアーに、ケモミミ型のレーダーを搭載している。服装は上は探検家のための丈夫で動きやすい服装を、可愛らしくアレンジされたオーダーメイドの衣装。下はチェック柄のスカートに、スパッツを履いている。

 他の装備としては、手足を保護するためのレザーグローブにロングブーツ。腰には護身用の折り畳み式の光子刃ブレイド(※1)を携えており、様々な道具が入ったバックパックを背負っている。

 見た目だけなら可憐な少女にしか見えないが、最新型の瞬間加速機能ブーステッド(※2)を搭載し、加速特化形態アクセルモード(※3)への機構変形モードシフトが可能で、戦闘も一人前にこなせる。

 底抜けに明るい性格で、純真無垢なムードメーカー。物腰が丁寧で育ちの良さを感じるが、来る時はぐいぐい来る押しが強いタイプ。ついでに滅茶苦茶天然で、突拍子もないことを言っては周りにツッコまれるボケ担当。

 突発的な異常事態に陥るとパニックで思考がフリーズしがち。頭を使うのも苦手で、自分でも苦手なことを理解しているため、その辺は適材適所の要領でハチローや透に投げている。

 同じ未知を追い求める同志ということもあり、研究団のシイナと仲が良い。


(2)裏設定

 その正体はRから始まるロイヤルナンバーで、シティの上流階級の御令嬢にあたる個体。未知が広がる外の世界に憧れ、ハチローと共に家を飛び出し、冒険家の仲間入りをした。世間知らずなところがあるのも、元々箱入り娘だったため。

 家出した立場であるため、実家に頼らず自力で生活できるように日々努力している。

 彼女の通称であるレーネも、権力の証明となる個体記号を伏せ、後半の『01:Ne』の箇所だけでも通じるような通称を選んでいる。


(3)台詞例

「あ、あのー。起きてくださーい。生きてますかー? し、死んでたら返事してくださーい」

「色々大変なことも多いし、トラブルに巻き込まれることもあるけど――私は冒険者になったことを、後悔していません。だって、こんなに素敵な世界に気付けたんですから!」



(※1)光子刃ブレイド

 高出力エナジーの強力な刃を展開する、新世界における一般的なエナジー充填式の剣。

 威力は鉄も簡単に切り裂き、必要な時だけ起動すればいいため燃費もいい。ただし、近距離戦闘になるため基本的には後述する瞬間加速機能ブーステッドとセット。

(※2)瞬間加速機能ブーステッド

 アンドロイドのエネルギー源であるエナジーを瞬間的に高出力で放出し、瞬間移動と見間違える速さの高速移動を行う機能。使用後は移動距離に応じて処理硬直が発生し、また再使用までの冷却時間も必要になる。

 戦闘を行うアンドロイドの間ではよく話に上がる機能だが、一般的に使われる機能ではないため、搭載していない個体の方が多い。

(※3)加速特化形態アクセルモード

 瞬間加速機能の欠点を解決するために作られた、最新型の機構変形機能。

 演算機能にリソースを優先的に回すことで加速後の処理硬直をほぼゼロにし、エナジーを追加で消費することで冷却機能を強化し、本来できない加速の連続使用を可能にした。ただ、燃費は相応に重い。また、機構を切り替えるために少し時間が必要になる。



■D-86:Ro

(1)設定

 レーネに付き従う球体ボール状のアンドロイド。反重力機構アンチグラビティで常時浮遊している。通称ハチロー。

 話す言葉がカタコトで機械らしい。活発なレーネとは対象的におとなしい性格で、レーネの自制役。だったのだが、他に抑えてくれる人(※透のこと)が現れたため、天然でボケるレーネに時折悪ノリするようになった。

 規格が特殊で、人型のレーネのように器用に動けないが、浮遊できる性質を活かして周囲の様子をうかがったり、支援物資を受け取って届けたりと、レーネをサポートしてくれる存在。

 レーネとは産まれてからの付き合いで、親友であり幼馴染。道具扱いをされることが多いドローンタイプの自分を家族のように扱ってくれたことから、大切に思っている。透のことは最初こそ警戒していたが、会話している内に信頼にあたる人物だと判断した。

 構造上瞬間加速機能ブーステッドが搭載されていないため、戦闘には向かない。ただ内蔵している装備で援護射撃くらいはできる。


(2)台詞例

「ボク、D-86:Ro。ハチローッテ呼バレテル。ヨロシクネ」

「ボク、レーネヲ助ケタイ。……トオル、オネガイ。チカラヲ貸シテ……」



■Sy-11:Na

(1)設定

 人類の痕跡を研究する未開拓領域研究調査団に所属する、寡黙なアンドロイドの少女。通称シイナ。

 見た目は少女に似ているが、レーネほど人間そっくりには似せておらず、身体の所々に機械らしさも残っている。彼女曰く、「おしゃれにしてもコスパが悪い」。

 薄紫の髪に合わせるように獣耳型のレーダーをつけているが、彼女のレーダーは自然に髪に馴染んでいたレーネと違い、ネコミミヘッドホンのような後から追加したデバイスに見える。また研究の都合上、眼鏡の形をした様々な分析レンズを装着している。

 研究の名目で透に様々な支援をしてくれる存在。透としてはヒモみたいで複雑な心境だが、彼女がいないと食べ物の確保すらままならないため、素直にその支援を受けている。

 戦闘はできないが装備のメンテナンスは得意。研究団として未開拓領域で見つけた物品や資材を買い取ってくれたり、調査に必要な装備や道具の販売等もしているため、コロニーで生活する個体からは重宝されている。

 普段は超大型のキャンピングカーでコロニー間を移動しているため、一箇所に留まることはあまりない。

 唯一の人間である透に研究対象として興味津々。一方で、他の個体に対しては基本塩対応。レーネだけは別で、一人の友人として好感を持っている。


(2)台詞例

「任せて。人間の食生活を研究する絶好の機会。これを逃す手はない」

「剣は銃よりコスパがいい。探索中の護身目的なら、遠距離である優位性も薄い。でも、瞬間加速機能ブーステッドもない人間が扱うのは無理、無茶、無謀。だからあなたが使うなら、こっち」



■Te-10:Be

(1)設定

 未開拓領域研究調査団に所属する巨体の男性型アンドロイド。通称ジュウベエ。

 男性型アンドロイドの中でも特に厳つい見た目をしており、その体躯には沢山の古傷が刻まれている。また視認用レンズがサングラスのように特徴的で、口調も古風で威圧感があるせいで普段からイレギュラーだと勘違いされるが、これでも研究団の技術職である。「ヤのつく家業の人にしか見えねぇ」とは透の談。

 買い取った素材で様々な装備や道具を作るのが彼の仕事で、その腕前は非常に高く、実現可能な範囲であれば無茶振りにも応えてくれる熟練の職人。

 昔は未開拓区域でも特に危険な区域の担当で、職人であると同時に前線を張っていた。古傷はその名残である。自分は生き残ったが調査の途中で数多くの仲間が命を落としたため、継続困難と判断され調査は打ち切り。代わりに今はシイナの研究を補佐している。

 第一印象のせいで近寄りがたい雰囲気の個体だが、案外世話焼きなところがある。話してみれば技術職らしい矜持を持った個体で、研究団に所属している理由も未知への好奇心から。頑固な性格に見えて、新技術の会得には高い意欲を見せる挑戦心の持ち主。


(2)台詞例

「ワシの名はTe-10:Be。長いけん、呼びたきゃジュウベエと呼べ。若造」

「別に話したくなければ黙れば良い。話せば頭が冷える時もあろう。手前の好きにせい」



■An-07:Ph

(1)設定

 研究団の護衛についている、アンドロイドの少女。通称アンナ。

 機能を優先しているため、その見た目は男性型アンドロイドのようにメカ要素が強い。それでも身体の曲線等、女性らしさは身体の節々に感じられる。彼女のレーダーは獣耳型ではなく、エルフ耳のような感じで左右に尖っている。ツンデレキャラ。

 あくまで研究団とは仕事の付き合いで、普段は未開拓領域の機械獣ビーストを狩ることで生計を立てているハンター。彼女は特に戦闘力が高いため、護衛についている研究団に手を出す真似は誰もしない。一部の人からは『紅牙こうが』の通り名で呼ばれている。

 透に対して突っかかるような言動が多いが、それは彼女なりの忠告であり、決して悪気はなく心配しているだけである。人に自分の気持ちを伝えるのが不器用な性格。


(2)台詞例

「あたしの名前はAn-07:Ph。アンナでいいわ。よろしくね、人間さん」

「別に気にする必要はないわ。それ相応の報酬を頂いてるもの。感謝ならシイナに伝えなさい」






【物語構成】

 序章及び終章含め、全六章構成。


〈序章〉

 世紀末大戦後、深刻な環境汚染の影響で滅亡の危機に瀕していた人類は、高度な知能を持つ自立型機械生命体を製造。地球の再生と復興をそれに任せ、長いコールドスリープについた。


 長い年月を経て、コールドスリープについていた少年――鈴木透は目を覚ます。

 目覚めた直後、そこには見知らぬケモミミの少女と、宙に浮かぶ謎の球体状の機械がいた。

 少女の名前はレーネ、球体の方はハチロー。話を聞いてみると、彼女達はアンドロイド――つまり、機械生命体らしい。

 「他の人間はどこにいったんだ?」とレーネに聞いてみると、「他の人間はいません――いえ、現状誰も確認されていません。何せ、人類が眠りについてから、およそ二万年の時が経っているので」との返答が戻ってきた。

 あたりを見渡してみると、他の人間はカプセルごと消えており、建物は崩落して半壊。植物が生い茂っていることからも、長い年月が経っており、自分だけが生き残っている状態だった。


 カプセルから出て、レーネと共にシェルターの外に脱出すると――そこは、大自然が返り咲き、かつての文面が過去に葬り去られた、全く知らない惑星へと変わっていた。

 「これからどうしたもんか」と呟いた透に、レーネは「自分達のコロニーに来ませんか? 透さんに紹介したい人がいるんです!」と提案する。それに透は賛同し、最初の目的地をコロニーへと決めた。



〈一章〉

 空が茜色に染まる頃、レーネの道案内の下、彼女らの拠点となるコロニーに到着する。

 種類様々なアンドロイドが生活する町並みに驚きながら、最初に案内されたのは超大型のキャンピングカー。彼女の紹介したい人物とは、そのキャンピングカーの持ち主であり、未開拓領域研究調査団のリーダーであるシイナだった。

 シイナは本物の生きた人間である透に興味津々。目覚めてから何も食べておらず、お腹を空かせた透を見て、研究する好機と彼のために晩御飯を作り始める。「完成するまで、他の人に挨拶してくるといい」と言われ、一旦その場を後にする。

 装備開発担当のジュウベエと、研究団を護衛するハンターのアンナに挨拶をかわしたところで、料理が完成。せっかくなのでみんなで一緒に食べようという話になる。


 食事中、これからの透の処遇をどうするかの話が出る。

 本来ならばシティにある研究団本部に移動させるべきところだが、シイナは本人の意思を尊重したいと語る。どうするか悩んでいると、レーネから「では、私と一緒に未開拓領域を調査しませんか?」「調査していれば、他の人間の痕跡も見つかるかもしれませんし」と提案される。

 しかしアンナから「自衛もロクにできない人間を危険地帯に連れて行くの?」と反対される。

 だが、透は「自分の身くらい守れるさ」と反発し、レーネと共に冒険することを決める。


 翌日。昨日、「冒険に出る前にここに来て欲しい」とシイナに言われていたので向かったところ、冒険の為に色々準備を整えてくれていたらしい。衣服から装備、必要な道具から試作の非常食、果ては武器となるアサルトライフルまで。

 どうしてここまでしてくれるのか聞いてみると、シイナは「これも研究の内」「代わりにあなたのこと、人間のこと、色々教えて欲しい。それが対価」と答えた。貢がれるのは複雑な心境だったが、「そういうことなら」と素直に感謝して受け取ることにする。


 準備も終えて、向かう先は透が眠っていたシェルター。昨日は透を見つけたことで調査が中途半端に終わってしまったため、その続きを調査したいとのことだった。

 その道中、雑談も交えながらこの色々質問を投げかける。この世界のことや、疑問に思ったこと。そして、レーネ自身のこと。

 レーネは質問に素直に答えてくれたが、自分の事だけは話を逸らす。言いたくないことを察した透は無理に聞こうとせず、先へと進む。

 改めて透の朧気な記憶を下に調査をしてみるが、特に目新しいものは見つからなかった。残念がるレーネに対し、透はコールドスリープのカプセルを筆頭に、あったはずのものがないことに違和感を覚えていた。


 結局違和感の答えは見つからず、暗くなってきたためコロニーに帰還することに。

 その帰り道、透達は機械獣ビーストに襲撃される。軽くそれを撃退したレーネだったが、襲撃はそれだけじゃなかった。気付けば凄まじい機械獣ビーストの群れに囲まれており、二人と一体は全力で逃げることに。

 途中転んでしまった透だったが、機械獣ビーストは透に見向きもせずにレーネ達を追いかける。

「もしかして――あいつら、アンドロイドしか狙わないのか?」

 そのことに気付いた透は、無線機を使ってレーネと連携を取りながら、手持ちの道具を駆使し、機械獣ビーストの群れを撃退することに成功する。

 なんとか窮地を脱した透達は、あまりの数の多さに違和感を抱きながら、さらなる襲撃が来る前にコロニーに戻ることにした。



〈二章〉

 コロニーに帰還したところ、シイナが思いがけぬご馳走を用意して待っていた。

 晩御飯を食べながら今日の出来事をシイナに伝えると、彼女なりの推測と共に「機械獣ビーストのことなら、専門家ハンターのアンナの方が詳しい。この時間なら酒場にいると思う」と告げられる。

 食事を終えて酒場に向かい、アンナに話を聞いてみると「普通ならありえない話ね」という言葉と共に、いくつかの可能性を提示される。しかし、どれもしっくりこない。

 最終的に、「明日、調査してみるわ」「原因がわかるまで遠出はしないこと。次は無事かもわからないんだから」との言葉で、今日はお開きとなった。


 翌日。朝食を食べて宿屋に戻ってくると、レーネとハチローが口論していた。「何してんだ?」と話を聞いてみると、レーネが「私達でも調査しましょう!」と言って聞かないらしい。

 引き止めるために「じゃあ、外は俺が調べてくるよ。機械獣ビーストの狙いはアンドロイドなんだろ? 人間の俺なら襲われることもないだろ」と告げ、レーネにはコロニー内での情報収集を任せ、ハチローと共に調査に出る。


 昨日襲われた場所に行ってみると、先にアンナが現場を調査していた。

 状況を聞いてみると、確かに普通じゃない数の機械獣ビーストが現れた痕跡があったが、倒したはずの機械獣ビーストの残骸は消え去っていた。

 「誰か別の奴が持ち去ったんじゃないのか? 金になるんだろ?」と透は考えたが、アンナは「それなら研究団に売りに来てるはずよ」と答える。それが意味することは――誰かしら人の手が入っている、という状況証拠だった。

 事件であると確信した二人と一体。調査を続けるアンナに付き合うことを提案したが、アンナから「仕事でもないのに、足手まといの護衛をする気はないわ」ときつい言葉をぶつけられる。

 そのままアンナと口論になり、最終的に「ただの人間にすぎないあんたに、一体何ができるの?」という言葉に、透は何も言い返せなかった。


 渋々コロニーに帰還した透達は、コロニーで情報収集をしていたレーネと合流する。

 近隣のコロニーが超大型の機械獣ビーストに襲われたこと、最近行方不明の開拓者が出ていること等、レーネは集めた情報を共有するが――落ち込んでいた透に気付き、話を聞く。

 一連の出来事を聞いたレーネは「言われっぱなしでいいんですか?!」「透さんは足手まといなんかじゃないです! 昨日だって、透さんがいなかったら危なかったんですから!」と元気づけられる。

 その言葉を聞いて、アンナを見返すために、透は調査の続行を決意する。

 まずは集めた情報から導き出された、怪しい噂が流れる隣のコロニーへと向かうことにした。



〈三章〉

 隣のコロニーに到着した頃には、日も落ちかけていた。

 治安の悪さを隠そうともしないコロニーで、情報収集を始める。物怖じもせずにぐいぐいと声をかけるレーネに、透とハチローがフォローする。

 そして、最終的にある情報へと行き着いた。それは、『とあるならず者達が機械獣ビーストを使役している』という噂だった。


 早速そのならず者達がアジトにしているエリアに向かったが、その情報自体が罠だった。

 気付けば退路を断たれ、統率された機械獣ビーストとならず者が、レーネを追い詰める。油断していた透は機械獣に襲われ取り抑えられ、追い詰められるレーネを見ることしかできない。

 絶体絶命の状況の彼らを救ったのは、この場に駆けつけたアンナだった。数の不利を物ともせず、圧倒的な力で撃退する。

 結局何もできなかった透に向けて、アンナの言葉の刃が刺さる。間に割って入るレーネだったが、透は投げやりに言葉を吐き捨て、この場を逃げるように立ち去った。


 追いかけてきたレーネと共に、元々いたコロニーへと帰る。

 なんとか元気づけようと声をかけるレーネだったが、それも今の透には逆効果でしかなかった。透はつい「機械の癖に、お前に俺の何がわかるってんだよ!!」と八つ当たりしてしまう。

「何やってんだよ、俺……」

 レーネと別れ、落ち込む透の下にやってきたのは、研究団のジュウベエだった。

 事の顛末を透から聞いたジュウベエは、「悪いと感じたなら、謝ればいい。なぁに、あ奴はその程度の事、気にするような輩ではない。手前も知っておろう?」と透を諭す。

 明日謝ることを決めた透は、今日のところは頭を冷やすため、普段泊まっている宿ではなく、研究団のキャンピングカーを借りて眠りについた。


 翌日。仲直りするため宿屋に向かったが、宿屋が何者かに襲撃されていた。

 セキュリティの静止を無視し、レーネの泊まっている部屋に向かうと、部屋はひどい有様で、セキュリティに聞いても部屋の主は見つかっていないと伝えられる。

「昨日の夜、何があったんだ?」

 悪い予感がした透は、慌ててレーネとハチローの二人を探す。

 ハチローはすぐに見つかった。何があったのか聞いてみると、昨日のならず者達にレーネが誘拐され、自分だけなんとか逃げ出したことを告げられる。そこでハチローは初めて、レーネが口にしなかった自身の身の上について語る。

 レーネは本当はシティの上流階級の御令嬢で、家から飛び出して冒険家になったこと。彼らは身代金目当てにレーネを攫ったこと。そして、そのことが家に知られたら――仮にレーネが救出できたとしても、二度と冒険家として活動できなくなるであろう、という話を。

「ボク、レーネヲ助ケタイ。……トオル、オネガイ。チカラヲ貸シテ……」

「ああ、言われなくとも当然だろ! 待ってろレーネ、絶対助けてやるからな……!」



〈四章〉

 取引現場の旧倉庫に向かった透は、昨日のならず者達とたった一人対峙する。

 拘束されていたレーネの無事を確認し、取引の名目で用意したアタッシュケースを渡す。中の金銭を確認するために開けると、ジャミング効果を持つ煙幕が撒き散らされ、その隙に透は奇襲をかける。

 奇襲は失敗。機械獣ビーストの反撃を受けるが、昨日と違って準備を整えていた透は、それらを確実に各個撃破してゆく。

 完全に予想外の展開に、イレギュラー達が追い打ちをかけるように攻めてくるが、透は冷静だった。道具を駆使してそれらをいなし、注目を浴びてる隙にハチローが背後から奇襲をかけ、レーネを救出する。


「こうなってしまってはやむを得ません。本当はここで使いたくはなかったんですがねぇ!」

 追い詰められたならず者のリーダーは、切り札を解き放った。

 旧倉庫の壁をぶち抜き現れたのは、超大型の機械獣ビースト。先日レーネの噂の中にあった、近隣のコロニーを壊滅させた機械獣ビーストだった。

 一転窮地に立たされた――かと思いきや、何故か機械獣ビーストはならず者のリーダーの命令を聞かない。どころか、標的をならず者達へと変え、急に暴れ始めたのだ。

 何が起きているのかわからないが、この隙に逃げようと提案する。だがレーネは、襲われているならず者達を見て、助けるために間に割って入る。

「ああ、くそっ! そうだよな――!!」

 どこまでもお人好しなレーネに助太刀し、透は昨日のことを謝罪する。全く気にしてなかったどころか覚えてすらいなかったレーネに笑うと、改めて二人で超大型の機械獣ビーストに立ち向かう。


 持てる力を尽くし、最終的に撃破することに成功した二人。

 遅れてやってきたアンナに叱られながらも、透は改めてその力を認めてもらえるのだった。



〈終章〉

 レーネの正体が周りに知られることを懸念し、この場から移動することを決めた一行。そして、人間の研究のために半ば無理矢理旅に同行することを決めた研究団。


 旅立ちの前、レーネは透に見せたい場所があると、秘密の場所へと案内する。

 そこは、彼女が星空の湖と称する地。蛍が飛び交うのどかな湖だった。透はその光景を見て、「蛍、か。てっきり絶滅したもんだと思ってたが……まだ生き残ってたんだな」と感動する。

 この光景を見ながら、レーネは「きっとシティにいたら、こんな景色を見ることはできませんでした。……そんなの、とてももったいないですよね?」「色々大変なことも多いし、トラブルに巻き込まれることもあるけど――私は冒険者になったことを、後悔していません。だって、こんなに素敵な世界に気付けたんですから!」と語る。

 透は「俺が生きてた時代じゃ、都市開発やら環境汚染やらで、こんな景色なんかなかったからな……」「俺、目が覚めて――いや。生きてて良かったよ」と、レーネの言葉に同意する。


 改めて世界の美しさを見て、レーネは「未熟な自分一人じゃ大したことはできないけれど――透さんと一緒なら、どこまでも行ける気がするんです」「どうか私と一緒に、この世界を冒険しませんか?」と改めて聞かれる。その問いに対して、透の答えは決まっていた。


「当たり前だろ。これからもよろしく頼むぜ、?」

「はいっ!」

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