元・折り紙作家は「紙作品」から、「神(が宿る)作品」を編み出す。

キーマカレー

第1話 NO ORIGAMI NO LIFE!

「あああ!まさか・・・!こんなことが!」

「おお、ユーリアよ。そなたは悪くない!」

「・・・・・。」

俺の名前はカルタ・オーディン。本日7歳。男。・・・前世名は「大原 貫太郎」である。

大原  貫太郎 ・・・日本生まれの日本育ちであり、普通の家に生まれた俺は普通に育ち、普通に仕事に励み、結婚し、子供達の独り立ちを無事に見送った後、妻と娘夫婦と孫に囲まれながら肺がんで亡くなった。

・・・はずだったがなんか映画でしか見たことない、やたらゴテゴテしたお貴族様の屋敷、オーディン家の次男として転生した。今日は俺の誕生日、

そして「精霊王契約」の日でもあった。

 この世界は「魔法」や「スキル」や「モンスター」などが存在する云わば、ファンタジーワールドである。

正直ファンタジーなど「ド●ク●」や「ポ●モ●」ぐらいしか知らない。(ゲームやアイフォンの操作が全然覚えられなかった。)

むしろ娘や孫たちの方が詳しかったような気がする。(アイドル育成ゲームとやらにはまっていた。)


この世界を作った「精霊王」の加護を7歳になると受け取れる・・・ということになっている。

生まれた人間たちは両親の髪と目の色に関係なく決まって全員、黒髪、黒目で生まれる。しかし、7歳に「精霊契約」を行うと精霊王から加護を授かり、「スキル」と新しい髪と目の色が与えられる。

(ファイターなら金髪 炎の魔法使いなら紅い髪など・・・)

だが俺の髪と目の色は・・・・黒のままであった。そう、「スキルなし」である。

一度スキルなしと認定されてしまっては生涯魔法にも格闘スキルなどにも恵まれず、並な肉体で生きていくことになる。

勿論、スキルなしというのは決して珍しいというわけではなく、人類の約4割はこのスキルなしである。

しかし俺の場合、生まれた家系に問題があった。

オーディン家はいわゆる「魔導士特化家系」である。偉大なる英雄「異次元の魔導士」の子孫であり、代々魔導士同士で

婚姻を繰り返すことで代が進めば進むほど、魔力の高い魔導士や特殊な魔法を使用できる魔導士が生まれていった。また、

魔導士のスキルに目覚めなくても「アイテムボックス」や「翻訳家」など極めて珍しいスキルに恵まれ、オーディン家は優秀なスキル持ちの貴族として有名であった。その直属であるオーディン家長男「ロイ・オーディン」も「無限魔導士(魔力に制限がない魔導士で本人の体力がある限り、どんな魔法も時間を空けずに発動す続ける)」のスキルを授かり、次男である俺もさぞかし優秀なスキルを授かると思いや・・・、この様である。

「どうしましょう・・・。来月はコレのお披露目パーティがあるのに・・・!」

「しかもルイーゼ家の令嬢の婚約発表もあるのだぞ!!婚約者がコレでは取り消しになってしまう!あの令嬢はスキルに目覚めているというのに!」

両親かはすでに俺をコレ扱いかよ・・・。まあ元々オーディン家はスキルなしを見下していたのだから仕方のないことかもしれない。

おれは正直前世と同じ色なのでしっくりきている。つうかこの場合どうなんの俺?

「と・・・とにかくソレを地下牢に閉じ込めろ!!顔も見たくない!!」

命令された使用人は小声で「申し訳ありません・・・。」と言いながら俺を抱えていった。





「誕生日前に死んだことにするか?嫌、結局繋がりが減ってしまう!」

「孤児院や教会から同い年のスキル持ちを連れてくるとか・・・?でもここ最近はろくなスキル持ちが生まれてこなかったわ!」

「父上、一つ提案が・・・。」

「おおロイよ!なんか秘策があるのか!?」

「俺が通っている学校に友人がいて、そいつの弟がアレと同じ7歳なんです。」

「そいつのスキルは!?」

「ふふふ。俺も驚きましたよ。なんと”マジッククリエイター”、【自然系魔法を好きなように構築】できるだそうです。

そいつの家は貧しいうえに父子家庭。その父親も金にすごく意地汚く周りにすごく嫌われているそうです。・・暗殺でもしてしまえばいいんですよ。」

「おおおお!でかしたぞロイ!!それでこそ我が息子!!」



地下牢にて

「はあ・・・・。楽しい!!」

地下牢に閉じ込められてどれくらい経ったのか。一応死なせないようにメイドや料理人が水とパンを持ってきてくれている。

その度に「ごめんなさい。」やら「寒くないか?」と心配してくれてているのでそれほど悪い気はしない。(面倒なのは家族だけだ。)

むしろ思う存分に折り紙ができる。俺は前世では折り紙作家だった。昭和世代ではゲームがなく、外遊びが決して得意ではなかった俺が唯一はまったのが折り紙だった。

祖母が教えてくれてみるみる魅了された。その辺の紙で気軽に遊べるし、気難しい娘相手にも好きなアニメのキャラクターを折り紙で折ったらすごく喜んでくれた。

なにより、俺が働いていた場所は製紙工場。余った紙が出る度に昼休みを折り紙の自作に費やしていた。仕事を定年退職した後、俺はすぐに折り紙作家の資格をとった。

それを見た孫が「動画配信やろうよ!」提案し、孫に折り紙しているところを撮影されたりもした。

なのにこの世界には「折り紙」という文化がない。味噌や醤油がないことよりもまずそのことにショックを受けた。

紙は本や手紙が主な使用法で魔導士に至ってはメモリーストーン(要はビデオカメラ)に要件を写し取ったりする。

そもそも工作という娯楽や授業科目がなく、「魔道具作り」という科目しかない。

赤ん坊の玩具すらも魔法にたよった玩具ばかりだった。(黒髪、黒目でも生活しやすいように魔石を使用した電化製品のようなものが数多く存在する。)

メイドに要らない紙をたのみ、ろうそくの明かりを頼りに前世の記憶をたどりながらひたすら折り続けた。ちなみに今は鳥シリーズにはまっている。基本の鶴から始まり鳩、梟、白鳥・・・、うーんやっぱり色紙が欲しい。この世界魔力のこもったインクやら特殊な染物をした服とかはやたらあるのに、紙は黄ばんだ白ばかりだ。どうにかして広まんないかなあ。折り紙。

「カルタ様。食事と毛布の替えを持ってきました・・・・。」

「あ、ありがとうございます。ライアさん。」

ライアさんは2年前からここの料理人見習いとして働いており、「鑑定スキル」で食材の選別を任されている。(食べれる野菜と毒草の区別など)

「ごほんっ。【偉大なる精霊王とその眷属達よ。今日の恵みを誠に感謝いたします。】」

「スキルなしでもちゃんと言うんですね・・・。パンと水の一部も捧げていますし・・・。」

「俺自身にスキルなくても精霊達のおかげで生活が豊かになっているのは確かですし、もう物心ついた時の習慣だしなあ・・・。」

「カルタ様・・・!」

先ほどの言葉は前の世界でのいただきますである。また、一日一回食べ物や飲み物を少し精霊に捧げるという習慣もある。するといつの間にか無くなっている。精霊が見える【魔眼】のスキル持ちによるとちゃんと精霊たちが食べているらしい。

「うううっ・・・。やっぱ僕には・・・」

「なんか言ったか?」

「・・・・っかカルタ様!それ食べないでください!実は・・・ってえ!?」

「うおっ!?」

ライアさんがなんか大声で言いかけた時。俺が作った折り紙たちが動き出した。白鳥と鳩の折り紙がパンと水をひっくり返し、鶴と梟の折り紙がとがった先で水で書き出した。

”コレハ ドク キケン”

「は?」

よくよく見てみると鶴や梟の先が普通の水ではありえない黒色に染みてた。

「っ申し訳ありません!!カルタ様!!!」

ライアさんが泣きながら土下座してきた。

・・・あ~、なんとなくわかってきたぞ。

「あいつらはなんと?」

「・・・・っ!か・・・代わりの息子を用意したから始末しろと・・・!出ないと孤児院と料理人達のスキル無しを全員殺すと・・・!!既に調理にふさわしいスキル持ちはそろっているから痛くもかゆくもないと・・・!!申し訳・・・申し訳ありません!!」

・・・あいつらは本っっっ当にくそ野郎だな。スキルなしの黒髪の使用人や孤児のライアさんを狙うなんて。しかもライアさんがいた孤児院は確かオーディン家の親戚が善人ぶるために寄付をしている、その孤児院のをつぶすことも殺人を隠蔽することもたやすいことだ。

「ライアさんは悪くない!!危険を知らせようと俺の折り紙を動かしてまでして・・・ってあれ?ライアさん、魔力操作できたっけ?」

「え?俺は鑑定スキルのみですよ?微量の魔力はありますがものを動かすなんて・・・?」

「え?」「え?」

俺たちの素っ頓狂な声を余所に折り紙の鳥達は俺の周りを飛んだり髪をつついていた。


「「ええええええええ!!??」」

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