第6回 悪い負け方

 これは今日のお話。現在、三重県の松阪競輪場で開催中の開設記念競輪GⅢ。今日の最終12レースでの出来事だ。レース中は現地は雨。

 それをスマホ越しに見ていた私だが、最後の最後でアクシデントが発生した。


 落車だ。本命にされていた選手が落車した。そのため、最終レースは大荒れで、⑦-⑥-①の決着。払い戻し2車単で、『33,390円』。3連単は、『368,260円』の高配当。私はハズレ。他にも、全国各地でハズレたお客様方は多数いるはず。


 落車は最悪だ。客にとっても、走る選手にとっても。それに久しぶりにをした。ハズレたから?落車があったから?違う。私はでハズレたからだ。


 本日の松阪競輪の出走表を見て、荒れそうだと思ったのが最終レースだった。

 今節の松阪競輪(10月7日から開催)は、不意打ちのような出鱈目なレースが1日1回はあった。穴党である私は、今日、荒れるとすれば、それがどこかと考えた。

 そこだけ勝負すればいい。あとは、見ているだけで充分だと。それが最終12レースだ。


 12レースで人気になっていたのは、②吉田拓矢選手と、彼の番手(つまり、後ろに来る選手)の⑨吉澤純平選手。そして、対抗人気が⑦太田おおた竜馬りゅうま選手だった。

 しかし、今日の松阪市は天気が悪く、それに松阪競輪場、特有の競走路でレースが荒れると読んだ。この松阪競輪場の特徴。のだ。その長さは、『61.5m』ある。

 みなし直線とは、競走路バンクの4コーナーを抜けて、ゴールするまでの距離をいうのだが、そこのところはアバウトらしく、なのでわざわざ『みなし』という言い方をするらしい。


 話を戻そう。松阪競輪場は1周が400m。そして、ここの長さは、全国の400m競走路の中で、5番目(31カ所中)に長い。みなし直線が長くて、天気が悪いのであれば、レースが荒れると考えた私。みなし直線が長い競走路は、先行型の選手には不利だ。最後、ゴール寸前で、他の選手に追い込まれ、逃げ切れないケースが多い。

 本命になっていた②吉田選手は、『先行型』の選手。対抗格の⑦太田選手も『先行型』の選手。同じ先行型でも、普段から個々の選手の競争を見ていれば、選手の個性がわかる。

 私は②吉田選手が先行し、⑦太田選手は捲ると読んだ。そこは合っていた。

 そして、②吉田選手が先行すれば、その後ろを走る選手にもチャンスがまわってくると思った。12レースの関東ラインは、②⑨⑥の順番で3人並んでいた。②吉田選手、⑨吉澤選手に人気が出ていたが、穴党の私はこの人気の二人を省いて、関東ライン3番手の⑥おか光良みつよし選手を車券に加えた。そして、最後捲り勝負にくるであろう⑦太田選手を加えた3連複で勝負した。12レースで使った金額は600円だけ。穴党はデューク東郷のようなスナイパーではならないのだ。


 ところが!ところが!だ!最後、ゴール寸前で落車が発生。⑥番も、⑦番もあるのに、①山田久徳選手が車券にいないのだ!!!痛恨のミスである!愕然とした。呆然とした。落車で、全てがパーである。このレースで使った金額は600円。600円を失った。ここまで考えに考えていたのに、ハズレなのだ!

 漫画『ゴルゴ13』で、デューク東郷がミスファイヤするエピソードがあったのだが、まさにミスファイヤしたデューク東郷になってしまったのだ。


 競輪で負けるとき、1万、2万、3万と負けた金額は人それぞれ。だが、今日の最終レースで、私の失った金額は600円。全国探せば、私以上の負けを被ったお客様は多数いるだろう。

 しかし、スナイパーたる穴党が、このようなをするのは本当に大失態だ。言ってはなんだが、5万円、10万円負けるより負け方をしたのだ。

 私の600円は今頃、雨水とともに松阪の街に吸い込まれているだろう。さらば、愛しき私の600円。

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