異世界から勇者の国の兵器・技術を召喚する少女
山田 勝
プロローグ
第1話アリサが来る
「貴様らの非道、女神様は決してお許しにならないぞ!」
ここは一村一領主の騎士爵の村。辺境で、もっとも近い村でも馬車で3日掛かる。
縛られて盗賊の頭目の前に引き出されている村の領主騎士は叫んだ。30歳前の偉丈夫で甲冑を着ている。つい先程まで戦闘があったのだろう。甲冑はうす汚れている。村には従士と村人の遺体が数十、無慈悲にも転がっている。
白昼堂々と村を襲われたが、従士とともに果敢に戦い。従士は全滅したが、ほとんどの村人を有事の際の隠し砦に避難させることに成功した。妻子は馬車で逃がすことにも成功。これで私が殉職したら子供には家名を継がせられる。妻には年金が支給される。非常用の魔道通信で辺境伯軍にも連絡した。これも魔王軍が来た時の手順どおり。
しかし、まさか、人間に人間側から襲われるとは思わなかった・・・
この村は魔王軍が侵攻した際、命を掛けて遅滞戦闘を行い。情報を送るのが役割。
その代り、税金は格安で開発資金も下賜された。
通常、対魔王軍の施設や村を攻撃する不心得ものはいない。
だから、こいつら女神様の鉄槌が下るだろうよと騎士は蔑む。
最短で3日、我慢すれば本村から援軍が来る・・が、私が死んでからだなと諦めの境地にも近い安心感がこみ上げて来た。
「なあ、領民はどこに隠した。森か?地下か?答えろ」
足蹴にされるが、この男は答えない。
「団長、魔道通信機を見つけました。奴、非常連絡したかもですぜ」部下が魔道具通信具を持って来る。魔力のない者でも、魔石を使って魔法に近いことができる機械。まだ、高価だが、魔族との最前線基地としての役割のあるこの村には旧式ではあるが配備されていた。
「おい、お前、襲撃は間違いでした。オークの群れの見間違いでした。オークは美味く頂いていると連絡しろ」
「お前がやればいいだろう?」
今度は、顔に回し蹴りを食らわせ、騎士領主は、2,3メートルほど吹っ飛んだ。
「符丁があるだろう。俺は軍隊出身だ」
魔道通信機が敵の手に渡った場合を想定して、符丁、合言葉が合わないと敵とみなされる。
「ギィィィイ、ガガガ・・・こちら・・辺境伯軍本部・・どうした状況・・送れ・・」
盗賊の部下が持ってきた魔道通信機が音声を受信した。
この機械、送信ボタンを押さないとこちらからの音声は向こうに聞こえない。
安心だが、敵の出方を聞くべきだ。
「お前ら、静かにだ・・」
盗賊の首領ガイルは魔道通信具に顔を近づけた。
「・・・・近くに・・・鏖(みなごろし)のアリサが・・いる。・・向かって・・もう少しだ・・・がんばれ・・・プツン」
「フフフフフフ」領主騎士は口が切れたにも関わらず笑い声を発している。
「お前、何を知っている。吐け!」
ガイルは領主騎士の両肩を掴み。前後に強く揺さぶった。
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