第37話、女神様のささやき♡(異世界編)その4
「……俺に『ゲンダイニッポンの最先端の知識』をもたらしてくれていた、『なろうの女神』なる存在こそは、おまえたち聖レーン転生教団の教義や、何よりも心から神様を信じている信者たちの信仰心から生み出された、『本物の神様』だと?」
あまりにも過酷な事態の連続に、もはや何も信じられなくなっていたところに、予想外の言葉をかけられて、完全に混乱状態と陥ってしまう、『ゲンダイニッポンからの転生者』を自認している男。
そんな『迷える子羊』そのものの俺に対して、あたかも優しく諭すように語りかける、黒衣の聖職者。
「そうなのです、まさしく我が教団の御本尊であられる、『なろうの女神』様のお声をお聞きになることのできる、あなたこそは、本来なら『聖人』に列せられるべきお方なのですよ」
「せ、聖人って、俺はそれほど信心深くは無いというか、むしろ不信心なバチ当たり者だぞ?」
「聖人とか聖女ってむしろ、元々はそういった方々のほうが、適性があるのですよ? ほら、昔話でもよくあるじゃないですか? 散々人殺し等の悪事を働いてきた無法者が、仏様の慈悲に触れて改心して、徳の高い高僧となるパターンとか」
──おいっ、何が『仏様』だ⁉ ゲンダイニッポンにおける基準からしたら、まさしく『西洋きりすと教』を体現したような宗教団体の司教のくせに、まるっきし『東洋ブッ教』系の例え話を挙げるんじゃない!
……しかも何だかこれじゃ、俺自身が『散々悪事を働いてきた無法者』みたいじゃないか?
確かに俺の最終目標は、この国を始めとする大陸全体の支配だけど、あくまでも現時点においては、『ゲンダイニッポン人としての前世の記憶や知識』を駆使することによって、社会経済システムの効率的向上を果たすといった、むしろ王侯貴族や一般庶民にとって、福となる(いわゆる『NAISEI』的)施策しか行ってはいないぞ?
「……それじゃあ、俺って自分も知らぬ間に、教団の信者たちの信仰心の『結晶化』と言うか『具象化』と言うかの、本物の神とも呼び得る『なろうの女神』との、
もしもその通りだったら、俺をこのような牢獄そのままの病棟なんかに、閉じ込め続ける理由は無くなるがな。
そのように恐る恐るお伺いを立ててみたところ、案に相違して難しそうな表情となって、何だかはっきりとしない口調で答えを返してくる司教殿。
「う〜ん、確かに信者様方の信仰心から生み出された『神様』は、ゲンダイニッポン風に言えば『集合知』とか『集合的無意識』とか呼ばれるものと見なせるのですが、あなたがアクセスした
「……ピュアでは、無いだと?」
「ええ、だからこそ、このような牢獄そのままの病棟に、事実上半永久的に、入院していただくことになったのですから」
「ど、どういうことだ、それは? 俺は間違いなく、教団の御本尊であり、信者たちの信仰心の結晶である、『なろうの女神』とアクセスしていたわけなんだろう⁉」
「──だから、あなたが接触していた、まさにその『なろうの女神』様こそが、ピュアではなく、むしろ『呪い』とか『悪意』とか言ったものの、集合体みたいなものだと、言っているのですよ」
なっ⁉
一体、どういうことなんだよ?
他ならぬ教団の司教が、再三にわたって、『なろうの女神』のことを悪し様に言うなんて。
「……女神でありながら、『呪い』や『悪意』の集合体みたいなものだと?」
「ただし、『自覚なき呪い』であり、『悪意なき悪意』なのですけどね」
「はあ?」
「だからこそ、あたかも選ばれた『聖人』であるかのように、『神の御言葉』に触れられたあなたの
「人をそんな取り返しの付かない病気にしてしまう、呪いと悪意の権化だなんて、一体『なろうの女神』って、何なんだ⁉」
「そりゃあ、あなたに『ゲンダイニッポン人としての記憶や知識』を与えている大本なんだから、自明の理ではありませんか?」
「……何だと?」
「そう、あなたの頭の中にだけに現れた、妄想だか精神病だかにしか思えない、異形の存在『なろうの女神』──その正体こそは、ゲンダイニッポン人の記憶や知識の集合体とも言える、まさしく我々この世界人の住人にとっては、『自覚なき呪い』であり、『悪意なき悪意』以外でも何物でも無い、『あちらの世界におけるインターネット上に公開されている、異世界転生を扱ったWeb小説』、そのものと言えるのですよ」
………………………………は?
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