第11話、202×年、GINZA〜『令和事変』その1

 ──『れい事変』。




 まさしくそれは、『地獄絵図』、そのものであった。




『──とうきょうちゅうおう区、ぎんどおぐち交差点から銀座8丁目交差点までの、歩行者天国において、暴動発生!』


『──数名の暴漢が、いきなり周囲の通行人に、暴行を加えたとのこと!』


『──それ以降、騒ぎがどんどんと歩行者天国全域に伝播していき、離れ離れの複数の場所で、次々に通行人が暴徒化し始めて、今や通り全体が、大混乱を極めております!』


『──何だと、まさかこの日本で、組織的テロ活動か⁉』


『──管轄警察署PSは何をしている⁉』


『──駄目です!』


『──すでに暴徒たちは、手が付けられないほど凶暴化しており、警棒や拳銃を構えて威嚇行為をとっている、警察官PMにも平気で襲いかかり、収拾がつきません!』


『──逃げ惑う民衆に対しても、ただ衝動的に暴力を振るっているだけのようで、説得等に応じる様子は無く、すでに多数の死傷者が出た模様!』


『──ま、まさか、素手で人間を殺していると言うのか⁉』


『──組織的テロ活動と言うよりも、薬物中毒か何かではないのか⁉』


『──いや、それにしては、数が多すぎる!』


『──やむを得ん、拳銃の使用を許可する! 速やかに鎮圧に当たれ!』


『──ああっ、たった今、複数の警察官PMの発砲を確認!』


『──何だと、こちらの命令が通達される前にか⁉』


『──いやしかし、このような事態において、現場の判断としては、妥当なのではないか?』


『──う、うむ、暴徒を鎮圧をするほうが、先決か』




『──違います! 一部の警察官PMが、突然周囲に向かって発砲をし始めて、暴徒、一般市民、同僚の警察官PMを問わず、無差別銃撃を行っているとのことです!』




『『『──な、何だと⁉』』』


『──しかも、通行人の何人かも、被弾し行動不能となった警察官PMから拳銃を奪い取り、周囲への発砲を開始!』


『──これによって、更に警察官PMの犠牲者が出て、その拳銃を奪われるという、悪循環に陥っております!』


『──つまり暴徒側を一まとめに見れば、無限に弾薬が補充される、非現実的極まる「無敵銃」を手に、暴れ続けているようなものではないか⁉』


『──駄目だ、これでは被害が増える一方だ!』


『──こうなれば、機動隊マルキを投入して、一気に制圧しろ!』


『──あ、お待ちください、たった今けいさつちょうから、緊急命令が通達されました!』


『──何だ、サツチョウだと? このタイミングでか?』


『──国が動くのは、早すぎやしないか?』


『──もはや我々けいちょうだけでは、荷が重いとでも、判断されたのか?』


『──しかし、今から首都圏各県警の応援を待っていたのでは、間に合わんぞ?』




『──違います! 政府の緊急閣議での採決により、えいたいの出動が決定された模様! 警察はその指揮下に入れとのこと!』




『──何だと、令和新法による、「治安維持出動」か⁉』


『──まさかこんなに早く、執行される日が来るとは』


『──やむを得ん、確かに現在の騒動は、我々警察の装備では、手に余る』


『──通達通りに、直ちに動かせることのできるすべての機動隊マルキを、銀座に向かわせて、自衛隊と合流させろ!』


『──出動パターンは、各方面本部ごとの『ホウ』を主軸メインとしつつ、そのかんにすべての警察署PSからも人員を招集して、『トッ』も併せて出動させることとする!』


『──了解! 直ちに、各機動隊長及び、各方面本部長並びに、各警察署長に、通達いたします!』




 ……この時点ですでに死傷者数が三桁を超えて、令和最大の大惨事となった、後の世に言う『令和事変』であったが、事態を重く見たほん国政府(当時)により、奥の手の『治安維持出動』が強行されて、精強なる陸上自衛隊二個大体並びに警視庁機動隊が銀座に急行し、騒動はすぐにも収束に向かうものと思われた。




 ──しかし、本当の『地獄』始まるのは、むしろこれからであったのだ。

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