第2話、ケモノミミの奴隷の女の子を救いますか?

【全異世界統括組織、聖レーン転生教団直営、『転生病監察医務院』にて】



「……クランケは、またしても、『ゲンダイニッポンからの転生者』かね?」


「ええ、本人は頑として、そう言い張っています」


「一体これで何件目だい? まったくこれじゃ、我が院の専門分野が、『精神科』なのか『性病科』なのか、わからなくなりそうだよ」


「それにしても何ゆえ、『ゲンダイニッポンからの転生』状態となった途端、性欲の対象が、同族の女性では無く、完全に別種族である、獣人のメスに向くのでしょうかねえ?」


「知るか、おおかた彼らの、ゲンダイニッポン人という輩が、さぞかし救いがたいほどの、『変態』なのだろうよ」


「ただでさえどんな病原菌を隠し持っているか、わかったものでないのに、更に生まれてからずっと奴隷暮らしを強いられ続けてきたという、獣人族の中にあっても、考えられる限り最低の状態にあった個体を、わざわざ大枚はたいて買い取って、事もあろうに『性処理用の奴隷』にするとはねえ……」


「しかも、買い取りに要した金銭や手続き等はすべて、自分に気のある権力者の娘にやらせるという、デリカシーの完全なる欠如、一体『ゲンダイニッポンからの転生者』なぞといった連中は、何を考えているのやら」


「……それで、どういたします、治療のほうは」




「治療? はんっ、『転生病患者』に対して、わざわざそんな手間をかけることも無いだろう。いつも通りに、『処分』したまえ」




「そうですよね、これ以上生かしておいても、自分のことを『ゲンダイニッポン人』だと言い張るばかりで、下手すると獣人型の性病を蔓延させかねませんからね」




「……ほんと、このように全異世界的に、『ゲンダイニッポンからの転生』がのべつまくなしに続いていき、各異世界に悪影響ばかりを及ぼしているのを見るにつけ、実は手の込んだ『侵略行為』ではないかと、疑いたくもなるよ」

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