第17話 初のリーダー会議
放課後、生徒会から放送が流れた。その内容に入夏は耳を疑う。なんと会議場所は鯨丘組の部屋だった。会議が終わるまで鯨丘組の部屋はリーダー以外の人間は立ち入り禁止となる。
「ということで、今日の活動はありません」
「あぁ、頑張れよ、生きて帰って来いよ」
「気をつけてね」
鯨丘組の部屋前で永遠の別れのように入夏の肩に手を置く海月と甚平に入夏は苦笑する。
「おう!入夏、来たな」
「遅いぞ」
入夏が部屋に入ると既に虎鉄とぼたんが到着していた。
「す、すみません」
「気にするな!檜だってまだ来ていない!」
「全く、紫崎檜は何をしている」
豪快に笑う虎鉄に反してぼたんは苛立っていた。何事にも厳しい彼女は時間にも厳しいようだ。
「ここにいるけど」
檜は窓から部屋に入ってきた。
「おう!全員揃ったな!」
「遅いぞ!というか、普通はドアから入ってくるだろう!みっともない!」
ぼたんの説教を無視して、檜は窓際の床に座る。
「それで、リーダー会議は何をするんだ?」
入夏が虎鉄に尋ねると、虎鉄は首を振った。
「それがわからんのだ」
「これじゃないのか?」
ぼたんが中央に置かれた箱を指さした。
「あ、これは俺らのじゃないな」
「では、この箱に議題が入っているのだな!よし!」
虎鉄が箱に手を突っ込んで紙を取り出した。
「今日の議題は絶勝学園第一高等学校の姉妹校である
「圧勝高校って、あの不良集団の巣って言われている高校か?」
圧勝高校の治安の悪さは有名で、大人でも絡まれたら最後、財布の中身を全て持っていくらしい。毎日喧嘩に明け暮れており、話し合いも暴力だという。顔を引きつらせながら問う入夏に虎鉄は元気よく頷いた。
「そうだ!しかし、姉妹校だったのか!」
「違う、姉妹校と向こうが名乗っているのだ。設立した年が同じだったらしい。姉妹校と呼べる高校は別にある。噂では絶勝学園第一高等学校に落ちた生徒が通って不良になるとか。勝つためなら姑息な道も歩むらしい。全く好かんな」
ぼたんの説明に入夏の顔が青ざめる。
「つまり、リーダー課題の内容は」
「うむ!学校公認の喧嘩ということかな!」
「あー・・・」
入夏は頭を抱える。
「もっと詳しく書いていないのか?」
「書いてあるぞ!」
「なら、それも読まんか!」
ぼたんに怒鳴られた虎鉄はその迫力に臆することもなく、笑っている。
「すまんすまん。えーと、近頃圧勝高校の不良達による迷惑行為に一般の人々は困っているようだ。警察に相談してもきりがないと言うことで、我々派閥のリーダーが圧勝高校に乗り込み、ボスと幹部を倒して、今後何か悪さをするなら我々が行くということを植え付けて来いとのことだ。あと、カツアゲをかなり行っており、その金を共有金庫に保管しているようなので、それを回収するようにとのことだ。ほう、これは驚いたな。依頼主は圧勝高校の教師だぞ」
「相当手を焼いているということだな。私達に頼むまでとは」
「うむ!久しぶりに本気を出すか」
「おい、ボスは一人だ。誰が仕留める?俺がやっていいか?」
今まで黙っていた檜が口を開いた。
「それは俺に任せて欲しい!」
「いや、私だ」
三人は自身を指さす。
「いや、こういうのは早い者勝ちとかどうだ?恨みっこなしで」
お前はどうだという視線で見られた入夏が提案する。
「まぁ、それでもいいだろう。確かにここで争っても無駄なことだ」
「仕方ないな」
「お前らよりも早く見つめればいいんだろ。簡単だ」
納得した様子の三人に入夏は胸をなでおろす。
「で、それはいつなのだ?」
「うむ、明日だ」
「えぇ!?」
「ま、早い方がいい」
「そうだな」
どうやら明日と聞いて慌てているのは入夏だけのようだった。
「明日の殴り込み、油断のないようにな!」
「それはこっちのセリフだ、熱血漢め」
「速攻で終わらせばいい」
「あ、あはは」
やる気満々の三人に入夏は乾いた笑いしかできなかった。
「なお、この件は俺達四人のみの共有だそうだ!皆、わかったな?」
そして、海月達に相談できない事実に入夏は肩を落とすのだった。
翌日、絶望した顔の入夏に海月と甚平は何事かと慌てた。それでも口を開かない入夏と、何やらやる気に満ち溢れている他のリーダー達を見て、二人は情報を共有できないことを悟った。そして、入夏にジュースを奢るなど、できる限り労ったのだった。
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