第7章 偽りと鏡面《Liar World》
第151話 春が来たれり
桜舞う穏やかな春の日。
急ピッチで修復を終えたらしい学園のメインアリーナには、全校生徒が所狭しと集っていた。
ただ二・三年に関しては、半分近くの顔触れが入れ替わっている辺り、何とも言えない気分に浸らざるを得ないというのが正直なところだ。
まあ元・教頭主導体制の色んな不正が
ちなみに今年からの俺は、Aクラス所属となってしまっている。
加えて、クラスメイトには、雪那、風破、朔乃、土守、祇園、花咲、根本――と、見事に顔見知りが集まる結果となっていた。
当然、担任は鳳城先生が継続。
何にせよ、今までのように
「昨年度末には色々とお騒がせしてしまいましたが、厳しい競争を勝ち抜いてきた皆さんだからこそ、我が校の伝統と誇りを……」
そんなこんなで新たな学園生活が始まろうとしているわけだが、全校生徒の前でスピーチを披露しているのは、狸婆――いや、学園長。
現在進行形で、身が引き締まる
しかし例年落第生だった上に、この間の学園対抗戦も途中乱入。こういう行事に参加するのは久方ぶりだし、本当に肩がこる。呼ばれもしないFクラスなら堂々とサボれたのに――と内心で思ってしまうが、どちらにせよ意味のない思考だった。
「あれ、みんなが……?」
緊張でガチガチになっていた朔乃が首を傾げる。
視線の先には、見覚えのある連中が朔乃と同じく直立不動で突っ立っていた。
「学園側も色々と可能性を試したいんだろう。教育方針の転換ってやつだな」
波乱を巻き起こした年度末試験。
島流し筆頭とされていたFクラス生徒に関しては、何とほぼ全員が残留するという結果が下されていた。
理由は明白。
朔乃ほど極端ではないが、各々適性が
そもそも魔導騎士は、複数人で“
これまでの騎士団や
だから実戦を想定するのであれば、本来は個人成績よりも集団戦闘における優秀さを精査すべきだったわけだ。
大人数での戦闘に関しては、変に器用貧乏で小さくまとまっているより、長所が突き抜けている方がよっぽど戦力になるのだから。
つまり現状から言えば、学園の評価を上げるために
結果、朔乃はAクラスへの大抜擢。Fクラスの連中も育成選手的な扱いで残留することになり、逆に中途半端だったE・Dクラス辺りの生徒が学園を去ることになったわけだ。
学園で
「殉職された教員の方々にお悔やみを申し上げると共に、新たな仲間をご紹介いたします」
そして最後、見知らぬ顔が壇上に並び、新任教師の紹介が始まった。
人数は全員合わせて一〇人。
どう見ても、二〇代から三〇代の若手揃いであり、二階堂を含めた教頭一派と比べると随分とフレッシュだ。人員不足はどこも同じだろうに、一体どこから引っ張って来たのやら。
ただその中でも一際、周囲の視線を集めていたのは――。
「あぅ……!?」
壇上に登る際、つま先を引っ掛けていた新任女性教師に他ならない。
しかもその理由は、元・AE校教師という経歴ではなく、あまりに単純極まりないものだ。
「うぉっ!? デカすぎィ!?」
「エッッ!?」
「おう、あれじゃスーツが苦しそうだ。けしからん!」
俺と雪那がテンパって転ばなかったことに安堵していた傍ら、周囲から聞こえて来るのは
言ってしまえば、美人女教師が赴任した影響を受けて、周囲のテンションが凄いことになっているわけだ。
狸婆との一件に始まり、第二研究所での特訓や根本一家とのいざこざ。その挙句の同居生活。
正直、今更感が全開とはいえ、周りからすればこういう反応になるのも無理はない。
ちなみにヴィクトリアさんは、魔導実技担当兼・二年Aクラスの副担任として活動することになったらしい。恐らく狸婆が手を回したんだろうが、ヴィクトリアさんの実力を考えれば周りも押し黙らざるを得ないはず。
俺としても、彼女の扱いに特段憤りはない。
ただ家にいる美女と言えば、雪那でもヴィクトリアさんでもない
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