第48話 繋がる惨劇の欠片
金切り音と共に一つの影が飛来する。
狂気を体現した研究室で咆哮が響く。
「■、■■■――!!!!」
白い仮面にトレンチナイフ。
闇夜を思わせる黒い
この混乱の源。
「……来るぞ!!」
「はい!」
「ふん……!」
混乱冷めやらぬ中とはいえ、戦う覚悟は出来ている。
俺たちは瞬時に迎撃態勢を取った。
「■■、■■■――ッ!! お■■■ォ■――!!!!」
目の前で鈍い光が輝く。
だが相変わらずの速さには変わりなくとも、もう奴の動きは見切っている。
俺は“
「■、■■■!?」
“
その短剣は、またも刀身を半ばから失っていた。
更に瞬間――。
奴の
「■、■■■■!?」
黒い影が舞う。
奴は背後の壁で全身を打ち付け、その身を震わせた。
「烈火!」
「天月!!」
一方の俺は、視線を敵から外すことなく、背後からの声に誘われる様に大きく跳び退く。
直後、雷槍と水刃がさっきまで俺のいた場所を通過し、一気に炸裂した。
「■、■■■■――!?!?」
両腕を広げて
そして勝敗は火を見るより明らかとなった。
だが敵を倒したにもかかわらず、俺たちの表情が晴れることはない。
なぜなら“
「■■■■■■――!!!!」
現に奴は、両腕部から鮮血が吹き出すことすら構わず、叫び声を上げて激しく身を
端から見ても正気とは思えない。まるで痛覚が失われているかのようだ。
一方、“
奴の両腕部を串刺しにしている刃は、身体を
それどころか身体を動かせば動かす程、今も突き刺さっている雷に内側から焼かれ、循環する水流に傷口を
「■、■■■■!!!!」
しかし“
「テメェらの言ってたことも、
「■、■■■……■■!!!!」
「お止めなさい! 無意味だと分からないのですか!?」
萌神が吐き捨てるように言い放つ。
ディオネの困惑交じりの悲鳴が周囲に響く。
困惑が増していくのは、俺も同様であり――。
「狂戦士……いや、普通の生き物じゃないな。これは……!?」
急所を外したとはいえ、魔導刃が突き刺さっている事実が変わることはない。
こんな状況で身体を激しく動かせば、それだけ傷が広がって血液を消費してしまう。
無論、体力や精神力も同様に――。
その先にあるのは、避けられない死の未来。
「■、■■■……■■■■!!!!!!」
だが奴は、自らの死を恐れない。
誰もが当たり前に備えている生存本能が欠落しているのではないか――とすら、思えてしまうほどだ。
直後、“
そして骨肉が引き千切れる音が響き渡った。
「ちっ、やりやがった……!?」
無機質な白い床が血生臭い鮮血で彩られていく。
奴は絶叫を上げながら、陸に上がった魚のようにのたうち回る。
なぜ拘束から抜け出たのに、起き上がることが出来ないのか。
それは支えになるはずの両腕が背後の壁に残されたままであるから。
目の前に広がる光景は、正しく地獄絵図だった。
「気でも狂ってんのか!? 気味が悪いぜ!」
「え、ええ……ですが、妙ですね。ここまでして拘束から脱したのに、攻撃してこないなんて……」
目の前で繰り広げられた奇行。
困惑している俺たちは、いつまで経っても立ち上がって来ない黒影を
実際、これまでの奴は異常な打たれ強さを見せていたはず。
つまり自らの意志で両腕を
しかし当の本人は
何に苦しんでいるのか。
何に怯えているのか。
「――ッ!? あ■■ァ■ぁァァ――■っッ!?!?」
「なんだ……この膨大な魔力は――!?」
状況は一転、力尽きたと思われた“
それも周囲の血液が蒸発し、無機質な床さえも変形させてしまう程の魔力を全身から発している。
更に戦闘の余波を受けてズタズタに引き裂かれた黒い
これまで不気味な出で立ちで
「な、ん……だと!?」
白日に下に晒された、奴の素顔。
それは、機械と生身の
俺にとっての因縁であり、過去の惨劇を呼び起こすものだった。
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