第忌譚【照る照る坊主】・漆
およそ、十二年ぶりの再会であるにも関わらずその事以上に僕は衝撃を受けてしまう。
「ん ? まぁ、気分転換にな」
「びっくりした……久哉くん。髪染めるイメージなかったからさ」
「なんだそれ。てか、大丈夫か ?
じいさま凄い心配してたぞ ? 」
「あ、うん。てか、何で久哉くんがうちに ? 」
「ん ? ああ。
うちの母さん、看護師だろ ? 診療所からここまでは少し遠いし、何で倒れたかもわからんお前をむやみに動かす訳にも行かないってんで様子見に来てくれないかって電話来てさ。
で、俺も心配だったから着いて来た」
「なるほど……わざわざ、ありがと」
久哉の説明に納得し、僕は彼にお礼を言った。
そして、僕の祖父母宅は村の少し外れにあって診療所からは一番遠い位置にある。診療所には、医者とその家族が住んでいるのだが夜も遅い。
到着を待っている内に何かあってはいけないと祖父は思ったの事だろう。
「礼なんていらねぇよ。まぁ、母さんの話だとただの貧血らしいし」
「そっか」
「取り合えず。お前が起きた事、みんなに知らせて来るわ」
ぶっきらぼうにそう言うと、久哉はこちらに背を向けて部屋から出て行く。廊下を歩く足音が遠ざかって行くのを聞き、何だか不思議な気持ちになった。
「……」
一人きりになった部屋の中、僕は天井を見上げる。気を失う前に脳裏に浮かんだ少女。
あの少女は、誰だっただろうかと考える。だが、答えが見つからない。
村で遊んだ事のある子なら、名前くらい覚えていても良い筈なのに……
「……あれ ? 」
そして、ある事を思い出す。それはあの日、社の境内で鬼ごっこをして遊んでいた時の事。
「あの時……みんな、隠れてた ? 」
一斉に走り出し、隠れた時の事を思い出し違和感を覚える。それは、自分を含めた七人が全員隠れる側だったっと言う事。
あの時、隠れている時。周りを見渡し、全員の姿がそこにあった。
でも、あり得ない。だって、鬼ごっこは本来……探す鬼が居て他の子は鬼に見つからない様に隠れる遊びなのだから。
なのに、いつも一緒に遊ぶメンバーは全員隠れる側だった。
と言う事は……
「僕らの他に……誰か、居た ? 」
それが事実だとするば、もしかしたらそれは祖父が亡き父から聞いた少女の姿をした何者かだったのではないだろうか。一人きりの部屋に、嫌な静寂が流れる。
外から聞こえる雨音が、より静寂を際立たせている様で、不安を駆り立てられた僕はゴクリと生唾を飲み込んで布団に包まった。きっと気のせいだと自分自身に言い聞かせるけど、そんな僕を誰かが見ている様に感じて久哉が戻ってくるまで僕は布団の中で震えている事しか出来なかったんだ。
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