第忌譚【照る照る坊主】・捌
翌日、雨は相も変わらず降り続いていた。斎場までは五六家の長男である
正午、僕は持ってきた高校の制服に母と祖父母が喪服に身を包み待っていると目の前に一台の車が止まった。
「
「久しぶり。元気だよ。
にしても……まさか、零士くんが運転する車に乗る事になるなんて思わなかったな」
「はは。誕生日が来て直ぐに免許を取ったんだ。
俺は、いずれ寺を継ぐし仕事するのにも車があった方が何かと便利だからね」
「なるほどね。……そう言えば、
「先に斎場へ行って、母さんと二人で父さんの手伝いしてるよ」
「そうなんだ」
僕は、助手席に母と祖父母は後部座席に乗り込むと車が走り出す。道中、零士と思い出話をしていると車はあっという間に斎場へと到着する。
中に入ると数人の親戚と、村に一つだけある寺の住職・
「久しぶりですね。なんだか、ますます御父上に似てきたようで……驚きました。
一瞬、睦十さん御本人が来たのかと思ってしまいましたよ」
「そんなに、似てますかね ? 」
「ええ……物腰の柔らかさや大人しそうな立ち居振る舞いもそうですが、1番は目元が似ています」
「目、ですか ? 」
「はい。睦十さんは真っ直ぐとした目をしていて、何時も物事の本質を見ようとしていました。
人から聞いた事よりも、自らの目で見た事を信じる。そう言う方でした。
なので、噂話などの類は事実確認が取れない限りむやみに信じませんでしたし……目は口程に物を言うと言いますが、睦十さんの目は正に彼の実直さを表していたと言えますね」
「そうなんですね」
なんだか、少し恥ずかしくなる。
そうこうしているうちに、親戚全員が斎場に集まると十三回忌の法事が始まる。お経を聞きながら、目を閉じれば都久志に言われた事を思い出す。
目が、似てるか……嬉しいな。父さん、僕も父さんの様な実直で誠実な人になれるよう日々精進するよ。
だから、見守っていてね。母さんの事もしっかり支えて、これからも二人で頑張って生きていくからね。
お経が終わると、一人一人お焼香を済ませ順々に斎場を出て寺へ向かう。しかし、小雨にはなっているが相変わらず止む気配のない雨。
こんな日に雨なんて気が滅入るなっと思っていると、祖父が僕に杖を突いている親戚のおじいさんと一緒に歩いてあげるよう言ってきた。おじいさんは祖父よりも高齢だが、足腰がしっかりしている。
普通に歩く分には問題ないが、流石に杖を突きながら傘を持って歩くのは危険だ。
僕はおじいさんの手をしっかり握り、斎場を出た。しばらく進むと、寺の屋根が見えてくる。
村の斎場は、寺から歩いて五分圏内にあった。だが、やはり雨で道が
その時だ。前の方を歩いていた親戚が、急にどよめき出し何人かは立ち止まっている。
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