迷宮での別れ





「ここが、本当の常闇の迷宮……」

「見た目はそっくりだけど、ライラどう?」

「外からだけでも分かります、難易度が桁違いです。慎重に進みましょう」

「難易度って、どういうこと?」

 グランは分からなかったのか問いかける。

「モンスターのレベルが相当高いんです。厄介なモンスターばかりだと思ってください」 ライラはグランの問いかけに真剣な表情で答える。

「モンスターだけじゃない、エリア……空間も厄介な場所が多いです。最初に入る場所は──」

 ライラは顔を突っ込んですぐさま戻した。

「オーガの群れです! 倒さないと進めません!!」

「よし、グラン補助術頼むぞ」

「うん!」

 グランは杖を振る。

「女神シュテルンの加護を今ここに、あらゆる敵を撃滅させたまえ。その身を守り給え!」

 全員の体が光、消えた。

「よし、行くぞ、ライラ先頭は頼む」

「はい!」

 ライラは先陣切って迷宮の入り口に飛び込んだ。

「……てやー!」

 ライラは光玉を投げてオーガ達の視界をくらませる。

 その空きに、コルヴォ、レイナ、グレンがオーガ達を屠っていく。

 二十体ほど居たオーガは全部殲滅された。

「女神シュテルンの加護を今ここに、あらゆる敵を撃滅させたまえ。その身を守り給え!」

 掃討が終わると、グランは再度補助術をかけ直す。

「次のフロアは……スライム、ワイバーン、ゴーストの群れ……」

「ゴースト一択だな、グラン任せたぞ」

「グランさん、任せましたよ!」

「う、うおー! ヒーラー基聖職者の意地見てみろー!!」

 やけっぱちになったかのようにグランは叫んだ。

「グラン、ゴースト苦手なのよ」

「え? じゃあ、聖水ぶつけましょうよ」

 ライラはレイナに聖水の入った瓶を複数個渡した。

「わーお、用意がいいわね!」

 レイナはうりうりとライラを撫でた。

「ライラ、先頭を」

「はい!」

 ライラの後をついていくと、先ほどの森林の空間から、おどろおどろしい枯れ木と夜の空間になっていた。

 ゴーストの群れが現れ近寄ってくる。

「わわわ……」

「だめそうね」

「ですね、では!」

 ライラは水の球を捕りだしそれを頭上に投げた。

 それは破裂し、ゴースト達は雄叫びを上げて消えていった。

「私に渡した聖水必要なかったわね」

「もし、ダメなのがいたら使って欲しかったんです」

「なるほど」

「おばけこわいよぉ」

「グランがダメ扱いされた原因を思い出してるな」

「グランさん、大丈夫です! ゴーストは私がなんとかしますので!」

「本当?」

 半泣きになっているグランにライラは頷く。

「勿論です! だから行きましょう?」

「うん……」

 ライラはグランの手を取り立たせる。

「ライラ次は──」

「はい次は──」





 水を得た魚のごとく、ライラ達は迷宮の奥へ奥へと進んでいった。

 そしてある場所に来たとき、ライラの動きが止まる。

「ライラ……」

「……死人が出ています……」

「誰のだ?」

「サンダーソードのメンバーです」

「放置していいんじゃ──」

「皆さんはここで待ってて下さい!」

 ライラは一人何かを被って飛び出していった。

「ライラ!」

「待ちましょう、あの子なら大丈夫よ!」


 少しして、血まみれのサンダーソードのリーダーアレスが引きずられて来た。

「ライラ、他のメンバーは?」

「……毒にやられて全滅です、あ一応浄毒するので少し離れてて下さい」

 ライラは液体を被り、アレスにもかけ飲ませた。

「……ら、い、ら」

「……」

「おま、え、の、せい、だ、ぜん、ぶ、おま、え、の」

「いい加減にしなさいよ!! 全部あんた達が自分でやったことが返ってきただけじゃない!!」

 レイナが怒鳴りつける。

「いやだ、しに、たく、な……」

 アレスは目を見開き、パタリと手を落とした。

「……間に合いませんでした、もっと私が早ければ……」

「貴方は悪くないわライラちゃん」

 レイナが必死に慰める。

「嫌いだけど、死んで欲しかった訳じゃないんです……! 生きて、改心して、ほしかった……!!」

 ライラの嗚咽交じりの叫びを、ルナティックのメンバーは只聞いているしか無かった。





「落ち着いたか?」

「はい」

「先ほどのエリアは毒か……じゃあそれ以外だな」

「はい、そうしましょう……」

 再び黙り込んだライラ。

「どうした?」

「いえ、師匠達大丈夫かなって」

「ブレイブハートのメンバーなら大丈夫だろう」

「だといいんですが……」

「ところで次のは?」

「大型スパイダーと大型スネークの二択ですね」

「よし、蜘蛛で行こう」

「はいはいー!」

「いいぜぇ!」

「補助は任せて」

「ライラ案内を」

「はい!」

 再び迷宮の奥へと進み始める。





 時折休憩を入れつつ、着実に前進しているルナティックのメンバーの前に信じられない光景が広がっていた。

「し、しょう?」

「おう、ライラ。まずった」

「そんな?!」

 負傷しているブレイブハートのメンバーにグランが駆け寄るが首を振る。

 治癒術では完治できないらしい。

「いい、やってくれ」

「癒やしよ、ここに……!」

 ブレイブハートのメンバーの傷がほんの少し癒える。

「何が居たんですか?」

「吸血鬼の真祖だ」

「げぇ?! 真祖?!」

「吸血はされなかったが、代わりがこのざまだ」

「……」

「ライラ、次のフロアが、ラスト。つまり真祖を倒すしかない、できるか?」

「やってみせる」

 ライラが答える前に、コルヴォが答えた。

「コルヴォさん……?」

「俺はダンピールだ。吸血鬼は、倒さねばならん」

「……そうか。ライラ」

「はい」

「補助をしっかりするんだぞ」

「わかりました! 皆様は──」

「どうやらこのダンジョン、戻る時はすぐ戻れるらしい。だから俺達はここで行ったん離脱だ」

「……」

「コルヴォ、だったか」

 リヴンがコルヴォに語りかける。

「奴は強いぞ?」

「分かっている、それでも吸血鬼を狩るのは俺の役目だ」

「いい、グランにグレイ。ライラちゃん。全員でコルヴォを支援よ」

「分かりました!」

「了解」

「うん!」





 去って行くブレイブハートのメンバーを見送り。

 ライラは目の前の只一つの入り口を見る。

「敵とは距離がありますが、気を引き締めましょう」

「今回は先陣は俺が行く」

 コルヴォはそう言って剣に手をかけ、中へと入って行った。

 続くようにルナティックの残りのメンバーも入って行く──






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