女みたいな顔だからと男子校でいじめられ、引きこもっていた少年は国民的美少女となる。
あざね
オープニング
プロローグ 童顔で引きこもりな少年。
「おら、ミコト! 焼きそばパン買ってこいよ!」
「う、うぅ……!?」
――今年の春、ボクは近所の男子校に進学した。
手に職タイプの工業高校で、女子は一人もいない。いわゆる男子校というやつだ。そこでボクは『とある理由』から、執拗ないじめを受けていた。
「ホントお前、女みたいな顔してるよな。性格も女々しいし、もしかしたらガチでそうなんじゃね?」
「うっわ、オレその方が興奮するわ」
「俺も俺も!」
周囲の同級生はみんな、そんな冗談を口にして笑う。
何が面白いのか分からなかった。そもそも、生まれながらの童顔はボクの中で最大のコンプレックス。それをいじられて、笑えるはずがない。
だけど、ボクは腕っぷしも弱い。
抵抗すればきっと、袋叩きにされてしまうだろう。
「おい、聞いてるのか? ミコト」
「………………!!」
「な、待てよ!?」
だから、ボクは決断した。
そして人の群れを縫うようにして、駆けだすのだ。
一心不乱に走って、そしてたどり着いたのは自分の家。玄関のドアの鍵を開けて、自分の部屋を目指した。中に入ると今度は鍵をかけて、ベッドに身を放り投げてうずくまる。毛布にくるまると、ずっと我慢してきた涙が溢れ出した。
――本当に、情けない。
誰にも文句を言えなくて、一方的にいじめられて。
最後の最後はこうやって逃げ出して、自分の部屋に引きこもるのだ。
「…………でも、どうしたら良いんだよ!」
自分しかいない家の中、その自室で。
ボクは、ぶつけようのない感情を吐き出す。
こうして、ボクは学校に行かなくなった。いわゆるところの『引きこもり学生』となり、ただただ無為な時間を過ごす。
こうやって人は堕ちていくのだろう。
この時は、そうなのだ、としか思えなかった……。
◆
「暇だな……」
引きこもり始めて、一週間が経過。
その間に高校の先生が父と話をしたらしいのだが、それについて詳しく聞くことはなかった。男手一つでボクを育ててくれている父さんは、少し困ったように笑っていたが、しかしむしろ行動を起こした自分を褒めてくれたのだ。
――どうしたいのかは、命が決めて良い。
そう言って、今日もいつものように仕事へと向かっていった。
そんな父を見送ってから、ボクはやることもなく自分の部屋で時間を潰す。
「ゲームも、あるのはクリアしてるし……」
なんだったら、いま手元にあるマンガもすべて読み終えていた。
自主学習をする気にもならないので、本当に手持無沙汰、というやつだ。そんな中でも、あるいは暇を潰す手段があるとすれば……。
「……まぁ、なにかしら動画でも見るか」
ボクはスマホを取り出し、イヤホンをつけて動画を漁り始める。
最初は好きなゲームの実況動画。その次は近々のスポーツ結果をまとめた動画。そして、次に見つけたのは――。
「――ん、誰だろ。この女の子」
注目の動画として、ピックアップされたある切り抜きだった。
サムネイルには一人の愛らしい女の子が映っている。金色の髪に青の瞳、そして整った顔立ちをした彼女からは自信というものが溢れ出していた。受け答えもハキハキとしていて、周囲の言葉を真っすぐに受け止める態度には好感が持てる。
「すごいなぁ、ボクよりも年下なのに」
そんな彼女を見ていると羨ましい反面、また自分が情けなくなった。
自分はいつまで、こうしているのだろうか。
そう考え、深くため息をついた。
「本当に、住む世界が違うよね」
あまりにも煌びやかな光景。
期待の新人アイドルと持て囃される彼女の名前は、すぐに覚えた。
『瀬戸ミライ』
その日からボクは、暇があれば『瀬戸ミライ』の新着動画を探すようになった。彼女の笑顔に癒され、そして小さな羨望を抱きながら……。
―――
カクヨムコンに向けて、少し書いてみることにしました。
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