ピンクブロンドに産まれてしまった私の顛末

そると

第1話

私の髪は波打つピンクブロンド、瞳は青空を切り取ったようなブルー、透き通るような白い肌


ちょっと低めの身長にムチムチした肉付き、この国ではピンクブロンドと青い瞳はとても珍しい。




おまけに光魔法の才能があり魔力もたっぷりと言う事で、孤児から男爵家の養女になって王立学園に通う事になった。




なってしまった。




数十年に一度だろうか?


繰り返されるピンクブロンドの婚約破棄物語


この国ではみんな知っている




ピンクブロンドはその無邪気さで皇太子に愛されてイジメにあうのだ。


そのいじめを乗り越えて皇太子とむすばれるが、それも束の間の幸せ、手ひどいざまぁに合う。




婚約者のいる皇太子を誘惑したピンクブロンドは嫌われ者になっている。


ざまぁで皆が喜んで拍手喝采する




それがピンクブロンドの婚約破棄物語、芝居でも小説でも大人気で何度も繰り返して上演される。




ピンクブロンドが子爵家だったり、聖女だったり、場面を色々だがストーリーはいつも同じ


ピンクブロンドがざまぁされて可愛い顔を醜くゆがめて破滅する。




そんな未来は絶対に嫌だ、学校を卒業したら王宮付きの侍女か秘書官になって、親切な男爵様に恩返しして、孤児院に寄付をするんだ。




皇太子とか恋とか、まじでどーでもいい、生き残って私の代でピンクブロンドの意識を変えてやる。




だいたい私は無邪気ではない、まあまあ残念な孤児院で無邪気でいられるはずがない


マナーも何も知らないし、このままで皇太子に愛されるはずがないと思うのだけど、もし、愛されてしまったら。




相手は王族、逃れるすべはない。




そのためにどうしたら良いのか考えた。




方法はアレしかないな。




私はためらわなかった。




転入のその日、まわりはあっけにとられて私を見つめていた。




そう、髪の毛を全部剃ってしまった。


つるんつるんになってる、すっごい丁寧に剃った。




そして、可愛さを損なわすために、鼻の頭に花をくっつけて、筆で黒い鼻毛を三本描いた。




花はタンポポ葉っぱもあしらってみた。




髪を全部剃った時には涙が出て手が震えたが、糊でタンポポをくっつけるだんになったら自分でも可笑しくて、筆で太い鼻毛を描き足して笑い転げた。




そう、笑う門には福が来る、笑わせたら勝ち。




「はーい、ざまぁ要員のピンクブロンドでーす!つるんつるんだけどね。今は男爵令嬢だけど元は孤児。仲良くしてね。だっふんだー」




捨て身のセリフとギャグも取り入れてみた。


教室が笑いの渦で包まれた。




よし!つかみはOK、この調子で平和な学園生活をおくることが出来そう。




小さくガッツポーズをとった。




「君、楽しいね。」


振り向くと、私の好みドンピシャのイケメンが立っていて一瞬で恋に落ちてしまった。




も、もしかして・・・




「僕は皇太子のアルベルト、仲良くしてほしいな」




やっぱりぃ?警報が鳴り響く、近寄ったらダメだと耳の奥で警報が鳴り響いている




見た目も声もすべてが好み、これがピンクブロンドの補正なのか?補正なのか?




もうだめだと思ったら皇太子に手を取られた。


「僕には婚約者はいない、心配しなくても断罪劇もざまぁもないよ安心して。君はとても勇気があって、可愛くて楽しい僕の理想だ」




そう、繰り返される王家とピンクブロンドの恋、もういっそかなえた方が上手くいくんじゃね?


って事で、学園でピンクブロンドの登場を待ってみて、現れなかった場合に皇太子の婚約者を選ぶことになっていた。




そこに転入したのが私ピンクブロンドで、私たちは一瞬で恋に落ちた。




坊主で鼻にタンポポと葉っぱつけて、太い鼻毛を三本描いた私に恋に落ちた皇太子はちょっとおかしいと思うけど、鼻の頭をほんのり染めるメイクがはやったのと、お芝居でも大当たりして何度も上演された。


コメディだったけど。


三本しか描いてないのに、鼻毛がビューンってなってるコメディだったけど




そして「だっふんだー」はこの国の象徴のような言葉となってしまった。




吟遊詩人は「だっふんだーの恋の歌」を奏で、お店では「だっふんだークッキー」「だっふんだーワイン」等が生産され国の名産となった。




神官が結婚式で私たちに言う


「二人はお互いを思いやり、励まし合い、分かち合い、終生愛し合う事を誓いますか?」


誓いの言葉として


「はい、だっふんだー」と返す事が閣議で可決された。




私は王妃となり、花まつりでは鼻にタンポポをくっつけた令嬢を生温い目で見つめている。


「だっふんだー」ってどういう意味やねんって突っ込みを入れるのを我慢している。




ピンクブロンドのざまぁの連鎖は今は無く、私は幸せなピンクブロンドとなった。


おしまい




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ピンクブロンドに産まれてしまった私の顛末 そると @ayako929

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ