第一章 第四節 実行
まず、街に着くまで挨拶代わりとして家々に炎を吐いた。みるみるうちに炎の渦となっていく。竜の姿になってからというもの、炎を吐くごとに飢餓感が増していく。体力を消耗するのだ。あまりの飢餓感に人間を見ると食欲が沸いた。農民を鍵爪の手で人間をさらい、
闇の草原に肉と骨を剥がす
街に着き、さらに空から炎を撒き散らした。
街に駐留する兵がようやくやってきた。炎を吐くと倒れる兵士達。だが、甘くみていた。巨大ボウガンの矢が蛇腹にささる。街に竜の悲鳴が
「今だ! 怪物を討て!」
兵士長が命令した。用意されたのは巨大な投石器だった。しかし、ここからが地獄の始まりであった。部隊を尾でなぎ倒し、投石器を破壊した。壁に叩きつけられ、部隊の半分が絶命した。半死している兵士の一人を無造作につかんだ。なじみがある。街の入り口で奴隷達に石を投げつけた門兵だった。
兵士は剣を俺の手に突き立てる。しかし鱗に守られた手は浅い傷しかつけられなかった。あまりの憎しみで俺はぐっと腕に力を込めた。
果物が砕ける音がして兵士の動きが止まった。手にはどろりと血があふれだす。特攻してきた兵士を爪でなぎ倒す。血しぶきが飛んだ。街のものどもが逃げる。兵も。
(すべてを壊す。逃すものか)
舌の位置を変え、おもいっきり空気を吸い、吐いた。紫色の煙が街に充満する。それは毒であった。街の人々が眠りこける。それは神経を冒す毒であったのだ。街の人々が眠りこける。
「くっくっくっくっ」
紫色の煙を何度も吐き続けさらに翼で空に舞い上がりながら人々に炎を吐き続け、地上に降りては爪や尾でなぎ倒し、腕で掬い上げ、口へ獲物を運ぶ。それは闇の者と一体になることができる選ばれた者の証にして闇の者による
次に手を斜め上に差し出すと翼があらゆる方向に動く。闇色の風が刃となって人間は肉片と化した。
さらに街の外に出た人間どもを空に舞い上がりながら紫の煙を吐き、俺は……千切られた足を尾で飛ばし、焼け焦げた頭部を踏みつける。
竜はいろいろな能力を持っていることを実感した。これが闇の力……。
「これが闇の力だあ!」
思わず人間の言葉をしゃべった。
(しゃべれる)
思わず喉を鳴らした。
(俺はしゃべれるのだ!!)
俺は歓喜の咆哮を何度もあげた。
(人間の心も知性も持っているではないか。俺は進化したのだ。これが本当の俺なのだ!)
その後竜は街の建物をひとつ残らず破壊し、夜が明けても破壊を繰り広げた。
――ぐぶぅ、ふぅぅぅぅぅぅっっっ……
全てを終えると一呼吸置いた。己が作った
太陽の光が瘴空を分解し闇色の雨が廃墟へ
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