暗黒竜の渇望

らんた

第一部 序編

序章

 ――そこは古代ペルシャ。常に光の神と闇の神が戦う場


 人々は病におののき、飢えに苦しみ、神への怒りとあきらめと背徳にふけっていた。


 光の神アフラとその一族の救いはまだ来ていなかった。


 ペルシャの大地は標高が低い地に住む者ほど塵芥ちりあくたまみれになる。標高の高い地に住む者ほど肥沃な大地に住む。そしてさらに標高が高くなると氷雪の世界になる。人の世も同じで地の底に這う者ほど塵芥まみれになり上層部ほど豊かになり頂点に住む者ほど冷酷となる。遠い昔の祖先がこの国の低地を「塵芥クル・ヌ・ギア」と命名したぐらいだ。実は「冥界クル・ヌ・ギア」という意味にもなるのだ。


 塵芥から大地が漆黒へ染まって行く。砂が流れる風音は悲涙の音色のよう。そんな塵芥の地に絶望の子が運ばれて着た。


 白人奴隷。


 ペルシャ王国に負けたヨーロッパの者は男児と女は売られ、成人男性は下手すると殺される。


 もっとも表向きはゾロアスター教の教えに背くので性奴隷は禁止されている。


 それは表向きの話だ。


 ゾロアスター教では近親婚こそ最高の善とされている。


 近親婚を繰り返すと障害を持った子が次々生まれていく。


 なのになぜこの地ではそういうことが起こらないのか。


 そういう事だ。望まれない子が生まれていったのだ。


 それだけでは飽き足らず同性へ性欲を吐き出す事を行っていた。


 薄暗い地下、闇が支配する空間には細かく区切られた小部屋が無数に並んでいる。


 そこで今日も呻き声と鎖の音が聞こえる。まさに闇が支配する世であった。


(第一章 第一節 絶望の時代へ 続く)


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ゾロアスター教を国教とした古代ペルシャ。このゾロアスター教は高校の世界史では教えませんが(教えられませんが)近親婚、つまり近親相姦こそ最高の善とされていたのです。このため残念なことにこういった犠牲者が出るのです。


光と闇の二元論の宗教ですが実際は闇を生み出すのも人間であったのです。


またゾロアスター教はマズダ派と呼ばれる正統派とズルワーン派と呼ばれる光から闇は生まれないとし、光も闇もズルワーンと言う超越した時間の神から生まれたとされる分派が登場しました。ゆえに宗派ごとに宗教戦争や暗殺が繰り広げられ、この隙を突かれて当時の新興宗教であるイスラム教に滅ぼされ、ペルシャも滅ぼされたのです。

この時ペルシャは仏教とキリスト教とゾロアスター教を混ぜたマニ教と言う新興宗教も流行し、天空の造物主アフラ=マズダは偽の王(ヤルバダオト)とされました。

なお、インドでは民族的に敵対関係にあったためアフラ=マズダはアスラという悪神でした。これがヒンズー教(バラモン教)に迫害されていた仏教徒に取り込まれ阿修羅と言う守護神となったのです。

闇竜アジ・ダハーカの化身とされるザッハークとはアラビア系の王子とされ、実は当時の征服者の象徴でもあります。


それでは、この基礎知識を持ったうえで光と闇が交錯するペルシャファンタジーをお楽しみください。

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