なんで!?

「─ ない」


 逢魔が時の、シャッター通りな 人影のない商店街の道。


 早朝に<雪だるま>があった場所を、真瑠さんは見下ろしました。


 その横に、樹由さんが並びます。


「流石にもう、夕方だからねぇ」


「── 溶けた?」


「ほら、今日は猛暑日だったし」


「───」


 何かに思い当たった真瑠さんは、バックからスマホを取り出し操作を始めました。


「え?! なんで!?」


「どうしたの?」


「証拠に、一応撮っておいた写真が…何故か消えてる……」


「ちょっと待って。」


 樹由さんも、自分のズボンのポケットのスマホに手を伸ばします。


「あ── 私の<雪だるま>の写真もなくなってる」


「ねえ。朝にはあったよね?」


「<雪だるま>??」


「と言うか、あれって<雪だるま>だったのかな」


 無言で、顔を見合わせるふたり。


 長身な樹由さんが 少し下にある真瑠さんの頭のてっぺん辺りを、手の平で軽く押さえます。

  

「今日私たちは…早朝にいつもと同じで何の変哲もないシャッター通りな商店街を通り抜け、駅から電車に乗ってショッピングモールに遊びに行きました。以上」


「そう言う事にしておいて方が、無難だって事?」


「他に、どうにか しようがある??」


 自分の頭に置かれた手を、払い除ける真瑠さん。


「─ ないけど」


「じゃあ、そう言う事にしよう♪」


 先に歩き出した樹由さんに小走りで追い付き、その背中のちょうど真ん中あたりを指で突きます。


「ねえ。ちょっと背が高いからって、偉そうにしないでくれる?」


「ん??」


「私の頭のてっぺんに、手を置くなって事!」


「じゃあ、今度はなでなでしてあげるね☆」


「こども扱いは、もっと す・る・な!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

早朝の、シャッター通りな商店街で… 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ