第12話 猫耳族のミレイ登場

 オレは、この国の公爵様の領都スピカに向けて出発することにした。そんな時ふと、馬車から手を振っていた少女のことを思い出した。



“確か、あの馬車は領主様の馬車とか言ってたよな。ってことは、あの少女は公爵様の娘ってことか?” 



 村を出てしばらく歩いているが、あまり通行人がいない。本当に道があっているかどうか気になってきた。



“リン。スピカまでのマップを頼むよ。”


“了解です。マスター。”



 頭の中に浮かんだマップで確認すると、スピカの街はもう近い。



“普通に歩いて2日、オレが走れば1日かな?”



 そんなことを考えながら先を急いだ。夕方近くになって、スピカの街についた。街は強固な城壁で囲まれている。オレは、門番にギルドカードを見せて中に入った。



「お前はピッツデリーから来たのか?」


「はい。そうですが、何か?」


「ピッツデリーで盗賊が50人捕まったそうじゃないか? しかもドンキ一味だって聞いたぞ!」


「そうなんですか? オレは冒険者って言っても、薬草採取が専門ですから。」


「それが一番安全だわな。ハッハッハッ」



“ピッツデリーの盗賊の件がもう知れ渡っているのか~。”



夕方の時間にもかかわらず、街の中にはたくさんの人がいた。まるでお祭りでもしているかのように、街のいたるところに屋台もある。それにしても、店が多い。



“この街凄く盛ってるな~! 服屋だけで何軒あるんだ? それに、おしゃれなレストランもあれば食堂もあるしな。なんか、原宿や渋谷を思い出すよな~。”



オレは情報を仕入れるために冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドに行くと、どこも同じだ。冒険者達がたくさんいる。しかもほとんどの人達が酒を飲んでいた。オレがキョロキョロしていると、一人の女性が声をかけてきた。女性を見るとビキニアーマーだ。目のやり場に困ってしまう。



「あなた、見ない顔ね。」


「ええ。今日来たばかりですから。」


「可愛い顔してるわね。宿は決まってるの?」


「これから探そうと思ってます。」



 オレがそんな話をしていると、仲間だろうか、他の女性も話に入ってきた。



「なになに? 何を話してたにゃ? あっ、僕はミレイだにゃ。よろしくにゃ。」


「ミレイ! 私が先に声をかけたんだから、邪魔しないでよ。私はアリサよ。よろしくね。」



 ミレイの頭をよく見ると、猫耳が出ていた。



“この人、獣人族なんだ~。でも、アリサって子は人族だよな~。それにしても本当に僕っ子がいるとはな~。”



「オレはケン。宿屋ってどこにあるか知ってる?」


「あんた、冒険者っぽくない話し方ね。歳いくつなの?」


「オレは16だけど。」


「なら年上じゃない。私は14よ。」


「僕は20だにゃ。でも、人族なら13ぐらいだにゃ。」



 オレは完全に相手の方が年上のつもりでいたが、どうやらこの世界の女性は成長が早いようだ。アリサは年相応だが、ミレイの胸は年の割に大きい。



「あなた、今、私とミレイの歳を聞いて胸を見比べたでしょう?」


「いや。そんなことしないから。」


「嘘ばっかり。」



 オレ達が話をしていると、酔っぱらった冒険者が絡んできた。



「アリサ! お前、俺が誘ってもいつも断るくせに、こんな男がいいのか?」


「飲みすぎよ。ケビン。」


「うるせえな。このBランク冒険者のケビン様にお説教か? 偉くなったもんだな。」


「ケン。こんな人放っといてあっちに行きましょ。」


「待てよ! こらっ! この色男様!」



 ケビンがオレの腕を掴んできた。



「すみません。オレがここに来たのがいけなかったんですよね。本当にすみませんでした。」



 オレは敢えて大げさに謝った。すると、ケビンは興味が無くなったのか自分の席に帰って行った。オレの対応を見て、アリサが大声で言った。



「あなた、情けないわね~。男でしょ! どうやら私の思い違いだったようね。もっと骨のあるやつだと思ったのに! Bランクって聞いて怖くなったんでしょ! 情けない!」


「まあ、まあ。相手はBランクだしにゃ、怪我がなくてよかったにゃ。」



 アリサは怒ってギルドから出て行ってしまった。残ったオレをミレイが慰めてくれている。



「ケンは宿を探してるにゃ? なら、僕が案内するにゃ。」


「お願いするよ。」


「僕についてくるにゃ。」


「うん。」



 ミレイは、落ち込んだ振りをしているオレの顔を見て噴き出している。2人はギルドを出て、ミレイのおすすめの宿に来た。



「この宿が安くて、しかも料理が美味しいにゃ。僕もここに泊まってるにゃ。」


「ミレイはこの街の人じゃないの?」


「僕はいろんな街を旅してるからにゃ。」


「アリサさんと一緒に?」


「アリサはこの街で知り合ったにゃ。」


「ケンはどこから来たにゃ?」


「記憶がないんだよ。気が付いたらピッツデリーの近くにいたんだけどね。」


「記憶喪失だにゃ。かわいそうだにゃ~。」



 オレとミレイは宿に入っていった。



「ミレイちゃん。お帰り。えっ?! 男を連れてきたの? うちは連れ込み禁止だよ!」


「違うにゃ。誤解だにゃ。」


「オレ、この街に来たばかりで困っていたら、ミレイさんにこの街で一番いい宿があるって、ここに連れてきてもらったんですよ。」


「まあ、そうだったの。ごめんね。ミレイちゃん。お詫びに今日の晩御飯、おかずを1品おまけするから許してね。」


「気にしなくていいにゃ。いつも世話になってるにゃ。」



 ミレイって子は物凄くいい子だ。顔もかわいいし、胸も大きい。何よりも親切だ。少し意識してしまいそうだ。



「オレはケンと言います。よろしくお願いします。」


「私はローズよ。この宿屋の女主人だから。一泊2食付きで銀貨五枚ね。」



 オレはお金を渡して部屋に行った。何故かミレイが部屋についてきた。



「やっぱりどの部屋も同じだにゃ。」



 ミレイは部屋を見渡して一人で納得している。そして、ベッドに座ると話しかけてきた。



「この後どうするにゃ?」


「今日はもう遅いから、このまま寝て、明日から活動するつもりさ。」


「なら、明日街を案内してあげるにゃ。」


「頼むね。」


「まかされたにゃ。」

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