第4話 知らされる現実
オレは何日もかかってやっとの思いで大蛇を倒すことができた。途中で見つけた川で体もきれいになり、再び歩き始めるとサソリのバケモンに遭遇した。しかも、サソリのバケモンは数体いる。
“ゲッ! なんだ~? 今度はサソリのバケモンか~! しかも何体もいるぞ~!”
サソリのバケモンはハサミでオレに攻撃をしてくる。オレはそれをギリギリかわし、時空魔法を放った。
『スペースカッター』
だが、バケモンサソリはハサミでそれを防ぐ。それどころか、いつの間にかオレの後ろにもバケモンサソリがいた。完全に囲まれた状態だ。
“空想の世界なら、魔法だけじゃなくて刀があって倒せるんだけどな~。”
容赦なく巨大なサソリは攻撃を仕掛けてくる。オレはサソリのハサミで壁に弾き飛ばされた。
「グホッ」
口から血が流れ出る。
「ペッ」
オレがぶつかった壁が一部壊れ、何やら通路のようなものが見えた。オレは急いでその通路の中に逃げ込んだ。
“ふ~! 助かった~!”
通路の中を歩いていくと何やら神殿のような場所にでた。
“洞窟の中に神殿?! おかしいだろ!”
オレが神殿の中を歩き回っていると、大理石で作られた台座の上に様々な宝石が散らばっていた。どれもすごい価値がありそうだ。だが、不思議とオレは宝石よりもそこにあった古い剣の方が気になった。オレが剣を手に取ると、剣はまぶしく光りだし、オレの体を光が包み込んでいく。
“リン。この剣はなんだ?”
“はい。グランドマスターからの贈り物と思われます。”
“なんなんだそれ! 最初からくれよ!”
“最初から剣を持てば魔法の実力が上がらなかったでしょう。”
“そういうことか。”
剣を握りしめると、体中に力がみなぎってきた。なんか、今ならあのサソリも簡単に倒せそうな気がする。オレは剣を背中に背負って、神殿から走ってサソリのところに向かった。
“いたいた。あの野郎! なんか食ってやがる。”
サソリはウサギの魔物を、鋭い牙で切り裂きながら食べている。オレに気が付くと、一斉に攻撃を仕掛けてきた。
“なんか、サソリの動きが遅いんだけど。“
“その剣の効果です。マスターの身体能力が一気に向上しました。”
オレは手に持った剣を抜いてサソリのハサミを切った。すると、先ほどまでオレの魔法をはじき返していたハサミがいとも簡単に切れてしまった。
「スパッ」
“この剣凄いな~!”
オレはそのままサソリに向かい、サソリを切り裂いた。そしてすべてのサソリを倒し終わると、『能力が向上しました』ではなく、『終了しました』と頭の中に流れてきた。何のことかわからない。疲れがひどかったので、オレはひとまず家に帰り、ベッドに寝転んだ。
「修行を終えたようじゃな。」
オレは人の声で目を覚ました。オレは再び何もない白い空間にいた。そして、そこには以前会った神様と思われる老人がいた。
「まだ、この夢覚めないのか! もう、いい加減に覚めてくれよ!」
オレは大声で不満をぶちまけた。
「夢ではないさ。お前さんがたるんでおったから、少しばかり修行させたのじゃ。」
「これって、夢ですよね? 修行が終わったんだから、もう覚めてもいいんじゃないですか?」
オレの言葉で神様の表情が曇っていく。悲しそうな目でオレを見ながら言った。
「お主は何も覚えておらんようじゃな。思い出させてやろう。ほれ!」
老人の掛け声で、オレの頭の中に記憶がよみがえってくる。
幼少期の愛と優しさに包まれた時代。いじめられた小学校・中学校時代。誰も知り合いのいない隣町の高校生活。すべてが鮮やかに蘇って来た。そして、入学して間もない頃、学校からの帰り道、電車に乗ろうとしていたら、目の前で老人がホームから落ちた。オレはとっさにホームに飛び降り、老人をホームに放り投げて助けたのだが、オレはそこで死んだ。死んだことに気付かないまま家に帰って、晩御飯まで少し寝ようと布団に入っていつものように空想しながら寝たのだ。
「思い出したようじゃな。」
「はい。オレ、死んだんですね。」
「まあ、仕方がないじゃろうな。だが、お主には褒美が必要じゃと思ってな。願いを聞いたんじゃよ。だが、嫌なことから顔を背けてばかりのお主なら、魔法を使えるようになったら、きっと楽をしようとするじゃろうて。だから、ちっとばっかし厳しい修行をさせたんじゃ。」
「ちょっとじゃないですよ。かなり厳しかったですから。死ぬかと思いましたよ。」
「死んでるお前さんが死ぬわけなかろうが。」
「そうですけど。」
「それでじゃ。今からお前さんを転生させるが、選ばしてやろう。いつものように空想してみろ。お前さんが住んでいた地球がいいか、それとも他の世界がいいか。」
「地球なら両親に会えますか?」
「それは無理だな。同じ地球でもお前さんがいた地球ではないからな。」
「パラレルワールドですか?」
「ろくに勉強もせんと、ゲームばかりしよったくせに難しい言葉を知っておるじゃないか。」
「なら、魔法が使える世界がいいです。」
「そうじゃな。せっかく修行したんじゃからな。だが、派手に使って目立つなよ。」
「わかりました。」
「なら、行くがよい。」
再びオレの足元に大きな穴が開いた。オレは暗闇の世界に落ちていく。
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