花は咲き誇り、闇は蠢く

僕たちのかたち(誤字脱字修正)



『自業自得なのじゃ!!じゃが、見世物としては、中々に良きものじゃったぞ。太陽達よ、妾が褒めてやるのじゃ』

 ——う、うるさいよ!!


 玲緒奈を両手で抱えながら、陽ちゃん達から逃げようとしたものの…当然のように、捕まり、長い時間説教を受ける羽目となった。




 そして、彼女達の長い説教により、精神的に疲労した後、家に帰宅、即座に自室の寝台ベッドに身体を預けていた僕へ、ここぞと言わんばかりにアフロディーテが意趣返しをしてきたので、どもりながらも反論する


 …

 ……

 ………



 それよりも、まさかあのセレスが梓と契約するとは予想もつかなかった…。こうなると…玲緒奈が契約する神も、陽ちゃんが契約する神も、僕が描いた原作の設定と異なる神かもしれない…。





 いくら考えても埒が開かないため、瞼を閉じて全身の力を抜き、そのまま意識を手放した…。




 ◆◇◆◇



 窓の隙間から陽が差し込み…僕に朝を告げるのと同時に上半身を起こし、制服に着替えて、一階へと降りる。




「おはよう。穂花、朝食置いてるから」




 いつもとは異なり、慌ただしく扉を開けて駆けていくお母さんを見るのは、何気に初めての出来事である。




 ——高給取りは、ゆとりがある分、自由の幅が狭まるんだなぁ…。

『何を当たり前のことを主は言うておるのじゃ』

 ——アフロディーテって僕の世界で当てはめると最高給取りの神じゃない?それなのにいつも暇そうじゃん…?

『むっ…妾達は仕方ないのじゃ…!!そう言うのは低位を従わせ中位が指導、高位に管理を任せておくべきなのじゃ!!適材適所なのじゃ!!だから、そんな可哀想な生き物を見る目で見るのはやめるのじゃ!!!』




 まっ…それも全て僕が元凶であるからなんとも皮肉だ。




 僕は、天井を見上げて…小さく笑った後、椅子を後ろへと引き、朝食を取る。今日の朝食は、麦パンと牛乳、目玉焼きとサラダを手短に食べ終えて、家の玄関扉を両手で開けると——そこには、誰一人欠けてはならない、各々の色で満開を彩る四つの笑顔が咲いていた。




「みんな、いつも待たせてごめんね…?」

「あたし達が穂花の家を集合場所にしてるしね!!」

「…気にしてない。むしろ、穂花はもっと私達を…頼るべき…」

「玲緒奈さんの言う通りですよ!!」

「私は大人なので、気にしてません!!」

「あっ!!りっちゃん先生、抜け駆けずるい!!」

「陽さん、梓も助太刀致しますよ!!」



 りっちゃん先生の余裕な態度に、梓と陽ちゃんが真っ先に抗議を示す。僕と玲緒奈はそんな彼女達の様子を傍目に見ながら、先に学院の方へ進む——





「ちょっとー、穂花と玲緒奈?昨日、抜け駆け禁止って話たよね!!」

「陽ちゃんの言う通り!二人とも、特にあずさに報告しないで!抜け駆けなんてしたらダメなんだよぉ!!」

「ゴ…ゴホンッ!!不純同性交友は程々にしてください!!それと、すぐにそちらへ行くので待っててください!!」






「ね、玲緒奈…『神降ろし』なんて焦らなくていいんだよ。だって、梓もりっちゃん先生も今の僕達のように、少し先に進んでもこんな風に待ってくれてるだろうからさ?」





 後方から聞こえてくる三つの声の方へ体を振り返して空を仰ぐように大きく手を振る。——彼女達は僕が止まったのを見て、瞬時に動き出す。






「だから、玲緒奈、辛い時は、必ず僕へ相談してね…?」







 


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