未来の花嫁さん?

「よーちゃんじゃ…」

「穂花、語尾に『じゃ』なんておばあちゃんみたい!!」

 ——よーちゃんの無意識のボディブローをまともに喰らってしまったらしい…。仮にも愛と美と性を司る神だもんね…? 彼女は、僕の姿で顔を引きらせていた。

「ゴホンッ…時に話を変えるけど…よーちゃん、ぼ、僕と子作りしない?」

 ——色々と突っ込み所があるのだけど…とりあえず、僕が女子でよかったね?男だったら、通報されてたよ!?




「ふえぇ…子、子供はそりゃ欲しいけど…女の子同士じゃ出来ないことくらい、あたしだって知ってるよ!!」



 


 よーちゃんが顔を真っ赤にしながら、潤んだ瞳をこちらへ向けつつも、勝ち誇ったようにどや顔をしている姿があまりにも、可愛すぎる…!!それにしても…ツンが持ち味の彼女が、ツンもデレもする余裕がないみたいだ。




「物知りなの…だね!!じゃ…もし、作れるとしたらよーちゃんは、ぼ、僕と作りたい?ぼ、僕はよーちゃんとの子を作りたいなぁ…?」

 ——真っ白な心を持つよーちゃんを僕の姿で汚すのをやめてくれぇ!!彼女の純粋な心を守らせてぇ!!

「えぇ!?えーと……作ってもいいかも…?」




 その瞬間——僕の姿をしたアフロディーテは、よーちゃんの小さい身体を両腕で抱きしめて…彼女の耳へをしながら、甘い言葉で囁く。





「なら、よーちゃん、と子供作ろう?」



 

 心優しき僕は激怒した。必ず、かの邪智暴虐な最高神アフロディーテを取り除かねばならぬ——と




「ふぇぇ!?早すぎるよぉ…私と絶対に結婚してくれるならしてあげなくも、ないかもしれないけどね!!!」



 ——やたらと早口で捲し立てるように話すよーちゃんだったが、やっと彼女の持ち味のツンデレが発動した!!



 それよりも僕の身体を早く返してほしいのですけど!?




 その願いが届いたのかは分からないけど…気づけば、僕は自分の身体へ戻っていた。





「わ、私と結婚しなかったら、許さないんだから…許さないからぁぁ!!!」




 ——突然、自分の身体に戻った感覚がして、暫く…呆然としてしまったせいか…彼女なりの精一杯のプロポーズに返答するのを忘れてしまっていた…!!




 太陽に照らされた、黄緑色ライムグリーンの髪を左手でモジモジさせながら…大きな声で僕に先程の宣言をした後、全力疾走で去ってしまった。




 ——最後の一瞬だけ見せてくれた彼女の照れた表情に思わず、見惚れてしまった…。



 


 数瞬後——突如として僕の身体に力が漲るのを感じた。この感覚は、締切間近の原稿をエナジードリンクを飲み、無理矢理、未知なる力を解放させた時と同じだ。


  ——つまり、よーちゃんを女堕めすおちさせることに成功したみたいだ。玲緒奈の時に成功しなかったのは、彼女が自暴自棄な面があったからだろう…。



『妾のおかげじゃな。だが、足りぬのじゃ』


 アフロディーテの奇跡魔法の真骨頂は、彼女達の顔に満開の花が彩る程に強さが増していく。逆を言えば、枯れれば、消える。作者の僕にも知らなかったのは…無意識に、エロ漫画として認識していたこともあり、彼女の奇跡魔法を『性的快楽による女堕めすおち』のシステムだと考えていた所に、実は純愛でも強くなれる事だ。



『心も身体も堕ちは堕ちじゃ。せいぜい妾を満足させるためにも精進するのじゃ』

 ——僕の考えを見透かしたかの様な言い方だねぇ。



 それに僕がを育てるなら、ゆっくり水をあげたいから、暫く、見守っててちょうだい。




 そう告げた瞬間——アフロディーテは不満を漏らしながらも、納得してくれたみたいだ。




 ◆◇◆◇



 僕は、頭を切り替えて、クラス発表の所へと移動する。近辺でよーちゃんとそれなりに長い話をしていたにもかかわらず、未だに小さいとは言え、人集りがある。



 ——クラスに関しては、A-Tまで十人構成の二十クラスを想定して設定したはずだ。こんなにも多くしたのは、二章に行われる大会を盛り上げるためだったとはいえ…猛省をしなければならない。




 念の為…クラス発表の張り紙を確認すると、予想通りAクラスだった。教室クラスルームには、変わり果てた如月健斗は勿論…月夜玲緒奈、花山陽もいる。





 如月健斗には憎悪の視線を向けられている

 月夜玲緒奈には恨みの視線を向けられている

 花山陽には、純愛の視線を向けられている





 入学初日の四月一日でこんなに素敵な関係ができて僕は幸せ者だ。きっと、そのおかげで涙が溢れているのだろう。そうに違いない。




 自分を騙すかの様に、納得させて、実践棟よりもやや小さい初等部の玄関へと足を踏み入れる。




 そして、玄関へ入って、少し真っ直ぐに行き右へ曲がればAクラスがある。——教室の扉を右手で開けて入ると、当然といえば、当然だが、生徒の中で一番、僕がここに来るのが遅かったらしい。




 生徒クラスメイトを確認した後、教室の空間も認知する。やはり、モデルにしていたのは高校の教室なだけある。ほとんどが白い殺風景に大きな黒板、後は机達と窓で他は特に何もなかった。





 教室も生徒も漫画で、必要になる場面シーンが多かったので、当たり前と言われれば、当たり前だ。





 ——だけど、漫画で描いていた風景を現実で体験するとこんな不思議な気持ちになるんだ…!!



 

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冒頭のやりとりとよーちゃんの表情描写の修正をさせて頂きました。よろしくお願いいたします。

 

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