作者がヒロインに転生する
次に目を覚ました時、僕はベッドの上にいた。仰向けに寝転がっているため、確証はないが、恐らく背中に伝わる感触からして、間違いないと思う。
先程、急激な体調不良に襲われたのが助かったとは思えないが——と確認すべく…ベッドから起き上がり…机の横にある鏡へ移動する。
鏡に映ったのは、
——めちゃくちゃ既視感があるぅ…。思わず、現実を逃避したくなる気持ちを抑えて…細部を確認したが、作者の僕が間違えるはずがない。僕は、『
◆◇◆◇
…漫画家の僕も趣味の様な感覚でライトノベルを嗜む事がある。漫画には漫画の良さがあり、ライトノベルにはライトノベルの良さがある。
今回のような異常な事態が発生した場合、ライトノベル御用達の異世界転生のような別の世界へ訪れたのかと勘違いしてしまった。
僕の心に、若干の胸が躍る感覚と困惑の感情が複雑に入り混じったのは、もはや言うまでもない。
——本当に現実か?と思って、勢いよく両頬を叩いてみたが、痛すぎて少しだけ…涙が出てしまった…。
◇◆◇◆
現実逃避はいつでもできる。今は話を切り替えよう。
この世界が僕の『
レスタ魔法学院とは、僕の作品の中心地であり、ここを起点に色んな物語が展開される。七歳の新入生達を一年生とし、三年間を過ごす。
要は、神様のことを知りましょうみたいな資料が配られるのでそれを覚えようみたいな形で、早いクラスならば、三日程度で終わる。
それを終えれば、『神降ろしの儀式』が一年中を通して行われる。ただし、期限は一年だ。故に、学習システム自体は日本の大学と似通っている所があるだろう。
この儀式を経て、神との契約に成功しなければ…『神の奇跡』と呼ばれる魔法を行使することができない。
——まぁ…そんな設定にしたのは僕なんだけどね。
『神降ろしの儀式』に特に準備物は存在しないように設定している。しかし、決して、簡単ではない。
まず一度契約すれば、生涯有効である。つまり、儀式自体が、自身の運命を左右する運命の出会い及び魔法になると表現しても過言ではない。
そんなハードルが高い『神降ろしの儀式』に必要なのは、神の真名と双方の合意が必要である。そして、高位の神になるほど、契約できる人数は少なくなる。
『
——低位とはいえ、神に失礼だろと思うかもしれないが、神側も契約する事で信者が増えて、神格が上がる事もあるので、双方に利点が存在する。
語るまでもないと思うが…レスタ魔法学院で行われる『神降ろしの儀式を学ぶための座学』に高位の神の真名が載るような設定をしていない。あくまで、学ぶ内容は、生徒達への神と契約ができない場合の保険である。
じゃあ、どうやって高位の神と契約できるの?と疑問が湧いてくるかもしれない。この答えは、『神のお気に入り』になるのみである。
そのため、『神降ろしの儀式』は一見すると、簡単と思えるかもしれないが、実は高位の神と契約するには、その神の真名を知っているか気に入られる必要があり、無理ゲーに等しいのだ。
——所詮…この世界の神の気まぐれだ。まぁ、作者の僕は最高神の真名くらい、頭に入っている。後は契約の交渉次第だろう。
まぁ、主要人物には、高位の神と契約できるように僕が意図的にしてるので…この世界でも同じような感じなのだろうと考えている。
——ただ、主要キャラクターや最高神等は頭に入っていても、モブキャラのような立ち位置の子までは覚えている自信がない。学院物を描くと、どうしても多人数描写が増えてしまうのは困り物だね…。
とりあえず…これからこの物語で起きるであろう流れの詳細を主人公を中心に、広げたい。
まず、一章の大筋の流れは、期限ギリギリになっても高位の神と契約したい主人公が友人や先生に馬鹿にされても何度も諦めずに、『神降しの儀式』へ挑戦する姿に興味を示した最高神の一柱と契約の成功に至る。
契約の恩恵として、『女を堕とせば強くなる』奇跡魔法を習得して、ヒロインのピンチを持ち前の優しさで助けていきハーレムを形成していく流れだ…
——じゃないよ…!!!やばいよ…!!よくよく考えれば、男と恋愛以前に…僕がヒロインって事は…主人公は別にいる…?
軽く想像してしまい、僕の身体が、鳥肌と共に吐き気まで込み上げてきた。
「穂花?早くしないと遅刻するわよ?レスタ魔法学院の入学式でしょ?」
下から
——行きたくない。
けど、行かないと前へ進めない。そもそも、作者である僕を差し置いて、主人公は誰がやってるのか? 全く、裏山けしからん!!…じゃなくて…是非とも、僕にもその
そう思い…ベッドの右端の方に畳まれていた紺と純白の制服を着て、レスタ魔法学院へと徒歩で目指す。
——着替えの時に、若干興奮したのは、内緒にして欲しい。僕だって男だったんだ…!!
ちなみに…黄泉家から目的地の学院までは、徒歩十分圏内であり、実はかなり近所である。
日本に住んでた頃に比べて、淡い桜色が多い道をひたすら真っ直ぐ歩いていくと…木製の校門があり、奥へ進むと、レスタ魔法学院だ。
ライトノベルなどでは、理由は不明だが…魔法学院を都会に作る風潮がある。僕はあの風潮に反対である。魔法の威力などが、周囲の影響を及ぼしたり等を考慮していないのかと注意したい程だ。
当然、そんな思想を抱く僕が描いた『
僕が目指しているレスタ魔法学院の外観は、日本の高校と大差がない。全体的に白色の建物をそれぞれ初等部、高等部、実践、食堂の四棟に分けている。
入り口の前には校門があり、今日のような入学式の場合だと、校門の右隣に大きな文字で『祝 レスタ魔法学院入学式』と描かれているはずだ。
予想通り、大きな白い看板で力強い文字で書かれている看板を発見した。
——僕の描いた作品とはいえ…感慨深いものだね。
そう思いながら…同じ新入生らしき子の跡をつけて、入学式会場の実践場へとたどり着いた。
男女比は、男子が四割、女子が六割ほどだろうか?周りは 賑わっていた。作者として、情けない話であるものの、ほとんどの子の事を知らなかった…。
知り合いがいるわけでもないため、近場にある実践場の入り口付近にある桜の木に背中を預けながら、僕が描いた子達が舞い散る桜の花びらと共に、派手に賑わう様子を少し距離をおいた遠目から眺めていた。
しかし、平和な一時は直ぐに消えさる事となる。
「
——会場に着くや否やさっそく、主人公に絡まれたんですけどぉ!?
◆◇◆◇
まさか、このアクシデントをきっかけに、僕と同じ第一章のヒロインとの距離が縮まることになるとは、当時の僕は微塵も思っていなかった。
ーーーーーー
誤字脱字ございましたら教えていただけますと幸いです。フォローやレビューをいただけますと、モチベーションにつながります。よろしくお願いします
(修正点)
胡桃色→くるみいろ→ライトブラウン
多人数描写が生えて→増えて
ご迷惑をおかけしました。
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