僕以外の幼馴染がみんな英雄になってしまった件

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 僕の幼馴染が皆、英雄になってしまった。


 いきなりそんな馬鹿な事あるわけない、そんな偶然重なるわけない。


 と思うだろうが、事実なのだから仕方がない。


 思えば昔からおかしかったもんなぁ、あいつら。


 僕には幼馴染がたくさんいるんだけど、みんなおかしいんだよ。子供の頃から。






 とりあえず、まず二人の幼馴染の話からしていこうか。


 一人目は王女様である幼馴染だ。


 金髪の、見た目は可愛らしい女の子だった。


 しかし、まったく王女様らしくない。


 気品あふれた姿を見せるより、剣をふるって殺気をみせていたほうが得意なのである。


 そのせいで、国の大災害モンスターを何体も討伐して英雄になってしまった。





 続いては平民の幼馴染だ。


 しかしこいつ、平民の平凡な血はどこにいった、と疑問に思うほど剣の腕が立つ。


 向かう所敵なしで、自分の国を防衛するための戦いに出た時、百人連続切りを成し遂げた事がある。


 それで英雄になってしまった。


 馬鹿なので普段は気安くつきあえるが、剣をふるっている時は正直正気に見えないので、近づきたくない。


 どこの悪鬼かと思うほどの人相だ。


 そんなわけで、かなり二面性のある幼馴染である。


 王女様と平民。この二人は、比較的長い付き合いのある僕の幼馴染だ。


 好みとか癖とかも分かっているため、三人で行動しても息が乱れる事はない。






 そして、三人目の幼馴染。


 こいつも頭がおかしい。


 その幼馴染は王子様だ。


 やんごとなき身分の、どえらい立場の人である。


 一応最初に言った王女様とは兄弟の関係になる。


 あんまり喋った事ないみたいだけど。


 あいつ、ふだんは穏やかに笑っているけど、心の中は真っ黒なんだ。


 腹黒キャラとか言う奴だ。


 特に自分を護衛している茶髪の少女がお気に入りで、彼女が怪我した時などこの世が終わったかと錯覚するほど怒りくるっていた。


 表面上はにこにこ笑ってるけど、背景で常に雷が落ちてるようなもんだったな。


 護衛の少女がとある国に攫われた時などは、その国を潰すまで追い詰めようとしていたくらいだ。


 その際の功績で英雄になってしまった。


 怒らせてはならないタイプの人間である。






 そして四人目、こいつも頭のおかしい幼馴染だ。


 少々年上だが遠慮はいらない。


 年下の子供にはだれかれかまわずつっかかってくるウザキャラだからな。


 そして、自分の事を「皆のお兄様」だと言ってはばからない。


 どこか二番目に述べた、才能満載型の平民馬鹿と通じるところのある、幼馴染だ。


 そんな「皆のお兄様」は全員を救う事に執着している。


 そのためなら、自分の命なんて紙きれより軽く放り投げようとする悪癖があった。


 自爆攻撃が好きで何度も負傷してくるが、幸運な事に何度も生き帰ってくる不死身の男だった。


 人間ではないのでは、と思った事が何度もある。


 そのせいで、何度も英雄的行動をしているやつだ。






 最後に五人目。


 こいつが最も頭がおかしいかもしれない。


 あんまり幼馴染にはしたくないけど。


 猛獣のような髪をした少年だ。


 弱い奴にはあんまり興味をしめさず、ただ強い奴とだけ戦いたがる。


 そんな性格をしているから、毎日荒れくれ共と喧嘩ざんまい。


 それで、全部勝つくらい腕っぷしが強いのが、もう暴れ馬すぎて、手におえない。


 抑えるより、方向性をそらすので精一杯だ。


 そいつは、いつも強い奴との戦いを求めているため、危険な仕事に目がない。


 だから英雄になった。


 それで、国にあだ名す犯罪者集団をいくつも潰し続けている、猛獣の様な幼馴染だった。






 はぁ、振り返ってみると僕の幼馴染達ってほんとおかしい奴しかいないよな。


 なんでこんなおかしいやつばっかりが知り合いになっちゃったんだろう。


 類は友を呼ぶとかいうけど、僕はそんなにおかしくはないし。


「ヨルン隊長、準備が整いました」

「ん? そうか、じゃあ任務開始だな」


 僕は副隊長のイリンダとこれから行う作戦の打ち合わせをかるくこなすために、考え事を中断した。


 黒の服に着替える。


 その服は便利だよね。返り血あびても目立たないし、夜闇にまぎれて行動できるし。


 表の舞台で、目立つような才能のない僕にはぴったりだ。


 五十人目になる今回のターゲットは、どんな奴だろう。


 まあ、どんな奴でも暗殺させてもらうけど。


「ヨルン隊長も幼馴染達に引けをとらないほどのあれですけどね」

「ん? 何か言ったか」

「いえ何も」


 余計な雑念は排除だ。


 これから、なかなか尻尾を出さない悪党を掃除するために、暗殺部隊を動かさないといけないからな。





 数分後、無数のトラップをかいくぐって警報を鳴り響かせながら、ターゲットの寝所にたどり着いた僕達は、数十人の護衛と大乱闘を起こした後、きっちり仕事を完遂した。


 まあ、こんな事やっててもあの幼馴染程の実力はないから、誇る事でもないんだけどな。


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