第9話 帰郷

ーー 故郷に錦の旗を立てに帰ろうか。



スノーを連れてアルカトラズ辺境伯領に向かうことになった。

家を出てちょうど1年、14歳のアレフ。

王都に家を持ち子爵位まで手にした、王国内でも出世頭といえよう。

辺境伯様にも挨拶をしなければならないようで、挨拶用の土産などかなり奮発しようとしたら。

スノーから

「貴方には魔法の道具を作る才能があるでしょう。収納の魔道具はとても貴重よ。辺境伯様には二人の娘と一人の息子がいるそうよ。指輪を2つ腕輪を2つそれと剣を2振でいいと思うわ。」

と言われたので、それらしい箱を用意して1日で土産を準備した。


馬車も買い御者のタイルに任せて、メイドのエルザを連れて向かうことになった。


3日で故郷の辺境伯領に着いた。

自宅の鍛冶屋に馬車を止め、馬車から降りると母が迎えてくれた。

「おかえりアレフ、立派になったそうで嬉しいわ。あらそのお嬢さんたちは?」

「ただいま母さん。あ、この子は家で働いているメイドのエルザで、この子はスノー・・。」

「初めましてお母様、私はスノーと申します。アレフ様とはこうゆうお約束をしている中です。どうぞよろしくお願いします。」

と突然スノーが左手をちらつかせて挨拶を始めたが、なんか変な挨拶だったな。

「あらそうなの、私のことはお母さんと呼んでね。」

とニコニコの母親を不思議そうに見ながら、家に入った。


そしてタイルに辺境伯への先触れを頼んだ。

「都合の良い日を教えて欲しいと伝えてくれ。」

と指示した。


実家はそこまで広くはなかったので、近くに宿を借りていた。

父親に自分で打った剣を見せた。

それをじっと見た親父は

「お前、鍛冶屋の方が良かったんじゃねえか。」

と本気の顔でいったが、

「自分の鍛えた剣で、魔物を倒すのが俺の夢だったんだよ。」

と答える

「確かにそんな奴もいるな。」

と納得してくれた。

剣を3振ほど家に置いていくことにした。


母には王都で流行りの服や小物を沢山やると

「近所の人に配れるからとてもいいわ。」

と喜んでくれた。別にこっそり金を渡したが、なかなか受け取らなくて苦労した。



辺境伯邸にて。



3日後、アルカトラズ辺境伯邸に向かっていた。


辺境伯邸は砦を兼ねたような無骨な建物だった。

迎えの執事に案内されて、屋敷内に入る。


出迎えた辺境伯に挨拶を行い、応接室のような部屋に案内された。

「我が領地出身の者がドラゴンスレーヤーとなり、子爵位を得るとはめでたいことだ。国王も大変お喜びで私にもお褒めの言葉を賜ったよ。」

機嫌が良かった。

そこでスノーがアレフに合図をする。

「辺境伯様、大したこともできませんが私の両親もまだこの地で暮らしております。そこで今までのお礼と言うとおこがましいのですが、お土産をお持ちしました。お受け取りいただければ幸いです。」

と言いながら幾つかの箱を差し出した。

スノーが指輪と腕輪の箱を辺境伯夫人やお嬢様らに差し出す。

アレフが長めの箱を辺境伯とその息子に差し出すと。

「確かめていいのか?ドラゴンスレーヤー殿からの贈り物とあっては、家宝になるやもしれぬが。」

と言いつつ箱をそれぞれ開ける。

スノーが夫人らに

「これは収納の魔道具です。嫁入り道具としてはこれ以上のものはないと思いますが。」

と説明すると

「まあ、そんな貴重なものを!」

感動する夫人。


剣の箱を開けた辺境伯と息子が

「これは!なんと素晴らしい剣か。さすがドラゴンスレーヤー殿だ。家宝にも匹敵する業物。ありがたく頂戴するが、しかしちと高価すぎはしないか?」

と心配顔を見せる

「国王様に差し上げたドラゴンに比べれば、大したものではありません。」

と言えば

「こりゃ、流石と言えるユーモア。これからも頼ってくれて構わぬ。」

と、後ろ盾になることを約束した辺境伯様。


その後食事を共にし、大いに親交を深めた。


故郷で大いに錦を飾ったアレフは、2日後に王都へと帰っていった。


見送る両親も誇らしげであった。

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