第64話
「……助手として雇えって言われても、こっちは家計が火の車でバイトなんて雇ってる余裕ないぞ」
俺は一応の抵抗を試みる。
「ふん、だったら女子高生のパイオツを揉んだ罪で一生を棒に振ればいい。お巡りさーん、こいつで……」
「わーッ、わーッ!!」
小屋の入り口に立っている警官が怪訝そうにこっちを見ている。
「……わかった、わかったから! でもお前、何で探偵助手になんかなりたいんだ?」
どうも
その執念と行動力だけは大したものである。
「警察にも解けないという密室の謎というのをどうしても解いてみたくてな」
「……推理マニアかよ。物好きな奴もいるもんだ」
俺は呆れて溜息をつく。
「私は
「…………」
……さっそく呼び捨てだし。
俺は気を取り直して小林と共に再び小屋の中に入る。
中は
鍵の形状は上から
「鍵は間違いなく内側からかけられていたんですよね?」
小林が雨宮に確認する。
「間違いありません。今は壊れていますが、扉を破る際に鍵がかかっていることは旦那様にも確認して貰いましたから」
ならば引き戸から犯人が外に逃げることは不可能だ。
他に出口はないか、俺は部屋の中にある唯一の窓を確認する。窓はクレセント錠できちんと施錠されていた。
「雨宮さん、窓は遺体発見当時からこのままの状態でしたか?」
「ええ。そうですが」
だとしたらおかしい。
一つ、説明がつかないことがある。
窓にかけられている遮光カーテンに隙間ができているのだ。
「遥さんは日の光にどの程度耐えれましたか?」
「どの程度も何も、全くです。曇りの日でさえ日光を浴びた部分はミミズ腫れのようになっていましたから」
「…………」
だとすれば、カーテンの隙間は遥ではなく犯人がやったということだ。何の為に?
俺は改めて部屋の中を見回した。広さは十畳くらいで、トイレはユニットバスになっている。家具は少なく、ベッドと机と椅子、それから本棚くらいしかない。テレビや冷蔵庫すらなく、部屋の中にある電化製品といえば、古い型のエアコンくらいだ。
「部屋の中の明かりが蝋燭だけでは地震があったときなんか危険でしょう。遥さんは過去に
小林が雨宮に質問する。
「いいえ、そのようなことは過去に一度もありません。遥様はとても注意深い方だったので。万一のときの為にバケツの中に水を常備していましたし、就寝する前には必ず全ての蝋燭の火を消していました」
「……なるほど」
小林は引き戸の近くで何かを拾い上げる。黒く変色した、何かの燃えカスのようなものだ。紙や写真を燃やすと、ちょうどあんな感じになるだろう。
「ということは、この燃えカスは遥さんが亡くなった後に出たものと考えるのが妥当でしょうね。それから私の考えが正しければ、部屋の中からあるものがなくなっている筈です」
「あるもの?」
「それはまだ内緒だ。さあて、楽しいショーの始まりだ」
小林声は邪悪な笑みを浮かべて、歌うようにそう言った。
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