第48話
「だったら私の別荘に遊びに来ればいいじゃない」
ことの発端はまりあのストーカー被害だった。半年前から何者かに後をつけられたり、ゴミを漁られたり、そういう被害に悩まされているうちにどんどんエスカレートしていき、そしてとうとう今朝、脅迫状が届いたのだという。
【
下駄箱の中に活字で印刷された、そんな手紙が入っていた。
「親や先生には相談したの?」
学校の昼休み。僕は青い顔のまりあに尋ねる。
「……うん。だけどどうせ単なる悪戯だろうって。一応警察にも行ったんだけど、まともに取り合って貰えなくて。私、怖くてもうどうしたらいいか……」
「何だよそれ! 職務怠慢じゃねーか! それでもし、鰤岡に何かあったらどうするんだよ!?」
そこで冒頭の結麻の提案である。
「ちょうど明日から土曜日だし、皆で行きましょうよ。きっとその方が安全よ。ストーカー野郎も流石に軽井沢くんだりまではついて来れないでしょう?」
「……塊原の家が金持ちなのは知ってるが、別荘をお前が勝手に使っていいもんなのかよ?」
元が四角い顔を歪めながら言う。
「うん。だってあの建物は私の所有物だから、私の好きにしていいの。だから元君も一緒に行こうよ」
「……けッ、流石は塊原財閥のお嬢様。我々庶民とは言うことが違うねェ」
そう言いながらも元は乗り気のようだ。言動は粗野だが、情には厚い性格なのだ。
「
「……いや、あの」
結麻に言われて、まりあは困ったように顔を赤らめている。
「僕はナイトなんて柄じゃないよ。もし鰤岡に何かあっても、助けになるとは思えない」
僕は偽らざる本心を言った。
「……うーん、性格暗いよねェ哲平君って。腕力だけが頼れる男の条件じゃないよ。君には成績学年トップという武器があるじゃない」
「ただ勉強ができたって、そんなのはいざってときには何の役にも立たない」
「あーもう! お前は何時もごちゃごちゃ能書きがなげーんだよ。塊原も鰤岡もお前の力が必要だと言ってんだ。助けてやりゃいいじゃねーか」
元が強引に僕の肩に腕を回してくる。
「……塊原は兎も角、鰤岡はまだ何も言ってないだろ」
「……あ、あの、良かったら燃杭君と
「…………」
「はーい、決まり! それじゃあ帰ったらすぐ準備して私んちに集合ってことで。食料は別荘に沢山備蓄してる分があるから、着替えだけ用意してきて頂戴ね」
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