第40話
「……おいおい
俺は小林の滅茶苦茶な推理に横槍を入れる。
「冗談でこんなこと言うものか。もう一度言う。この事件の犯人は
名指しされた鴨志田は、顔面蒼白で怯えたように震えている。
「……わ、私は本当に何もやってません! 探偵さん、信じてください!!」
「ええ、貴女が嘘を言っていないことはわかっています。その上で、事件の真相を順を追ってご説明しましょう」
小林は
「貴女は昨日、
「……はい。それはまァ」
「ですが、実際にはそこにスペースは空いていなかった。トリックアートで本と本の間に隙間があるように見せておいて、実際には軽い材質の板が入れられていたのです。小学校で使う
「…………」
俺は思わず唾を飲み込む。
「書棚の奥は隣の書斎に繋がっています。そして『葱鉄砲に御用心』の奥は、ちょうどトリカブトの絵の位置にくる。棚に本を入れて見えない板を押し込むと、ナイフが壁に掛けられた絵を裏から持ち上げて、書斎側へ飛び出す仕掛けになっていたのです」
そうか。ナイフが無駄に大きかったのはその為か。
「……ということは、鴨志田さんは知らない間に義一郎さんをナイフで刺していたということか?」
「鴨志田さんとしては単に本を書棚に入れただけだからな。壁の向こうの義一郎さんの背中にナイフが刺さって、本が書棚の奥まで入りにくかったかもしれないが、多少重くても気にせず本を押し込むのが普通だろう」
「でも、そう都合よく上手くいくか? 義一郎さんがトリカブトの絵のすぐ近くに立っていないと、仕掛けたナイフは空振りに終わるじゃないか」
「当然、義一郎さんは絵を押し上げてナイフが飛び出してくることを予期していたさ」
「……どういうことだ?」
「考えてもみろ、この家の主は義一郎さんだ。家の主に無断で壁や書棚に細工を施すなんて、息子たちでもできないだろう。つまり、書庫の床に本を置いたのも、書棚に見えない代本板を入れたのも、大きなナイフを用意したのも、仕事場の書斎にトリカブトの絵を飾ったのも、全て義一郎さんが自分でやったことだ」
「……馬鹿な、自分が死ぬのをわかってそんなことをしたというのか!? 一体何の為に?」
「ふん、そんなの決まっている」
小林は何が可笑しいのか、一人でクツクツと笑って言う。
「彼は読者を犯人にしたかったのだ」
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