第64話 願い事を叶えるために
「またここに来た……」
本の中に入ったサクラが目を開けると、辺りまた真っ暗な視界の中。暗闇にはほんの少し慣れたサクラが、ふぅ。と一つ深呼吸をして、暗闇に来る前の事を思い出した
「確か、モモが光って……」
トボトボと一人、暗闇を呟きながら歩く。しばらく歩いてみても、前と同様目印になるような物は見えず立ち止まりまた辺りを見渡す
「ノイズ、ノオトさん、誰かいませんか?」
大声で二人の名前を呼んでみるも、誰も来るような気配はなく呼び続けるサクラの声が辺りに響いている
「今回も誰もいないか……」
はぁ。とため息をついて少しうつ向くと、一瞬視界に光が見えて、その見えた方へと歩いていくと、少しずつ見えてくる目映い光が現れ、その光にそーっと手を伸ばすとその光の中に手が少し入った
「前と同じかな……」
前にも見た光景にそう呟くと、ゆっくりとその光の中に入っていくと、また見覚えのある真っ白な視界に戸惑うこともなく歩きだした
「あのね、モモ」
突然、聞き覚えのある声が聞こえてきて、立ち止まり辺りを見渡すが誰かいる様子もなく、首をかしげるが、まだ聞こえてくる聞き覚えのある声のする方に歩いていくと、真っ白な視界の中にうっすらと影が見えてきた
「お母様が言っていたの。この世界とは別に魔法が使えない世界がたくさんあるんだって」
影が見える方から声が聞こえ、気づかれないように足音をたてずに近づいていくと、真っ白な視界の中に不自然なほど大きな木と今よりも少し幼く見えるノイズが木に背もたれモモを抱きしめていた
「空も飛べないし、モモだってただの本になるんだって。すごいつまんないし、寂しいよね」
しょんぼりとした声で話すと、モモがジタバタと動きノイズから離れると、木とノイズの周りをグルグルと動きだし、座っていたノイズが立ち上がりモモを掴んでまた抱きしめた
「だからね、モモ。私、思うの。お母様も上手く魔法が使えないらしいその世界に私が行って、魔法が使えるようになったら喜んでくれるかなって。だからモモ。少しお手伝いしてね」
エヘヘと笑いながら言うノイズの言葉がサクラまで聞こえ、サクラが声をかけようと少し手を伸ばしすと、ノイズや大きな木の姿が真っ白な周辺に紛れるように消えていった
「ノオト、聞こえる?」
その頃、ノイズについていくように空を飛んでいたノオトの背中に隠れたリリが小声で話しかけていた。ノイズに気づかれないように少し移動する速度を下げ少し振り向いた
「リリ?どうしたの?」
「私も一緒に行くわ。サポートするから、ノイズに気づかれないようにね」
「サポートって言っても、リリは……」
「あの本の中にはサクラがいるのでしょう。だったら大丈夫よ」
リリの返事を聞いて、ノイズの側でついていこうと必死に飛ぶモモを見るノオトの服の中にリリが入り、背中をポンッと軽く叩いた
「ほら、ちゃんと前を見ないとノイズに気づかれるわよ」
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