第61話 不思議な世界の中で

「あれ、ここ……」

「初めて会った場所に似てるでしょ。一応、この世界でもここは公園だから、少し歩こうか」

 ノイズに連れられやって来たのは、サクラとノイズが出会った公園によく似た場所。サクラの世界とは少し違うのは、空を飛び移動する人達や木の枝に座りお喋りをする人々がいた。それを見ているとコツンと足に何かが当たり見ると、小さな街灯が散歩道の左右に並んでスキップするように歩きサクラやノイズの足元を照らしている

「素敵な公園だね。こんなランプ、私の世界にもあったらいいのに」

 少し屈んで街灯を楽しそうに見つめるサクラ。視線に気づいた街灯が立ち止まりサクラを見てピョンピョンと跳ねる

「それは無理だよ、サクラの世界には魔力がないもの」

「でも、ノイズは魔法が使えてなかった?」

 離れていく街灯に手を振り見送りながらノイズの話しに返事をしていると、街灯達が去り明るかったサクラ達の周りが少し暗くなった

「確か、私の家に来た時……」

 屈んでいた体を起こしながら、ノイズに本を手渡された時の事を思い出すと、サクラの側で静かにしていたモモがバサバサとページの音をたてて騒がしくサクラの周りを動きはじめた

「モモ、どうしたの?」

 と、騒がしいモモを見た時、ふと辺りの雰囲気が変わったような気がして辺りを見渡すと、さっきまで動いていた街灯や人達がピタリと動かずにその場に止まっていた

「あれ?なにか……」

 と、サクラが不安そうに辺りを見渡すと、目の前にふわりと風が吹いた

「ノイズ、ダメだよ」

 突然すぐ側から少し言葉を強めに聞こえた声に驚いて、少し後退りすると、サクラの前にノオトが険しい顔をして立っていた

「ノオトなんで来れたの?せっかくずーっと寝れるように術をかけたのに」

 少し不満そうに言うノイズの表情はニコニコと微笑んでいる。それを見て、ノオトが少し後ろに歩きサクラに近づいた

「残念だけどノイズの思っていることなんて分かるの。術をかける前にちゃんと防御しておいたから。けど、術は大分危なかったけどね」

「さすがノオト。私の事、分かってくれて嬉しいよ」

 またニコッと微笑むとサクラの側にいるモモがいる方に手を伸ばした

「モモ、おいで」

「ダメだよ。こっちに……」

 ノイズの方に行こうとするモモに慌ててサクラも手を伸ばしモモの行く手を止めようとすると、サクラの体がふわりと浮かんだ

「じゃあ、サクラも一緒にこっちに来て」

「ちょっと待って、ノイズ!」

 空にユラユラ揺れる体に落ちそうになりながらノイズの方へと使っていくサクラをノオトが手を伸ばし掴もうとするが、ほんの少し指先に届かず、そのままモモと一緒に移動し、ノイズの隣にゆっくりと降りると、不安そうなサクラの顔を見てフフッと微笑み、ぎゅっと優しく抱きしめた

「リリの言うとおり、さっさとサクラとモモとちゃんと向き合えばよかったな」

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