第60話 暗い空を見上げながら

「ねえ、ノイズ。暗いし危ないよ、もう帰ろう」

「大丈夫、これでもノオトと学園のテストの上位を争っているくらいだから、誰が来てもすぐやっつけてあげるからさ」

「でも……」

 ノイズの家を出てから、手を引かれ空を飛ぶサクラ。時折ぐぅ。とお腹が鳴る音が聞こえてもノイズは気にせず空を飛び家から離れていく

「モモ、ちゃんとついてきてよ」

 サクラの後ろに大分遅れて追いかけてくるモモにノイズが声をかける。バタバタとページの音を立てて必死に追いかけても二人から少しずつ姿が離れていく

「でも、どこに行くの?」

「うーん、今は特に考えてないけど、どこか行きたいところある?」

「いえ、えーっと……」

 下を向いて答えると、ちらほらと明かりが見えて、じっと見ていると、やっと追いついたモモが休憩がてらにとサクラの頭に乗った

「学園に行ってみる?他にも、見せたいところはあるんだけど……」

 ノイズも周りを見てどこに行こうかと考えるが、今すぐ行きたい場所は時間的に閉じられ行けず、うーんと悩みだす。その間にもノイズの家からどんどん離れていき、サクラの顔が不安そうな表情に変わっていく

「ちょっと休憩しようか」

 サクラの様子に気づいたノイズが近くにあった大きな木の方へと移動し、サクラを木の枝に座らせると、落ちないようにぎゅっと木を抱きしめるサクラに対しノイズは枝に座らず、空に浮かぶように立っている

「ねえ、ノイズはなんで私をここに連れてきたの?」

 少し雲に隠れた月を見るノイズにサクラがそう聞くと、問いかけにはすぐに答えることなく、しばらくしてからサクラの方に少し振り向いたノイズがフフッと微笑んだ

「ねえサクラ、この世界は嫌い?」

「ううん、まだ来たばかりだけど不思議な世界で、色んな所を見てみたいとは思うけど、みんな心配するから帰らないと」

「そうだね、でも……」

 サクラの返事を聞いて、ふぅ。と一つ深呼吸をして、黙ってしまったノイズ。サクラがノイズの顔を見ようと少し体を動かした。その時、木を掴んでいた手が滑って落ちそうになった。慌ててサクラを抱きしめるノイズ。そのまま一緒に空にふわりと浮かぶと、モモが心配そうに二人の周りをグルグルと動き回る。ふぅ。とまた深呼吸をして、サクラの手をつかみ、ノイズの家から更に離れるように移動しはじめた

「でも、もう少し私と一緒に居てから帰ってもらうからね」

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