第57話 解けた夢を紡ぐように

「あれ?寝てる?」

「本当だ。まだ疲れてたのかな」

 サクラが眠る部屋に戻ってきたノイズとノオト。布団から少し顔を出して眠るサクラの寝顔を見ながら話をすると、ノイズが大きなアクビをしながら椅子に座ろうと少しサクラから離れるが、ノオトはサクラの周りを見て戸惑った顔をしている

「違う」

 と、ノオトがポツリ呟くと、椅子を引き座ろうとしていたノイズの手が止まりノオトを見ると、ベッドに触れるギリギリまで手を伸ばしていた

「術が違う。これは私の術じゃない」

「えっ、なんで?」

「多分、誰かがサクラを眠らすためにかけたのかも」

 と、スヤスヤと寝息をたてて眠るサクラを見ると、ノイズもノオトの隣に来て、ベッドの周りを見渡す

「ノオトの術を破ってまで眠らすの?それに、ノオト気づかなかったの?」

「全く気づかなかった。外に出て離れていたけど、メメは家にいたのに。それでも気づかないなんて……」

「お母様かな。でも、なんでサクラをまた寝かすの?」

「疲れてたように見えたのかもしれないし、他の理由もあるかも」

 ノオトが呟くように言うと、ノイズも何も言わなくなり部屋が静かになった。モモがサクラの様子を見ようとバサッとページの音が部屋に響くと、ノオトが部屋の入り口の方へと歩きだした

「メメを起こしてくる。ノイズは……」

「モモとここで待ってるよ。早く行ってきて」

 手を振り微笑みながらノオトに言うと、サクラを起こさないようにゆっくりと扉を明け部屋を出ると、モモがノイズの側に行こうとして、バサッとページの音が静かになった部屋に響いた

「モモ、サクラ明日帰るんだってさ。すぐ呼び戻せるかな」

 困ったように笑いながらモモに言うが、モモはノイズに返事をするでもなく近くにあったテーブルにゆっくりと降りた


「お母様の術か。さすがに……」

 そう言いながらサクラを見ると寝ていたはずのサクラと目が合った。ノイズが驚いていると、サクラがゆっくりと体を起こしてエヘヘと笑った

「起きてたの?」

「うん、起きてたよ」

「いつから?」

「ノイズとノオトさんが入ってすぐかな。なんとなく起きちゃダメな気がして寝たふりしてたの」

 話しているとサクラの声が聞こえたモモがバサバサとページの音をたててサクラの側まで飛んで来た

「モモ、おはよう」

 すぐ側まで来たモモをぎゅっと抱きしめるサクラ。ノイズがその様子を顔を強張らせ見つめていると突然サクラのお腹がぐぅ。と鳴った

「お腹空いちゃった」

 サクラがエヘヘと笑って言うと、ノイズの表情が和らいだのか、サクラにつられてフフッと笑う

「じゃあ、私もお腹が空いたし、ノオトを誘ってご飯食べよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る