第52話 思いを隠すように

 ガサガサと草むらの音をたてて一人歩くノイズ。時折振り向いてノオトが来ているかを確認しながら進んでいると、歩き疲れたのか立ち止まり、ふぅ。と深呼吸をして、空を見上げ飛んで帰ろうかと思い近くにあった木に触れた時、ノイズの近くから、はぁ。とため息が聞こえた

「呆れるわね。自分がサクラを呼んだのに」

 ノイズが触れた木の枝にリリが呆れた顔をしてノイズを見下ろしながら話しかける。トンっと一度木で足を鳴らした後、木を歩き降りてくるリリを見てノイズが少し顔を背ける

「リリ。なんでここにいるの?」

「見てたからに決まっているでしょ。本当面倒なことをするのね」

 木を降りている途中でノイズの頭を踏み台にしてピョンと跳ねると、ノイズの前に浮かびリリの顔を見ないようにするノイズに、またはぁ。とため息をついた


「サクラは強い子よ。こんな世界に来てもよく笑うし、それに本人は気づいていなけれど魔力もとても高いわ」

「知ってる」

「じゃあ、ちゃんと相手をしてあげないとダメよ。時々サクラから逃げているでしょ」

 と、すぐに言い返されて、横顔からもムッとした顔になったことに気づいたリリが、ノイズに近づき頭に乗った


「モモの記録をわざわざ消してあげたというのに。当の本人はこうだと困るわね」

 そうリリが話しかけても返事をせず、頭に乗るリリを落とさないようにまた歩きはじめたノイズ。無理矢理ガサガサと大きく草むらの音をたててリリの言葉を遮ろうとしている

「それと、サクラは明日ソナタとオンプ達の術で、元の世界に戻す予定よ。ちゃんと記憶も消してあげるから安心しなさい」

「なんで勝手に!」

 大声で叫び、少し驚いたリリがノイズの頭から離れふわりと浮かぶ

「ソナタとロンド達による決定事項よ。それに反論できる動きをあなたは今しているの?」

 やっと顔を見たと思えば、言い返されすぐ顔を背け何も言わないノイズに、リリもくるりと背を向けソナタの所に帰ろうと左手に小さな本が現れた

「分かったならサクラのところに戻りなさい。モモにもちゃんと謝るのよ」

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