第32話 不穏な気配に気づいたら

「あー、もう!どうなってるのよ!」

 その頃、ソナタがグシャグシャと髪を掻き分けて苛立っていた。異様な雰囲気に周りにいる同僚達が顔を引きつかせ、少しソナタから離れた

「……ソナタさん、どうしたんですか?」

 ソナタの一番近くに居た女性が恐る恐る声をかけると、キッと睨みながら振り向いた

「なんか術が合わないの、なにかしたの?」

「いえ、私達は何も……」

 話しかけた女性が恐る恐る後退りしながら答えると、少し離れた所から二人を見ていた人達も頷き、ソナタに答えた

「リリ、帰ってきて」

 ため息混じりにソナタがリリを呼ぶ。だが、いつもはすぐ来るリリが、しばらく経ってもソナタの側に来る気配はない

「あら?珍しいわね」

「何かあったのでしょうか」

「家に帰ったのよね」

「はい、サクラさんの様子を見にいくと」

 そうソナタに返事をすると、またはぁ。とため息をついて、ガタンと椅子から立ち上がった

「何かあったのね、ちょっと行ってくるわ。ロンドに伝えててくれる?」

「はい……」

 スタスタと歩き隣を通り過ぎたソナタに恐る恐る返事をする。パタンと扉を閉じたソナタの姿が見えなくなり、部屋に安堵感からかふぅ。と深呼吸をする音が部屋に響いた






「おやおやおや?」

 ソナタが部屋を出る少し前、モモの記録を探していたオンプが困った顔で一冊も入っていない本棚を見つめていた

「オンプー、どうしたのー?」

 本棚の前から動かないオンプを見て、同じ身長くらいの女の子がふわりと足を弾ませ近づいてきた

「リズム、いいところに来てくれた!あのね、ノイズさんの本の記録なんだけど……」

 本棚を見つめながらオンプが言うと、近づいた女の子も本棚を見て、オンプと同じく困った顔で頬を軽く掻いた

「あー……。どうする?このまま戻しちゃう?」

「うーん、戻しても大丈夫とは思うけど……」

 二人で本棚を見つめたまま悩んでいると、受付に戻ってきたメメがオンプを見つけ近づいてきた

「オンプ」

「メメさん!ちょうど良かったです。ノイズさんの本の記録が見つかりましたよ」

 声をかけてきたメメを見て困った顔を見せずエヘヘと笑って言うオンプ。隣にいる女の子は返事を聞いて不安そうな顔をしている

「あら、意外と早かったのね」

「はい、突然記録が出てきたので助かりました。すぐに戻しますか?」

「お願いできる?」

「はい、ではすぐに」

 メメとの会話を終えるとすぐ本棚に向かって唱え始めたオンプ。すると、本棚が眩しく光始め、リズムが慌てはじめた

「えっ、ちょっと待ってオンプ!」

 リズムが止める声もむなしく、本棚の光が消えオンプの手に一冊の本が現れていた

「記録が少し違うと思いますが、無事修復完了です。メメさん、ノイズさんにお渡しお願いますね」

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