第29話 その扉に手を掛けたら
「あなた達よね、ソナタの家を水浸しにしたのは。私も家政婦達もソナタに怒られたのよ」
「……さあ、なんのこと?」
「とぼけても無駄よ、私達が分からないとでも?」
リビングに移動して話をするリリ達。相変わらずお菓子を食べながら問いかけるリリを見て、女の子もお菓子を食べながら答える
「リディ、どうやって家に入れたの?」
「どうやってって、簡単に入れたよ。そっちこそ無防備過ぎるんじゃないの?ねえ、ミク」
お菓子を食べ終え、もっと食べようとテーブルに置かれたお菓子に手を伸ばすリディと呼ばれた女の子に聞くと、リディはお茶のおかわりを持ってきたミクと呼ばれた女の人の方を見た
「そうね、すぐに家の中に入れたわね」
リリのコップをテーブルに置きながら答えると、お菓子を手に持ったままリリが険しい顔になった
「そういえば、あの子は誰?」
「サクラって言ったでしょ?」
リディの質問に持っていたお菓子を食べながら答えると、期待していた答えとは違ったリディがはぁ。とため息をついた
「いや、そうじゃなくて……」
「ノイズが昨日連れてきたの。だから、まだよく分からないのよ」
手についたお菓子を舐めながらリリがそう言うと、リディとミクが顔を見合わせた
「さてと、そろそろ二人とも私と一緒にソナタのところに行くわよ」
「えー、ちょっと用事が……」
「ソナタに呼ばれたと言えば大体は大丈夫でしょ、さっさと行くわよ」
リディの嫌そうな返事に有無を言わさず行かそうとするリリに、二人がまた諦めた様子で顔を見合わせた
「えーっと、リリさん……」
その頃、リリが出てすぐに目が覚めたサクラは、まだ少し頭がボーッとしつつ、ベッドに座りながら部屋の中をゆっくりと見渡しリリを探していた
「居ないのかな……」
返事もなく来る様子のないのを確認すると、ゆっくりとベッドから降りた。少しフラフラと足元がおぼつかないまま部屋の扉をまたゆっくりと開けると、家政婦達やリリの姿、モモがいるような雰囲気はなく、静かな廊下に不安を覚え少し扉を閉じた
「あのー、すみません……。誰か居ますか?」
誰もいない廊下を見渡しながら呼び掛けるが、声が小さいのか誰も来る気配はなく、そっと廊下に出て、足音をたてないように、そろりそろりと歩きだした
「あれ?お部屋どこだっけ?」
誰ともすれ違わないまま家の中を一通り歩き、不安になってきた頃、寝ていた部屋が分からなくなり、リビングの周りをウロウロとしていた。しばらく家政婦達やリリが来るかと待ってみても来る様子はなく、仕方なくまた家の中を歩いていると、見覚えのある部屋の扉を見つけ足を止めた
「ここ、多分ノイズの部屋と前の部屋……」
そう呟くと、リディに襲われたサクラの前の部屋
の前に立ち、ふぅ。と一つ深呼吸をして部屋のドアノブに手を掛けた
「リリ、どうしたの?」
サクラが部屋のドアノブに手を掛けたその時、渋々出かける準備をしていたリディが、突然天井を見上げたリリに声をかけた
「これはいけないわ」
「なにが?」
リリの話にリディが首をかしげていると、リリがリビングの窓を勢いよく開けた
「二人とも急いで!一緒にソナタの家に行くわよ!」
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