第26話 ため息を風が消して
「モモー。ただいま、お部屋に居るの?」
お風呂を上がりサクラの部屋にノイズとノオトも一緒に来て、モモに声をかけながら部屋に入る。すぐにサクラの元に飛んでくると思っていたモモが居らず、全員首をかしげつつ、部屋の中を見渡していく
「いないね、最初の部屋かな?」
「いえ、あの部屋は私が誰も入れないようにしているからそれはないわね」
ノイズの言葉にリリが返事をする。サクラが窓を開けると、冷たい風が来て少し目を閉じつつ外を見るがモモの姿はなく、少ししょんぼりとしながら窓を閉めつつ空を見ると、空が少し明るくなりはじめていた
「じゃあノイズの部屋にいるとか?」
と、サクラの様子を見ながらノオトが言うと、クローゼットを開けてモモを探していたノイズが扉をバタンと閉じた
「そうかも。私、ちょっと部屋を見てくる」
「一人で平気?」
「平気だよ。……っていうかここ私の家だよ」
「そうだったね」
頬を膨らませ言うノイズにフフッと笑って謝るノオト。それをサクラが不思議そうに見ているとリリがサクラの頭に乗りメメは肩に乗った
「じゃあ部屋を見てくるから、サクラはノオトと待っててね」
「う、うん……」
サクラの返事にクスッと笑うと部屋を出たノイズ。ふぅ。と一つ深呼吸をして、少し離れた場所にあるノイズの部屋に向かっていった
「モモ、どこ?いるの?」
部屋の扉を開けながらモモに話しかけるが、モモが飛んでくる気配もなく、ノイズのはぁ。とため息をつく声だけが部屋に響いた
「消えちゃったんだ……。意外と早かったかな」
そう言いながら、適当に部屋の中を見て回ると、またはぁ。とため息をついた
「リリ、来れる?」
と、ノイズが言ってしばらくすると不機嫌そうな顔をしたリリがベッドの上に現れた
「モモはいたの?」
リリの問いかけにゆっくりと首を横に振ると、リリが部屋の中をウロウロと動いてモモを探すが、リリもモモを見つけられず、険しい顔をして部屋の真ん中で立ってリリを見ていたノイズの前に来た
「今すぐオンプの所に行きなさい。可能ならノオトも一緒に」
「でも、そうしたらサクラが……」
「私がいるわ。安心しなさい」
「……わかった」
か細い声で返事をするとゆっくりと歩いて部屋を出ようと扉のドアノブに手を掛けたその時、リリがふわりと浮かんでノイズに少し近づいた
「ノイズ」
名前を呼ばれ扉を開けようとした手が止まり、ほんの少し振り向くと、またリリが険しい顔をしてノイズを見ていた
「サクラが居る限り、モモは何度も消えるのよ。分かってて渡したし、連れてきたんでしょ?」
そうリリが言うと、ノイズは何も言わず振り向いたまま。リリも何も言わずノイズを見て、二人の間に沈黙が流れる。しばらくすると、ノイズがゆっくりと部屋の扉を開けリリに聞こえるような小さな声で呟いた
「すぐ戻ってくるから……。お母様には何も言わないで」
そう言うと、部屋の扉をゆっくり閉め出ていったノイズをリリは後を追いかけず、一人部屋に残り静かなノイズの部屋の中をまたウロウロと回りはじめた
「言わないでって言ってもね、ソナタは分かっているのよ」
そう呟くと窓を開け空を見ると、目映い朝日が見え、庭にある木々や花等が不規則に揺れ、強い風がリリの部屋に一気に入り、部屋にあった本のページが勢いよく開いた
「サクラが来てから何故かグシャグシャになったこの家の結界……。あの子達がこの家に簡単に入れたのも無関係じゃないのよね。本当、面倒なことになったわ」
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