第10話 優しいあなたのお陰で
「では、サクラさん、ご案内しますので一緒に行きましょう」
「はい、モモ行こう」
家政婦に誘われ、ソファーから立ち上がりモモを呼ぶと、嬉しそうにサクラの周りをグルグルと動き回る。そのまま動き回ったままサクラと一緒に部屋を出ていった
「モモ?あの本、モモっていうことにしたの?」
「そう、サクラがつけたの」
部屋の扉がバタンと閉じて、ふぅ。と紅茶の入ったコップを一口飲みながらノオトがノイズに問いかけると、クスクスと笑いながらノイズが答える
「……ノイズがサクラを選らんだのはそういうこと?」
「まあね、そんなところ」
「それは嘘ね」
と、二人の会話を聞いていたメメが少し呆れながら言うと、コップに入っていた紅茶を一気に飲み干した
「素敵な部屋……」
ノイズの隣の部屋に案内されたサクラは、ノイズの部屋と変わらぬ広さの部屋に驚き、ちょっと戸惑いつつも部屋の中を恐る恐る見て回っていた
「何か必要な物がありそうですか?」
「うーん、来たばかりで何が必要か……」
サクラの倍はありそうなベットに恐る恐る触りながら家政婦に答えると、そのサクラの動きに家政婦達がクスッと微笑む
「もし、必要なものがあれば、すぐに買い足しますので」
「でも、この世界のお金とか分からないし……」
「お金なら心配ありません。ノイズ様から言われていますから、遠慮なさらず私達に何なりと言ってくださいね」
「……ありがとうございます」
家政婦に返事をしてベットに座り、ぼーっとベットを眺めるサクラの膝の上にふわりと降りた。モモを撫でながら、ふと窓の方を見ると、さっきよりもほんの少し雲が多くなっていた
「サクラさん、ノイズ様の部屋に戻りますか?」
「はい」
返事をすると、モモがふわりと浮かびサクラはベットから降りると家政婦が開けてくれた扉を出て隣のノイズの部屋へと歩きだした
「おかえりー。部屋はどうだった?」
ノイズの部屋の扉を開けてもらうと、ノオトとの会話が弾んでいた様子でご機嫌なノイズがサクラに手招きをした
「とても素敵な部屋だったよ」
「そっか。たまに夜遊びに行くからね。一緒に眠ろう」
サクラをぎゅっと抱きしめながらノイズが言うと、困った顔でノオトを見る。家政婦に紅茶のおかわりをもらい、サクラとノイズには興味無さそうに紅茶を飲んでいる。どうやって抱きついているのを離してもらおうかと悩んでいると、窓の方からポツポツと聞こえて窓を見るといつの間にか小雨が降っていた
「雨……」
と、サクラが呟くとノイズが抱きしめたまま窓を見る。ノオトや家政婦達も窓の方を見ると、少しずつ雨が強くなっていた
「サクラの言う通りね」
ノイズが窓を見ながらそう呟くと、サクラが慌てた様子で家政婦達の方を見て話しかけた
「あの、お洗濯物は大丈夫ですか?」
「ええ、干していた物は全て家の中に入れています。サクラさんのお陰です」
「いえ、私はなにも……」
ペコリと頭を下げてお礼をいう家政婦達に、慌てて手を振り否定をする。そんなサクラにノイズが、はぁ。とため息をついて抱きしめていた手を離した
「謙虚だね。もう少し喜べばいいのに」
そう言ったノイズの言葉にサクラが首をかしげた。すると、ノイズがサクラの頭をグシャグシャと撫でて、モモが二人の周りをグルグルと忙しそうに動き回る。その様子を家政婦達がクスクスと笑い、ノオトとメメがはぁ。とため息をついた
「それで、ノイズ。これからサクラはどうするの?」
「うーん、そうだなぁ。特に何も考えてないけど……。あまりウロウロしすぎると、またオンプに怒られるし」
ノオトの問いかけにモモを見ながらノイズがそう言うと、メメがうーんと背伸びをして、テーブルの真ん中の方に移動しはじめた
「ノオト、お仕事みたいね。行くわよ」
「了解。ノイズ、また後で来るから」
メメに返事をしたノオトが立ち上がり紅茶を一気に飲み干し家政婦に手渡すと、ノイズが手を振り部屋を出て行くノオトとメメに返事をした
「了解。じゃあ今日の夕御飯は、ノオトの好きなものにしてもらおうっか」
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