Day.2 【4ステージクリア】「欲しい」
1980年9月2日(火)
モーニングの客も少なくなってきた午前10時ごろ、
「兄ちゃん、見ない顔だけど大学生じゃないよな?」
中年の男性に声をかけられた。
「ええ。勤めていた会社が倒産して、ここで働かせてもらってるんです。」
「オイルショックもあったからなあ。大変だったなあ。」
と、そこにオーナーが水を差す。
「この人ったら、いい歳してゲーム目当てにアルバイトしてるんですよ。」
「へえ、兄ちゃん、ゲーム好きなのか?実はおじさん、おもちゃの会社に勤めててね。おっと、もう時間だ。」
営業さんは急いで店を後にした。
昼には幼稚園終わりのママ友一群と園児たちが来店した。夏休みの家族旅行と昨日の防災訓練を話のネタに、世間話に花を咲かせている。
と、突然、姉妹と思しき二人の子供がケンカを始め、泣きだしてしまった。
「二人とも!紙ナプキンはお絵描きするものじゃありません!」
「おねえちゃんがわたしのお絵描きしてた紙を取っちゃうんだもん!」
「わたしは一枚だけしか描いてないもん!」
子供の言い訳に、母親が声を荒らげる。
「二人とも、人前で取り合いするなんて恥ずかしい!」
どうやら、卓上の紙ナプキンで落書きをしていた姉妹が取り合いを始め、母親は姉妹を毅然と叱っていたようだった。
「紙ナプキンが不足していたようで、申し訳ありません。」
俺は急いでこの卓に向かい、紙ナプキンを補充した。
紙ナプキンの補充を済ませると、厨房にいるオーナーから「あんたも子供が紙ナプキンでイタズラしないように注意なさい」と小言を言われたが。
今夜も閉店作業をする代わりに、ゲームをプレイする。
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【ミッション】4ステージ以上クリアしよう。
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最初は1ステージもクリアできなかったのに、確実にうまくなっているのがわかる。なんだかんだ、ゲームが楽しくなってきた。
「これなら1週間もあれば、余裕で帰れるな。」
その夜、小学校3年生の頃の夢を見た。姉妹のケンカを見たからだろうか。
そうだ、オモチャの取り合いから同級生を殴ってしまったことが問題になって、学校に親が呼び出されたんだっけ。
ケンカ相手に頭を下げた後の帰り道、母から「なんでそんなオモチャ、譲ってあげなかったの?」と聞かれた。屈辱だった。
ーーあんなに遊びたかった遊具を、客観的には価値がないように言われたことが。
思い返せば、その事件から、否定されるのが怖くて「欲しい」って言えなくなったっけ。
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Day2
収入:日給の5,000円
成果:4ステージクリア
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