1回だけでさきっちょだけの隠し味
うちの名前はとんこっつ。ままに拾われたレッドオークの幼体だよ。でも最近は、ままよりもあっちこっち大きくなっちゃったから、お腹がグーグーって直ぐに鳴っちゃうの。
ダンジョンの中にいても直ぐにグーグーだから、ままから貰ったたくさんのお弁当食べて頑張ってるの。
-・-・-・-・-・-・-
うちが一人でダンジョンに入るようになってから、もう3ヶ月くらい経ったよ。モンスターとの闘い方はなんとなくだけど分かるから、モンスターが動かなくなるまでずっとグーで殴ってたよ?最初は硬そうな木の棒使ってたけど、直ぐに壊れちゃうからやっぱりグーが一番だねッ。
でも、5階にいた、大っきなモンスターを倒したら、大っきな金槌を拾ったの!その金槌で、うちがモンスターを叩いても壊れないから、凄っごく便利なんだ。
それでそれで、今日はこれから15階の一番奥まで行こうと思ってるの……。
「やぁ、とんこっつちゃん。またお遣いかい?そうだ!珍しいのを拾ったからあげるよ。この結晶集めてるんだろ?」
「ありがとう、おねぇちゃん。わぁ、確かに今まで見たこと無い切り身だぁ。これ、どこで拾ったの?」
「それは、23階で拾ったんだ。20階から先はモンスターも強くなるから、とんこっつちゃんも注意して行くんだよ」
うちが一人でダンジョンに入ってるのを心配してくれる人が、うちに色々と話し掛けてくれる。男の人は、うちのおっぱいばっかり見てくるから嫌い。女の人は、さっきみたいにモンスターの話しや、切り身をくれるから好き。
でも、ままが一番凄っごく凄っごぉぉぉく好きなの。
このダンジョンは、ままのおっさん達が頑張ったおかげで、街に被害が出る前に、王都っていう場所から騎士って人がたくさん来て、モンスターが外に出ないようにしてくれたんだって。
そのお陰で、冒険者っていう人達が街にやって来て、ここのダンジョンを攻略しようとしてるみたい。多分、
だから、うちも頑張って、おねぇちゃんに負けないように、ままの為にいっぱい切り身を集めるんだ。
ぐーぎゅるるるる~
「あぁ、お腹空いたぁ。今日はこれから、もうちょっとで一番奥の
ままが作ってくれた、焼き魚
あとちょっとで15階の一番奥だし、「腹が減ったら、い草がどう」とか、ままに教えてもらったからお弁当食べて頑張る。でも、い草って何なんだろうね?食べられるのかな?お腹が空いたら、い草を食べて頑張れって事だよね?食べられる草なんだよね、多分!
ままが言ったんだから間違い無いよ!
「でぇやあぁぁぁぁぁぁ」
ぶぉん
「うぅりゃあぁぁぁぁぁ」
ばこん
きゅ~
「やったぁ!成敗完了!ぶぃV」
えっ?なんか変?ままに、大っきなモンスターを倒したら、言えって言われてたんだけど……変かな?
ところで、お待ちかねの
「だ、誰も見てないから、いいよね?ままには誰か来る所で脱いじゃダメって言われてるけど、おっさんから貰ったこの胸当てが苦しいから、ここで着替えていいよね?」
がちゃ
ぽいッ
かちゃかちゃ
しゃきーん
じゃーん。えへへ、似合う?今回の
ふわ~
くんッ?!
くんくんッ!!
「あれ?何か、美味しそうな匂いがする……。この部屋の中からかなぁ?ちょっと行ってみよっと」
うちは、今までの
「あっ、何これ?この壁、壁じゃない。ここから先に通路がある」
くんくんッ
「この先に美味しそうな匂いのするのがあるみたい。美味しそうな匂いだから、ままへのお土産にしよっと」
うちは、ちょっとだけ怖かったけど、勇気を出して行ってみたの。ままから褒めて貰えると思ったら、勇気100倍だよ!勇気の鈴がリンリン鳴っちゃうの。でも、勇気の鈴ってなんだろうね?
「あ、あれ……卵?この卵からいい匂いがするんだ!ちょっと大きくて、ままから貰ったリュックに入らないから、手で持ってく事になるけど……そうしたら、切り身をこれ以上集められないなぁ……困ったなぁ……」
うちは切り身を集めるのと、卵を持って帰るのをどっちにしようか迷ったけど、切り身はいつでも手に入るし、卵はいつでも手に入らないから、切り身を諦めたよ。
それに、はやく
ままへのお土産たくさんあるから、喜んでくれるといいな。
「なぁ、パパさん……コイツなんだか分かるか?」
「ん?それはッ!?コカトリスの幼体じゃないか!そんな物騒なのをどこで拾って来たと言うんだい?まさか、あれほど駄目だと言ったのに、またダンジョンに行ったのかい?」
「俺はダンジョンどころか、家から出られねぇんだから……って、もうちょっとは信用してくれよ?」
じとー
「はぁ……。コイツは昨日、
「あぁ、
「ところでさ、そのヤバそうな葉っぱのハイボールみたいなのはなんなの?」
「ハイボール?それはいったいなんだい?たまにクレアはよく分からない事を言うね。コカトリスの事が知りたいのかい?」
「そうそう、そのヤバそうなハイボールはコカトリスだっけ?それのどこが物騒なんだ?ただの鶏にしか見えないんだけど?」
「ニワトリ?それがパパには分からないけど、コカトリスは毒を吐くらしいから、気を付けないと大変な事になるんだ」
「毒を吐く?ふぅん、それだけ?」
「それだけって、いや、クレア……毒を吐かれたら大変だよ?」
「
「まぁ、クレアがそう言うんなら、母親だと思ってるようだし止めないけど、名付けはしたらダメだよ?クレアが卑猥な行為をしてるとは思ってないけど、そう言う噂は広がってしまうし、そんな噂が女王陛下の耳に入りでもしたら、婚約を破棄されてしまうかもしれないからね?」
「え?俺、女王陛下と婚約してるの?」
「え?クレア……何を言っているんだい?クレアが10歳の時、女王陛下の三男・ケイルファート王子と婚約したのを忘れたのかい?この婚約の結果、二人が晴れて夫婦になれば、クレアの王位継承権は“6”まで上がるんだから、絶対に結婚しなきゃダメだよ?」
「えっ……そ、そうだったのか……」
「だからクレア。くれぐれも名付けをしたらダメだからね?分かっているよね?」
「あはははは、うん、分かってる分かってる。よし、じゃあ部屋に戻るぞ
「こけッ」
「く……く……クレア?今……なんて?」
「あぁごめん、パパさん。さっき、パパさんに言われてやっと、名付けしちゃダメってのを思い出せたんだけど、その前にもう名前付けちゃったんだよね。あはは。じゃ、じゃあ、俺は部屋に戻ってるから~」
「クレアーーーーーッ!」
-・-・-・-・-・-・-
昨日、
あぁ、ちなみに鮭は身が白くないけど、白身魚でいいんだよな?
結局、何の青魚だったのかは分からなかったが、階層が深くなれば手に入る切り身の種類も増えるってのが分かってホッとしたよ。
そして次に、卵だ。この世界に来てから初めて見た卵だってのもあるけど、問題はその大きさだ。
人の頭よりも二回りくらい大きいし、殻は意外と硬そうだった。冷蔵庫なんてないから食べるにしても直ぐに使い切らないと腐っちまうだろうし、それよりも何よりも、卵を孵化させてソイツが育って定期的に産卵してくれれば、究極のラーメンスープに合う味付け玉子か出来ると考えたのさ。
俺って頭いいだろ?
で、そんな事を考えながら寝て、朝はいつも通りに
ぴしッぴししッ
「確かに何か音がするな?」
「まま、うち……怖い」
「大丈夫だ、問題ない。怖いなら、俺の後ろに隠れてろ」
モンスターとかは怖くないのに、「心霊現象的なのが怖いなんて随分と可愛らしい所もあるじゃねぇか」なんて俺は思いながら音の出処を探したんだが、そしたらな……
ぴしッ
ぱきッ
ぴししッ
ぱきぱきッ
「コケッ」
「コケ?まさかッ!」
そこで漸く俺は気付いた訳さ。だから俺は部屋の机の上に置いておいた卵を見に行った訳だが……ま、そしたらそこには鶏がいたんだな。
卵から産まれるのはヒヨコだと思ってたんだが、実際に産まれたのは鶏だった訳で、多分……「鶏が先か卵が先か?」ってのは、こーゆー事なんだろうなって思ったね。だって、そうじゃなきゃ、「ヒヨコが先か卵が先か?」になるだろ?
俺は目の前にいる鶏と目が合っていた。目の前の鶏は、つぶらな瞳で俺を見詰めている。こうして俺は、鶏の母親になった訳だった。
「鶏の卵だったのか?そしたら、色々と作れるかもしれねぇな。豚骨スープは諦めたけど、鶏なら
「コケ?」
「じゃあ、宜しくな!
「コケーーーッ」
やっぱりさ、「パイたん」じゃ変だし……なんか、俺がおっぱい星人みたいだよな?
でも
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