魔法少女ラグナレーク

超新星 小石

第1話 普通の朝。普通じゃない自分。

 ジリリリリリ!


 目覚ましの音とともにわたしはぱちっと目を開けた。


 ベッドから飛び起きてカーテンを開く。


 お日様は今日もにこやかでいい天気。んー、気持ちいいなぁ。


 わたしの名前は藤岡ラグナ。私立雄馬学園に通う高校二年生。少しおっちょこちょいだけど、毎日元気いっぱいフルスロットルで生きてるよ。


「よぉーし! 今日も一日がんばるぞー!」


 高校生なのにまるで日朝アニメの主人公のように朝日に向かってぐーっと伸びをする。わたしはわりとそういうベタなことをしちゃうタイプの女の子なの。


 心のギアを寝起きから登校前に切り替えると、制服に着替えてキッチンに向かい食パンをトースターにセットをした。


 焼きあがるまでの間にコップに水を入れてベランダで育ててるサボテンさんと彼岸花さんの鉢植えに水をあげた。


 トゲの先から滴り落ちる雫を眺めていると、キッチンから小気味良い音が聞こえてきた。


 香ばしい香りを放つトーストに苺ジャムとバターをたっぷり塗ってかじりつく。


 今日も平和な朝。昨日と変わらない普通の朝。


 でも実は、わたしには普通じゃないところがあるの。


 それは……。


「ラグナちゃん聞いてください! 近所でカルマーンの反応があります!」


 右耳につけた星型のイヤリングから少年の声が聞こえた。


「ええー、まだ朝ご飯食べてるところだよぉ……」

「朝ご飯と使命、どっちが大事か聞くまでもないですよね?」

「ううー……わかったよぉ……あ、ねえプルート」

「なんですか?」

「おはよう! 今日もいい朝だね!」

「ああ、おはようございます……ってそんなんで誤魔化されませんからね?」

「ちぇっ、ノリ悪いなぁ。わかったよぉ、いけばいいんでしょいけば」


 わたしは食べかけのトーストをお皿に置いて立ち上がった。

 リビングの中央で目を閉じ、気持ちを落ち着かせる。


「すぅー……ふぅー……」

「用意はいいですか?」

「大丈夫……。さぁ張り切ってくよ! スターライト・トゥウィンクル!」


 わたしが胸に手を当ててヒミツの呪文を唱えると、イヤリングから飛び出した二つの流れ星がわたしの周囲をくるくると回り出した。


 流れ星から出ている虹色の軌跡が制服に触れると、次々と衣装が変わっていく。


 緑色のブレザーは桃色のリボンがついた白い衣装に変わって腰のあたりを大きなリボンがきゅっと締め上げる。スカートはリボンと同じ桃色。内側に白いフリルが幾重にも重なったパニエがついた可愛らしいものだ。


 黒いソックスだった足元も薄桃色のニーハイソックスと濃いピンク色のムートンブーツに早変わり。


 ダークブラウンのツインテールは髪型こそそのままだけど、毛先からみるみる金色に変わっていく。


 最後に二つの流星はわたしの鳩尾に吸い込まれ、そこに赤いブローチのついたリボンがぽん! とあらわれた。


 ブローチに手をかざすと、中から先端に星のイミテーションがついたステッキが出てきた。


「魔法少女ラグレーク! 今日も輝いていくよ!」


 これがわたしの秘密。


 実はわたし……魔法少女なのだ!

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