第2話 夢見が兇い
ある男性の話
最近俺は夢見が兇い。
初めは一人だったんだ。
「この指輪、貰ってくれないか」
夢の中で有名人が俺に四つ葉のクローバーの指輪を差し出すんだ。
出来はなかなか良い。色ガラスだろうが綺麗な指輪。大きな俺の手の指にもおさまるだろう。
だがその有名人は深刻な顔をしている。
不気味に思い、俺は断るんだ。
すると有名人はまわりの通行人に声を掛けに行く。
なあ、聞いてるか?かずくん
「ええ、聴いてますよ。続けてください」
ああ。済まない。少し酔った。
そう。
半月見続けたら今度は二人になったんだ。
今度は有名人二人。増えたのはお相撲さん。
で、「この指輪貰ってくれないか」
オウムみたいに二人が言うんだよ。
そしたら今度は青い顔なんだよ…だからまた断るんだ。
そしたらまたまわりに行く。
そんな夢の繰り返しなんだ…
あー、そうだな。この出してもらったリキュールと同じくらいいい色なんだよ。
「そうなんですね」
あーまた寝るのが嫌だ。この何とかリキュール、もうワンショットくれないか。
「シャルトリューズですね。分かりました。先程ストレートで呑まれたので、今度はチェイサーも飲んでくださいね?」
ああ。わかったよかずくん。
何でかなぁ。かずくんは笑わずに聴いてくれるから気分がいいや。
彼女に言っても「疲れてるのよ」のいってんばりでさ。悲しいわけよ。
「彼女さんですか」
おう。可愛いぞ、そして血筋も大名の分家だ。うちみたいな百姓たぁ違うね。
「はい、シャルトリューズとチェイサーです」
有り難う
あー、氷たっぷりのチェイサーいいね。でも少ししょっぱくないか?
「リキュールの甘さを立てるのに少し塩を入れたんです」
へー。酒は詳しくないが、気分はいいな。そえてる草も洒落てる。
「丁度ラベンダーがあったものですから香りも変えてみてはと」
あんがと。
くー、確かにさっきよりうまいかもな。酒。
「有り難う御座います。今日は彼女さんに介抱してもらってください」
うん。そうする。
「それと」
なに?その二つ折りのコースター?
「彼女さんに渡してください。そしたら夢も終わるかも知れないですよ?」
へー、かずくんが魔法使いってのはあながち噂だけじゃないんかもな。
うん。有り難う。
じゃあお勘定して。
「かしこまりました」
俺はスナックをでた。
で、かずくんに言われてたのもあり彼女のアパートに転がり込んだ。
そしてスーツの胸ポケットに入れていた折ったコースターを彼女に渡した。
そしたら間もなくトイレに俺は駆け込み酒をげーげーと吐いた。
キレイな色のリキュールだったのに黒くなった酒が口からマーライオンの様にでた。
吐いてすっきりしたら彼女が洗面台に付き添ってくれてうがいや水をのんだ。
その日の夢見は覚えていないが、久々にスッキリした気がした。
スーツに彼女がファブリーズをしてくれてたので酒の匂いはしない。
ワイシャツを着替えて出社した。
俺は気分が良かったから気付かなかったが、朝の彼女の様子は後から考えると少しおかしかった。
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