第3深層-1

 またなにかから逃げるの? いつまで、ここで逃げ続けなければならないの?

「……私は、進まなくちゃ」

 歩き出そうとした時、ぞっとするものが背筋を駆け抜けた。咄嗟に頭を抱えてしゃがみ込む。なにかが私の頭があった場所を突き抜けた。

 恐る恐る顔を上げる。

 それは私と目が合うと、涎を垂らしながら唸り声を上げた。

「……!」

 黒色の毛皮に金色の鋭い眼光、大きな尖った耳と鋭い牙――狼だ。

「グルルルゥゥゥ……ッ」

 狼が唸りながら姿勢を低くする。私が駆け出すのと狼が飛び掛かったのは同時だった。

 背中越しに狼の足音と荒い息遣いを感じながら、三回目の鬼ごっこが始まった。

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