ゆりごけ
レファ
プロローグ
白く清潔感のある部屋にいた。
彼女は白いベッドで横になって、すうすう寝ている。
そんな寝ている彼女に私は喋りかける。
「ねえ、あなたと出会えて本当によかった。あなたと駆け落ちしたあの日からの1か月、あの時間は長い私の人生の中でも変わらず、最も大切な時間になると思う。」
彼女からの返事はなかった。
「本当にあなたとの時間が大切で、キラキラしていて」
彼女からの返事はない。来るはずがない。
「ねえ、目を開けて。また喋ろうよ。くだらないことで笑って、泣いて、けんかして。
またあの日常に戻ろ」
そう、私は生きる死に声をかける。
彼女はもう戻らない。
だが、寝息も聞こえる。心臓の鼓動も聞こえる。
寝ているみたいだ。
だからこそ、起き上がる可能性を捨てきれない。
また彼女と会える可能性が捨てきれない。
また、楽しい日々が待っている可能性を捨てきれない。
「ねえ、スズ。あなたが好きだった」
この声は誰もいないし静かな病室に響き渡った。
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