第36話 誤解だ

 雪哉と愛し合って、一緒に寝て、翌朝。雪哉は講義があるので早く起きて出かけて行った。今日、俺の講義は午後からしかないので、雪哉が出かけてもまだ眠っていた。本当は雪哉と一緒にここを出るつもりだったのだが、どうも起きられなくて。

 美雪ちゃんはまだ大学1年生だから、毎日朝から講義があるのだろう。雪哉よりも先に家を出て行ったようだった。だが・・・。

 俺が起き出して、一応他人の布団だからと思って整えて、寝室から出ると玄関が開いた。またびっくり。美雪ちゃんが入って来た。

「あ、どうしたの?早いね。」

「あれ、涼介さん、まだいたの?」

「うん。授業は?」

「今日、午後の授業が休講だったの。バイトまでの時間が空いちゃったから、一度帰ってきたんだ。でも、涼介さんがいたなら、帰ってきてせいかーい!」

美雪ちゃんはそう言うと、チョコチョコッと走ってきて、俺に飛びついてきた。

「え、ちょっと。」

美雪ちゃんは俺に抱きついて、上を見上げる。ああ、やっぱり雪哉にそっくりだなあ。

「ねえ、お兄ちゃんいないし、今の内にイイコトしない?」

美雪ちゃんは、幼い容姿からは想像できないような、きわどい事を言う。

「は?何言ってんの。ダメだよ。」

「えー、どうしてー?ここには誰もいないんだし、バレないよ?」

「そういう問題じゃないの。っていうか、申し訳ないけど、君と何かしたいとは思わないし。」

「ひどーい。」

美雪ちゃんは腕を放した。

「じゃあ、帰るね。おじゃましました。」

手をバイバイっと振って、玄関を出て・・・と思ったら、腕を引かれた。倒れそうになって、思わず壁に手をついた。すると、

「な、に、やって・・・。」

男の声がした。男?え?

玄関の方を向くと、そこには雪哉が立っていた。雪哉が険しい表情でこちらを見ている。俺は、自分の現状を把握しようと、自分の格好を見た。すると、俺は壁に手をついていたのだが、俺と壁との間には、美雪ちゃんが挟まっていたのだ。背丈が違うから、顔がそれほど近いわけでもないのだが、完全に「壁ドン」というやつになっている。

「え、いや、誤解だよ!違うんだ。今、転びそうになって手をついただけで。」

俺がそう、言い訳をほざいている最中に、雪哉は外へ飛び出して行ってしまった。

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