未解決事件はそのままに

紫陽花の花びら

第1話

「どうしてこうなったか? そんなの決まってるよ。蒼が変な事言うからさ。俺は弱虫じゃないからな! 笑うなよ」

「バカだなぁ。怖いなら怖いって言えば良いのに。佐久は意地張りすぎ」

俺は憮然として遥を睨むと、

「でっ、結局辿り着けなかったと言う訳か」

黙っている俺の肩を叩き、遥が笑う。

「じゃぁ! ふたりで行くぞ!」

俺がキョトンとしていると

「何? 俺とでも怖い?」

「だから、怖くないって!」

遥は俺を抱き締めると

「佐久となら、何処へでもいける。楽しみだな」

俺は遥を押しやる。

「じやぁ、明日ここに集合。持ち物は食物、飲物、タオル、石鹸、上着、着替え、お金、携帯、懐中電灯ぐらいかな」

「遠足か? こんなにいる?」

「呆れるぜ! 用意周到って言葉知らない? だからこの間みたいになるの!」

遥に頭を小突かれる。

手を払い除けながら

「判った。何時に集合する」

「そうだな、朝六時、それと歩きだからな」

そして俺たちは別れた。

中一、八月の話。

 翌日時間ビッタリに集合すると、いざ出発! 目指すは町の反対側にある謎のバラ園だっ! 

とにかく噂が噂がを呼んでるんだ。例えば、バラ園に足を踏み入れると棘か飛んで来て体中に刺さるとか、呪われた老人がいて目が合うと動けなくなるとか、凄いのはバラに為れるとか……あり得ないと思うけど、大人も気味悪がって放置してる場所だ。

迷子にならないよう俺は地図を書いてきたが、遥に見せると腹を抱えて笑うから、蹴飛ばしてやった。

「ごめん、ごめん、然し判りやすい。ここが役場、ここが原山だろう? でっ、バラ園がここ!

佐久制作の地図に従って進むぞ!」

 この遥は、五月に東京から転校してきた。なんか最初から馴れ馴れしさかったんだ俺には。

「なぁ佐久、俺歩くの速い? 大丈夫?」

「大丈夫! チビですけど、歩きなれてるからね」

「疲れたら言ってよ」

黙って頷く俺の頭を撫でる。

「もう~やめろ~年下じゃないんだから!」

遥が笑う。俺も笑う。

 少し早いが、お昼を食べて小休止してバラ園を目指す。

 原山は小山で、それを越えるとバラ園がある。

「見て! バラ園だろう? あれ」

「だよな。バラがないじゃん」

「確かに」

俺たちは駆け下りて、バラ園の前に立ち、辺りを見回す。静かだ。

人の姿は見えない。

「入るか」

遥に言われビグッとしたのを見られ、手を繋がれてしまった。

「大丈夫だよ!」

「シッ! 行くぞ……」

俺たちは抜き足差し足、バラ園を進んで行った。

所々に可愛いバラが咲いている。


「おい! 誰だ!」

背後から途轍もなく大きな声がした。

ふえ~俺たちは、腰を抜かしてしまった。

「僕たちは怪しい者ではないです」

遥が小さな声で言うと、

「ほぅで?何しに来た」

「はい……町に伝わるうわ、いや……バラ園未解決事件を確かめに来ました」

遥は声を張り、きっぱり言い切った。何?そんなの聞いたこと無い。

「バラ園未解決事件? なんだ?」

老人も思案顔だ。

「まあ、要するに良くない噂話を確かめに来たんですよ。バラに為れるとか、棘が四方から飛んでくるとか、後なんだっけ?」 

「えっとえっと……老人と目が合うと動けなくなるとか……」

老人は笑い出した。

「確かに、合ってるぞ、お前ら動けないからなヒヒヒ、まあ何だ、暑いから母屋で話すか」

俺たちはズボンの泥を払いながら、老人の後に続いた。

 部屋は涼しくて気持ち良かった。冷たい麦茶も問題なく美味かった。

 遥は部屋を見回し、一枚の絵が気になった様子だった。

「おじさんの大切な人?」

その言葉に釣られて俺もその絵を見ると、描かれているのは、優しい眼差をした男の人だった。

「……そうだよ……大切人だ」

俺は、バラ園が背景だと気づき、

「ここのバラ園だよね。ふたりで造ったの?」

「……いやそいつが造ってな。俺の為に」

「すげぇなぁ! 親友なんだ」

俺と遥と一緒だと言おうとしたがその前に、

「ここはどんな色のバラが咲くの?」

遥は物凄く真剣に聞いてる。

「ブルーローズ」

「ブルーローズかぁ」

「ああ、嬉しかったさ。一面咲くブルーローズを見ながら。ほんの少し一緒に暮らせたよ」

「青いバラなんてあるの?」

「あるよ……今度春に見においでふたりでな」

「名前聞いてなかったな」

遥はノートを出して書いて見せた。

「俺ははるで、あいつは佐久です」

「良いね、はるに咲くかぁ 遥くん。君の思いは大切してな。彼はまだ気づいてないけど。じいさんには痛いほど伝わってくるなぁ。」 

俺がトイレから戻ると、遥が目を擦っていた。

「如何したの? 遥目が痛い? 目薬あるよ」

「大丈夫だよ……佐久、帰ろ」

「お邪魔しました」

「あっそうそう、事件は未解決のままでな」

「はい! 勿論! また来ます」

オレンジのバラを六本つづ

お土産にと言って包んでくれた。

「本数に意味があるんだ」

と言われ渡された。

 とりあえず俺たちの冒険?

遥言うところの

「バラ園未解決事件」は未解決のままというこどて。

この夏休みは良く遥といた。


ブルーローズ……夢が叶う

六本……あなたに夢中


いや……それからずっと。

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