異世界生まれの少年は温度魔法

序章

第1話 プロローグ 歴75年~99年

ローレンス歴75年


ローレンス王国の王都 ガンナード城


城地下1階の大広間。灰色の石の壁、床には半径5メートルの召喚魔方陣。

第二王子ロドニー率いる魔術師団12名が、召喚魔方陣を囲むように立ち詠唱を始めた。

12時を起点として時計回りに、床から天井に向かって光った。


誰もが眉を顰めるほどに。


陣内にはおおよそ30名の人の影が突如現れた。


ローレンス王が右手で剣を抜き、左手で天秤を掲げ、陣に向け声を発した。

「契約神テミスよ、この者たちに、異なる世界の理とギフトを与えたまえ」


第一王子オースティンが王に続き宣誓した。

「契約神テミスよ、この者たちに、この世界の理と加護を与えたまえ」


召喚された者は、13名が黒目の男、13名が黒目の女。4名が青い目の男女であった。

彼らのうち、スキルを得てステータスが顕現せし者は、20名だった。


その者達は、第一王子オースティンが率いる第一騎士団に10名、第二王子ロドニーが率いる第一魔術師団に10名が属した。

朝は城下の訓練場で稽古に励み、昼は近隣のダンジョンに潜り、夜は城内の迎賓館で過ごした。


『感情表現の乏しく、15歳の成人年齢に対してあまりにも未成熟な精神性』

オースティンの手記に書き綴られた。



一方、スキルを得たもののステータスが顕現しなかった10名。

彼らは、生活するには十分な金貨が与えられ、城下町に移り住んだ。


その者たちの特徴は。

異なる世界の神のギフトが複数あった。

当初、肉体レベルが全く上昇しなかった。


ギフトから派生・創造されたスキルと持っている。

個々人独自のスキルがあり、それぞれにスキルレベルがあった。


そのスキルレベルは、初期値0、最大値5

ステータスが現れたのはいずれの者とスキルレベル5であった。



2名は商業ギルド、2名は魔道具ギルド、6名は、冒険者ギルドに属した。


その冒険者パーティは『ティエラ』と名乗った。

初期登録より5年後、『ティエラ』のメンバーは、プラチナランクに昇格した。


『奴らは、誰も聞いたことのないスキル名で魔法が発動していた』


当時のギルドマスターディーノは、馴染みの酒場の女店主ダリアに語ったと云う。

吟遊詩人ラウールの詩により『ティエラ』のことは今も酒場で語り継がれている。

繁盛した酒場は、商業ギルドの売上報告書に記されている。




ローレンス歴81年


ローレンス王国北部

北方ギルバート平原を支配する遊牧蛮族との交戦が始まった。


敵騎馬兵は2000名。

エモル村を蹂躙。

その後、ラウール城下町北側に進行。


城下町北側に住む300名の住民が戦渦に巻き込まれた。


王国軍第一王子オースティンが率いる第一騎士団は、北壁で迎撃。

2週間で鎮圧した。


その後の復旧の工程として3年計画。

ラウール城の城下町を囲む壁 高さは5メートルを修復。

城下町から北へ5㎞の国境未画定の地の領域策定 

ゴマ渓谷へ続くトーガス岩道への関所の建設


第二王子ロドニーが率いる500名の王国兵は、敗走した敵騎馬兵を追撃した。

冒険者ギルドには、上級貴族護衛、物資運搬等の緊急依頼が舞い込んだ。


昼夜を問わず追撃した王国兵は、エモル村を過ぎ、トガース岩道を越えた。

ゴマ渓谷を抜けた時には、王国兵480名、敵騎馬兵50名であった。


ブラン高地のふもとに、敵騎馬兵の援軍が陣を敷いていた。

その数、約500名。

奥には敵蛮族王旗が勇ましくはためいていた。


激戦の末、双方が多くの犠牲を払った。

王国兵側は辛くも勝利した。


敵本拠地制圧のため、ブラン高原頂上を越えたくだり道。

地平線いっぱいに広大なギルバート平原が視界に入った。


千を越える北方蛮族の白いテントが、点在していた。

これらは、王国兵の手により赤く染まった。血と炎によって。


翌日、むせ返るような血の匂いが充満する平原。

300匹を越える魔獣の群れが現れた。

それらは、生体、死体にかかわらず、遊牧族家族の母子、休憩中の王国兵 


手当たり次第に食った。


この魔獣を切り伏せ薙ぎ倒したのが、冒険者たちだった。


上級貴族護衛のために依頼を受けたプラチナランカー6名であった。

彼らが手をかざすと、緑色、オレンジ色、青白く様々な色のエフェクトが輝いた。

体に、剣に、杖に、弓に、槍に。 


彼らがスキルを使うたび、何かが輝き、魔獣が消えた。

炸裂、破裂、火柱、圧殺。


人の悲鳴が消え、魔獣の雄たけびが消え、野獣の姿が消えた、

あたり一面に静寂が戻ると、第二王子ロドニーは生き延びたことを理解した。


王国北部の城ラウールに凱旋したのは100名足らずだった。

甚大な被害を出した。が、王国は北部一帯を支配する足掛かり得た。


護衛の冒険者が『ティエラ』であった。

ふたりの王子が彼らを知るのは、王都ガンナード城での論功行賞の場であった。



ローレンス歴87年


歴83年にローレンス王国により平定された南北100km東西300㎞に及ぶギルバート平原は、南北に流れる河川を領境として三分割された。


中央地帯を王国直轄地として第一王子オースティンが開拓を拝命。

ハム川を領境として以西を第二王子ロドニーの大公爵領地とした。


中央地帯より東側の地は、冒険者パーティ『ティエラ』の6名に拝領された。

ハンバーグ川以東からギルバート平原の東限に接する大森林地帯全域。

初代、次代、三代まで貴族名『ローレンシア』を名乗ることを許された。


その地をローレンシア公爵領地として、治めることとなった。


国庫負担 

公爵領館の建設費、工期3年。

領地派遣人員(代官、補佐官、邸宅執事長、女官長、侍女)

選別人員は宰相主導。


領地負担

生活維持費 

領地使用人員(ハウスメイド、各種使用人)

選別差配は公爵主導。



ローレンス歴90年


王都ガーランドにも屋敷を与えられた。

冒険者『ティアラ』の6名は、3年間をここで過ごした、

婚姻、妊娠した。


ナツミ・ホウジョウ・ローレンシア公爵

アカネ・タケダ・ジョーンズ・ローレンシア公爵

アンズ・オグラ・レイモンド・ローレンシア公爵

女性たちは、公爵領地での出産を望んだ。


男性三名のうちケンタ・ホウジョウ・フォン・ローレンシア公爵は公爵領地への移動を願い出、大森林の開拓を条件としてその領地移動願いを許された。


アンドリュー・ジョーンズ・フォン・ローレンシア公爵

アーノルド・レイモンド・フォン・ローレンシア公爵

このふたりは、国内貴族との交友・縁談のため王都大邸宅にて留まった。

その期限は、無期限であろうと国内貴族の大半の認識であった。


『貴族の義務と実質の人質』と、オースティンの手記には加筆された。



ローレンス歴95年


『ギルバート平原および大森林魔獣大図鑑』

『ギルバート平原および大森林薬草大図鑑』

『ローレンス王国北東地域 ダンジョン攻略概論』


ケンタ・ホウジョウ・フォン・ローレンシア公爵共著刊行。


冒険者、商人、民宿業、武器鍛冶屋・薬師などが新天地を目指した。

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