ミスマッチ・デットエンド
桜部遥
拝啓、この手紙を見つけてくれた貴方へ
拝啓
この手紙を見つけてくれた貴方へ
少しずつ積もっていた雪も溶け始め、寒空の雲間から麗らかな日差しが差し込もうとしている今日この頃、如何お過ごしでしょうか。
この手紙を貴方が読んでいるという事は、私はきっともう既に死んでいるのでしょう。
なんて、もの寂しげな事を綴ってしまいましたが、それを貴方が悲しむ必要はありません。何故ならそれは、私が望んだ事でもあるからです。
時は、この手紙を執筆している今日現在から一週間程前の事になります。
私は、あるゲームの参加者として選ばれました。それは、ゲームオーバーになったら、そのまま死ぬというあまりにも残酷なゲームでした。
所謂、デスゲームと言われるものです。
私はその参加者として、二十人以上の方々と共に集められました。
先述の通り、このゲームは間違えたら即人生を失うとても恐ろしいもの。
ですが私は、参加者の皆を仲間として思っていました。いえ、今も尚そう思い続けています。
それでも、残酷に、残忍に、このゲームは人の命を奪っていきます。一人、また一人と脱落者は増えていきました。
そして遂に明日、私はこのゲームの最終ステージに挑みます。
なんの因果か、こうして私の命の灯火は未だ消えず、ゆらりと揺蕩う焔のように燃えています。
しかし、それも明日まで。
私はこのゲームで沢山のものと出会い、そして失いました。
沢山絶望しました。幾度も死にたいと思いました。何度もこのゲームを終わらせる為に自分が出来る事を探しました。
結局、辿り着いたのは屍の山の上から見える一筋の光だけ。
これが運命というのでしょうか。定めというのでしょうか。
そんな私にも、最後に一つ願いがありました。
そして私はその願いを叶える為に、最後の光へと手を伸ばします。
私には、このゲームを通じて親友が出来ました。
その親友は、誰よりも優しくて誰よりも孤独な子でした。彼女と出会って間も無い頃、彼女は私にこう言いました。
「私は人として生きる意味を知らない。人として生きる意義を知らない。自分の人生には何の価値もなく、何の想いも無い。」
あまりにも冷たくて、涙が出そうなくらい悲しいその言葉を聞いて、私は思ったのです。そして、願ったのです。
私はそれでも、貴方に生きて欲しい。
共に過ごす内、私達は親友と呼べる関係になりました。
一緒に過ごした時間なんて関係ありません。一緒に過ごした思い出が、私に彼女を親友と呼ぶべき存在だと教えてくれたのです。
だから私は、私の願いの為に親友を生かします。
いつか彼女に、生きる意味が、生きる意義が見つかったのなら、それは私の本望です。
さて、話は長くなりましたが、聞いた所によるとこのデスゲームは再び開催するべく、新たに準備が始まるそうです。
私はこれ以上の犠牲が出る事を良しとしません。
これ以上悲しみが広がる事を望みません。
ですから、この手紙を読んでいる貴方がこのゲームの関係者なのならば。
どうか、私の最期の祈りを聞いて下さい。
どうか、私の最期の願いを叶えて下さい。
もう二度と、あんな悲惨なゲームが始まらないように。
私にはもう、出来る事は何もありませんがそれでも、祈らせて下さい。
そして私の我儘が許されるなら、私の大切なあの子が。大切な親友が。
全てから解放されて、自由に、幸せに生きていますように。
ここまで長々と読んで下さりありがとうございました。
まだまだ冬の寒さは残っております。お身体には重々お気をつけてください。
この手紙を見つけてくれて、ありがとう。
︎︎ 敬具 ︎︎︎ ︎︎︎
真宮ミリア
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